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社会心理学者のつぶやき

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ふと考えたことを思いつくままにまとめていきたいと思います。 思考の萌芽です。これから発展させていくための基礎です。 少しは思考の参考になるかも?
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#心理学

心はどこにあるの?という問い

心はどこにあるの?という問い

(2020.07.07に書いたブログ記事を転記したものです)

 院生の頃,いろいろな人に「心はどこにあるの?」と尋ねていた記憶があります。「脳だよ」「その人に備わっているもの」「人と人との間」など多種多様な答えがありました。が,当時はどれも納得できませんでした。

 当時,納得できないなかでも,最もしっくりきたのが「人と人との間」でした。しかし,心は人と人との間にあるはずなのに,個人を対象として

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相対主義ってなんだか難しいよね

相対主義ってなんだか難しいよね

(2020.06.07に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,久しぶりに『科学哲学の冒険』を読みました。哲学の面白さを教えてくれた,思い出深い本で,実在論,反実在論の関係について学び直したくて改めて読みました。

この本を読みながらふと「そういえば相対主義って具体的にはどういう主義なんだろう」と疑問がわきました。ですので,早速,調べてみました。

「相対主義に関するよくある質問」サイト人間

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実在論のバリエーション

実在論のバリエーション

(2020.06.05に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,「反実在論のパターン」という記事を書きました。

『科学哲学の冒険』(戸田山和久)によると,反実在論とは世界は認識活動と独立に存在しているけれども,観察不可能なものについて科学によって知ることはできないと考える立場です。反実在論は「反」と付いていますが,世界は認識活動と独立に存在していることをみとめる点で科学的実在論と同じであり

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女性は男性が魅力的であると判断するほどコンドームを使用しなくなる!?

女性は男性が魅力的であると判断するほどコンドームを使用しなくなる!?

先日、Twitterのタイムラインで以下のツイートが流れてきました。“Does attractiveness influence condom use intentions in women who have sex with men?”(魅力は男性とセックスする女性のコンドーム使用意図に影響するか?)という論文に関してです。

相関係数の高さ(r = -0.552)が気になったので、公開されてい

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想い出は人工物に宿る

想い出は人工物に宿る

(アメブロからの転載)

人はなぜ元カレ/元カノを引きずるのでしょうか?

答えは至ってシンプルです。「想い出は人工物に宿るから」です。

そう言われても「?」だと思います。順に説明させてください。

たとえば,元交際相手と初デートで行った場所にたまたま訪れたとき,「あぁ,あの人と昔ここに来たなあ」と思い出すのではないかと思います。思い出しているのは自分ですが,思い出させたのは「場所」(人工物)で

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間に入る

間に入る

喧嘩の仲裁とか第三者の紹介とか,色んなタイミングで誰かと誰かの間に入ることがある。人と人の間だけでなく,人とモノとの間もある。たとえば,料理の仕方に口出しするとかも,料理人と食材あるいは調理法との間に入っている。

この「間に入る」(仲裁する)というのは難しい。片方に肩入れをすれば,それは「間」ではなく,2対1の構図になってしまう。だからといって,どちらとも距離を取れば,間に「入れない」。また,仲

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調査が乱発される状況

調査が乱発される状況

(ブログの再掲)

 調査に携わるものとして,最近とても気になることがあります。それは,調査(アンケート調査)が簡単に実施されることです。

 ビッグデータの時代だからでしょうか,企業もよく調査をしています。たとえば,飛行機に乗ったあとに届く満足度調査はその一例です。「調査をすることで何かが明らかにできる」と考えているから多くの企業で調査をしているのだと思います。しかし,調査によって何かを明らかに

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心理学とNLPは何が違うのかを考えてみた

心理学とNLPは何が違うのかを考えてみた

(ブログの再掲)

心理学関連の一般書を読んでいるときに疑問に思うことがあります。それは,「心理学の大家」としてNLPの創始者・実践者が紹介されたり,「心理学」と称してNLPが紹介されたりすることです。

NLPとはNuero Linguistic Programing(神経言語プログラミング)の略称で,NLP-JAPANラーニング・センターによると「別名「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる最新の心

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恋人との連絡頻度で悩むあなたへ(2)

恋人との連絡頻度で悩むあなたへ(2)

 少し前に書いた記事が結構なPVを稼いでいました(恋人との連絡頻度で悩むあなたへ)。

 せっかくですので,その第2弾を公開いたします。予めお伝えしておくと,第2弾は抽象的な話になっています。それを,より具体的な話に落とし込んだ第3弾はいずれ書く予定です。

 では,以下,本文です(ブログの再掲)。

 先日,「恋人との連絡頻度で悩むあなたへ」を公開しました。

「恋人から連絡がこなくて不安」

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安心と不安の自作自演:ラベルについて(2)

安心と不安の自作自演:ラベルについて(2)

『Unscientific Psychology』(Newman & Holzman, 1996)を分担で読む読書会が先日ありました。

同書は心理学に対する批判の書で,刺激に富む面白い本なのですが,その中で「ラベル(カテゴリ)」の話が出てきます。

前回「診断名がつくこと:ラベルについて(1)」も「ラベルがつくことで当事者は安心する」という話があり,それについて考えてみました。たとえば,「自分は

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恋人との連絡頻度で悩むあなたへ

恋人との連絡頻度で悩むあなたへ

異性の恋人(以下,恋人)からどれくらいの頻度で連絡がきたら嬉しいですか?毎日ですか?週に3〜4日ですか?あるいは月に1回ですか?

一緒に住んでいて毎日連絡がきたら「帰ったら会えるのに」と思うかもしれませんし,「いつも連絡が取れて嬉しい」と思うかもしれません。

遠距離なのに月1回の連絡しかなかったら「私たち本当に付き合っているのかな」と思うかもしれませんし,「信頼してくれてありがとう」と思うかも

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近所のスーパーが潰れた

近所のスーパーが潰れた

先日,近所のスーパー「ミヤモト」が潰れた。不謹慎ながら,よく潰れないなあと思っていたら,いつの間にか潰れていた。潰れた日当日の朝に気づいた。

たまたま朝,ミヤモトの近くのパン屋さんに寄った際に,ミヤモト入口に張り紙がしてあることに気づいた。何だろうと思って張り紙を見てみたら潰れるお知らせだった。破産手続き開始申立てのお詫びという張り紙だった。パン屋さんに寄らなければ気づくのはもっと後になったと思

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診断名がつくこと:ラベルについて(1)

診断名がつくこと:ラベルについて(1)

先日,読書会に参加していました。『Unscientific Psychology』(Newman & Holzman, 1996)を分担で読んで,議論して,という形式の読書会です。

いくつか議論のトピックはあったのですが,そのうちの1つのトピックが今も気になっています。

そのトピックとは「ラベルを付ける意味」です。以前から少し考えていたこともあり,せっかくの機会なので,考えをとりあえずまとめる

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働くについて最近考えたこと

働くについて最近考えたこと

私の仕事は大学教員または研究者です。ふだんは心理学についての講義をしたり,心理学の研究をしたりして働いています。

研究について講義で教えたり,論文を書いたりするのが仕事ですので,どうしてもデータ(エビデンス)がないといけないと思ってしまったり,論理的あるいは説得的に文章を書かないといけないと思ってしまうところがあります。

ですが今回のお題は「はたらくを自由に」ということですので,大学教員/研究

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