自閉症児の共同注意の確立に表情共有は必要か?
今回参考にした論文はこちら↓
雑誌名:Current Biology
Impact Factor: 9.2
※内容には、個人的な見解と解釈が含まれます。ご理解の上ご覧ください。
研究の概要
おもちゃで遊んでいる間に、保護者と子供の視線追跡をして、まずは子供と親がお互いの顔を見つめる割合を定量化した。
次に、共同注意に関係なく、2人組のメンバーが同じおもちゃを同時に見た瞬間の共同注意の割合と特性を調べた。
最後に共同注意に先立つ行動の手がかり(顔の表情、触り方、おもちゃの名前など)を調べた。
これらを定型発達児と自閉症児のグループ間で行い、これらグループ間で顕著な類似性があることを発見した。
参加者の特性
生後24〜48ヶ月の自閉症児(19名)
定型発達児(18名)
上記の子どもたちが保護者と一緒に自由におもちゃで遊んでいる間の様子を観察した。
顔への視線について
子どもの顔への視線
共同注意の促進には、目を見つめることが重要であると考えられているため、最初に子どもたちが親の顔を見つめた割合を調査した。
子供達は対話中に親の顔をほとんど見ることがなく、これは定型発達児と自閉症児においてグループ間で差はなかった。
さらに、両グループの子どもたちで、遊びの間に親の顔を全く見ない子達もいた(定型発達:4名、自閉症:6名)。
親の顔への視線
対照的に、両方のグループの保護者は、子どもが保護者の顔を見つめるよりも、対話中に保護者が子供の顔を見て過ごす割合が多かった。
これは、両方のグループで有意差なく当てはまった。保護者が子供の顔を見つめるのに費やした時間はグループ間で差がなかった。
お互いの顔を見合うこと
保護者と子供の両方が同時にお互いの顔を見つめた瞬間は稀であり、グループ間で差はなかった。
共同注意について
次に、おもちゃで遊んでいる時の共同注意がどの程度達成されたかを評価した。
検証の結果、両方のグループで高い確率で、共同注意が成功されていた。
共同注意の成功には、視線や指差しなどが用いられ、両グループともに子供主導により成功がされていた(親主導の共同注意の割合が低かった)。
共同注意の瞬間における保護者のおもちゃ呼びについて
子供が共同注意を行ってる時に、保護者が子供の注意を引くおもちゃの名前を呼んだ割合を、共同注意を行っていない時と比較した。
保護者のおもちゃの名前を呼ぶことに対する共同注意の有意な主効果を認めた。
これは、両グループにおいて、共同注意なしの場合と比較して、共同注意ありの場合におもちゃを呼ぶ頻度が多かったことが明らかとなった。
子供たちが共同注意に従うためのヒント
両方のグループの子ども達で共同注意の前に保護者の顔をほとんど見ないことが明らかになった。
両方のグループの保護者は、共同注意の前に頻繁に物体に触っていた。
最後に、両方のグループの保護者は、共同注意に先立ちおもちゃの名前を呼んでいた。
子供達が保護者の顔を見つめる頻度は、保護者がおもちゃの名前を呼ぶ頻度よりも有意に少なかった。
これらの結果から、共同注意を行うヒントとして、
顔の表情を見ることよりも、おもちゃに触ることや名前を呼ぶことで共同注意の確立につながる可能性が高いことが示唆された。
まとめ
言葉の発達にも重要とされる、共同注意について、顔の表情を見合うことは重要なことの1つと思われていたが、
今回の結果から表情を見ることはそこまで重要ではないのかもしれない。
また、驚いた点としては、定型発達児と自閉症児で共同注意に差がなかったこと(同様に保護者の顔を見なかったこと)である。
現場で、共同注意が図りにくい場面を度々観察するが、おもちゃの接触や名前を呼ぶことなどで、その後の共同注意に繋がりやすくするヒントとなっていることが今回の研究で明らかとなった。
個人的には非常に興味深い研究でした。
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