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社会心理学者のつぶやき

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ふと考えたことを思いつくままにまとめていきたいと思います。 思考の萌芽です。これから発展させていくための基礎です。 少しは思考の参考になるかも?
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#心理学

尺度構成はこうせい!指定討論への返答

尺度構成はこうせい!指定討論への返答

本ページは、日本心理学会第87回大会(@神戸国際会議場・神戸国際展示場)大会企画シンポジウム『尺度構成はこうせい!尺度に基づく心的構成概念の測定を改めて考える』における武藤拓之先生の指定討論(PDF)への私からの返答です。

指定討論への回答全員に共通の質問

「良い」尺度とそうでない尺度を線引きする方法は?

実践によるというのが端的な答えです。同質問は、妥当性が心理尺度に帰属する(つまり、道具

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心理学的測定の3つの困難 ─ 「心はどこに存在するのか」補足資料

心理学的測定の3つの困難 ─ 「心はどこに存在するのか」補足資料

本ページは、日本心理学会第87回大会(@神戸国際会議場・神戸国際展示場)大会企画シンポジウム『尺度構成はこうせい!尺度に基づく心的構成概念の測定を改めて考える』での私の発表「心はどこに存在するのか」の補足資料として公開するものです。

以下は、配布資料の内容を移したものです。最後には、当日の発表資料(スライド)にて引用していた文献の書誌情報を記載いたします。

心理学的測定の3つの困難 ─ 「心は

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重回帰分析の適用上の問題の効果的な解消について:吉田・村井(2021)を読んで

重回帰分析の適用上の問題の効果的な解消について:吉田・村井(2021)を読んで

(2021.06.03に書いたブログ記事を転記したものです)

 先日、以下のようなツイートをしました。このツイートの意図は、「研究者の「勉強不足」だけに適用上の問題が生ずる原因を帰せても、効果的な解消には至らないのでは?」という趣旨でした。

 私の書き方が悪く、誤解を招いてしまった部分もあり、反省しています。ですが、思った以上にリツイートされ、(いずれ終わるとは思いますが、)誤解を招いているた

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基準を作ること:否定性に基づいた基準ではなく,可能性を広げる基準づくりについて

基準を作ること:否定性に基づいた基準ではなく,可能性を広げる基準づくりについて

(2020.08.25に書いたブログ記事を転載したものです)

 Twitterで「婚活コンサル」を名乗る人のあるツイートを見た。趣旨は以下。

 この主張の妥当性はともかく,こういった「否定性に基づく基準づくり」はご本人(婚活コンサル)の仕事を増やすためにはいいのかもしれないけれど,婚活者の可能性という点では負の作用があるのではないかと思う。

 どういうことか。

 まず,「否定性に基づく基準

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調査が乱発される状況

調査が乱発される状況

(2020.07.30に書いたブログ記事を転載したものです)

 調査に携わるものとして,最近とても気になることがあります。それは,調査(アンケート調査)が簡単に実施されることです。

 ビッグデータの時代だからでしょうか,企業もよく調査をしています。たとえば,飛行機に乗ったあとに届く満足度調査はその一例です。「調査をすることで何かが明らかにできる」と考えているから多くの企業で調査をしているのだと

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「薬」というワナ

「薬」というワナ

(2020.07.17に書いたブログ記事を転載したものです)

 最近,海外ドラマ『ブル/BULL 心を操る天才』をよく観ています。そのなかのある回で,オキシコドンというオピオイド系の鎮痛剤は,違法薬物(ヘロインなど)依存へとつながりやすいという話がありました。「へー,そうなんだ」と思うとともに,やり切れなさもありました。

 その回を観た後に調べたのですが,オキシコドンという鎮痛剤は麻薬取締り法

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統計的差別

統計的差別

(2020.07.10に書いたブログ記事を転記したものです)

 山岸(1992)論文を読みました。詳細な内容紹介は先日のブログをご覧ください(もはや論文そのものを読んだ方がいいのでは?というレベルです)。

 同論文は全体として面白かったのですが,「統計的差別」の分析例は,たとえば,近年見られる女性管理職の割合を〇〇にするといったアファーマティブアクションの理論的根拠に関連しており,興味を惹かれ

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山岸論文のまとめ

山岸論文のまとめ

(2020.07.09に書いたブログ記事を転記したものです)

 「マイクロ・マクロ社会心理学の一つの方向」という論文を読みました。山岸俊男先生が1992年に書いた論文です。この論文が書かれたということは当時そのような視点がマイナーであった,あるいは「勢いのある若手」的な視点であったということかなと思いました。

 同視点は面白く,この視点を発展させていけば現在の日本の社会心理学界は現状と違ったの

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ドラッグとしてのナンパ

ドラッグとしてのナンパ

(2020.07.08に書いたブログ記事を転記したものです)

 7月8日はナンパの日らしいです。なんのためにある日なのだろうという感じもしますが,せっかくですので久しぶりにナンパについて書いてみたいと思います。

ナンパとは何か? そもそもナンパとは何なのでしょう。「ナンパの社会史」という修士論文では,「男性が見知らぬ異性に対して性的な意図をもって声をかけ,短期的な性(愛)的関係を構築してくこと

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心はどこにあるの?という問い

心はどこにあるの?という問い

(2020.07.07に書いたブログ記事を転記したものです)

 院生の頃,いろいろな人に「心はどこにあるの?」と尋ねていた記憶があります。「脳だよ」「その人に備わっているもの」「人と人との間」など多種多様な答えがありました。が,当時はどれも納得できませんでした。

 当時,納得できないなかでも,最もしっくりきたのが「人と人との間」でした。しかし,心は人と人との間にあるはずなのに,個人を対象として

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相対主義ってなんだか難しいよね

相対主義ってなんだか難しいよね

(2020.06.07に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,久しぶりに『科学哲学の冒険』を読みました。哲学の面白さを教えてくれた,思い出深い本で,実在論,反実在論の関係について学び直したくて改めて読みました。

この本を読みながらふと「そういえば相対主義って具体的にはどういう主義なんだろう」と疑問がわきました。ですので,早速,調べてみました。

「相対主義に関するよくある質問」サイト人間

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実在論のバリエーション

実在論のバリエーション

(2020.06.05に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,「反実在論のパターン」という記事を書きました。

『科学哲学の冒険』(戸田山和久)によると,反実在論とは世界は認識活動と独立に存在しているけれども,観察不可能なものについて科学によって知ることはできないと考える立場です。反実在論は「反」と付いていますが,世界は認識活動と独立に存在していることをみとめる点で科学的実在論と同じであり

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女性は男性が魅力的であると判断するほどコンドームを使用しなくなる!?

女性は男性が魅力的であると判断するほどコンドームを使用しなくなる!?

先日、Twitterのタイムラインで以下のツイートが流れてきました。“Does attractiveness influence condom use intentions in women who have sex with men?”(魅力は男性とセックスする女性のコンドーム使用意図に影響するか?)という論文に関してです。

相関係数の高さ(r = -0.552)が気になったので、公開されてい

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想い出は人工物に宿る

想い出は人工物に宿る

(アメブロからの転載)

人はなぜ元カレ/元カノを引きずるのでしょうか?

答えは至ってシンプルです。「想い出は人工物に宿るから」です。

そう言われても「?」だと思います。順に説明させてください。

たとえば,元交際相手と初デートで行った場所にたまたま訪れたとき,「あぁ,あの人と昔ここに来たなあ」と思い出すのではないかと思います。思い出しているのは自分ですが,思い出させたのは「場所」(人工物)で

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