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没ネタ祭

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様々なnoteクリエイターの「未完成記事」「未発表記事」を集めました。 どうして未発表に至ったのか、そこに至る千差万別のドラマをお楽しみ下さい。 これは僕たちの文塚。生まれなかっ… もっと読む
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記事一覧

【掌編小説】グラスとラムレーズン

【掌編小説】グラスとラムレーズン

夜の中央は、何時頃なのだろう。
一日の始まりは、いつからなのだろう。

午前2時のコンビニエンスストアは、白い光を周囲に放ちながら、夜の海の面でゆらゆらと揺れている。

あたしは、イートインスペースの椅子の上から、ガラスの向こう側に広がる異世界を眺めている。
冷房が効きすぎているのかな、少し寒い。

誰もいない空間には、時間が流れない。
赤いテールランプが海面を跳ねていく世界は、容赦なくあたしを置

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『ナトリウム オブ ラヴ』

『ナトリウム オブ ラヴ』

梅雨に入ってから、妻の具合がよくない。
天気や気圧が不安定なせいか、いつもグッタリとして辛そうだ。悪いのは体調だけでなく気分も塞ぐようで、表情も暗い。

「炭酸水が飲みたい。そしたら気分もスッキリするかも」

なにか欲しいもの、食べたいものはないかと聞くと、妻はそう答えた。おれは早速コンビニでペットボトルの炭酸水を買ってきた。だが妻はそれを一口飲むなり、こう言った。

「ちょっと、ちがう。もっと天

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【夏の詩】

   葉の裏で 夕立ちを待つ かたつむり

 何事にも「タイミング」というものがございます。この子はそれに恵まれませんでした。
 この子が生まれたときには、すでに兄がおりました。
  「葉の裏で 五月雨を待つ かたつむり」
 兄はワタシのブログ友達のところに投句済でしたが、この子が生まれたときにワタシは思ってしまったのです。「この子の方がカワイイ」と。
 しかし、今更、ワタシに何が出来るというので

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「現代詩 おもむろに胸を」(未発表作)

「現代詩 おもむろに胸を」公表に寄せて

帰化植物ハタケニラと私の物語は「凶暴の花」
http://murasaki-kairo.hatenablog.com/entry/2018/10/30/201255
を参照されたし。

上述の如くに精々、庭の害草駆除を行いながら作られたのが本詩。
暴力的な詩のため公開を控えておりました。当時は気持ちも荒んでいたのです。とにかく書く作品がみな任侠になってまし

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没ネタ祭「現代詩 黒衣の鳩」(未発表)

没ネタ祭開催中!
下書きフォルダの未整理品お寄せ下さい!
未発表、未完成に纏わる個人的事情即ち物語をお聞かせ下さい。
という訳で、まだ続いている没祭。
(わっしょい)
秋の詩を蔵出しします。
立体駐車場の屋上階で鳩を見ながらコロッケを食べる詩です。
鳩の鳴き声を模写して、ポストモダンの思想家の名前等が無意味且つ無目的に列挙されます。取り敢えず「鳩の鳴き声」が「ボロブドゥール」と聞こえます。が、この

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没ネタ祭「現代詩 光の海に還ること」

本日の没ネタ祭です。神輿は一人でも担ぐアルヨー!ワッショホーイ!
この作品は伊東静雄賞という「お金も名声もない詩人」でも応募できる現代詩の公募…、に応募して落選したものです!
公募に出した作品って発表し辛いんですよ。落選となれば尚更。作品の価値が認められなかった訳ですから、作者自身も価値を見失う訳です。特にこの詩はシリアスに作ったので落選しても笑いにならない。だから余計にね、ね。
しかし、そんな繊

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【詩】

夏の香(か)を

キミに伝えんと

メールうつ

恐ろしいことに「題」すらありません。
人様の俳句ブログに軽い気持ちで投稿した本作、完全にnote及び自分のブログでの出番を失っていたところに、どこからともなく祭囃子が・・・・・・。
ヘチマの陰から飛び出した次第でございます。南無南無・・・・・・。

没ネタ祭「日記」

特定少数の皆様こんばんは、ウネリ本体です。時は2006年(鎌倉時代よりちょっと後です。)私は毎日毎日、ネット上に日記を書いておりました。2年弱書き続けた当時の文章はサービス終了によって電子の海に消えました。(日記が「ブログ」へと移り変わって行く時期でした。)全てをコピー&ペーストすることは流石に面倒で、記念碑的に、割と無作為にサルベージしたものをメモリカードに保管、それから早、幾時代。
昨年not

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没ネタ祭「大福ちゃん」

大福ちゃんは丸くて可愛い
みなを助ける救世だ

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と、ある時から
僕の心象世界に大福ちゃんという存在がいて
愛らしく尚且つ美味しい
空想上の愛玩動物であったわけなのだが

そも大福ちゃんは何処から帰来したイマジナリイなのか

などと、ペンを片手にひとり
大福ちゃんについて思慕していたら

ある時、
おもむろに我が家の小さな人が
大福ちゃんの話を始めた

大福

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没ネタ祭「現代詩 ポンタ(未完)」

おい
あんな所に
ポンタがいるぜ

まるまるとして
可愛いじゃないか
まるまるといえば
俺だって
まるまるとしているんだぜ

どうだい
可愛いかい

駄目かい

薄毛じゃ駄目かい
別にポンタだって
髪の毛はないぜ
同じじゃないかい

腹を叩けばポンと鳴る
幸福が詰まっているんだぜ
ポンタにも
俺にも

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没ネタ祭「現代詩 鎌倉サンセット」

没ネタ祭「現代詩 鎌倉サンセット」

ペラペラのサーファーが由比ヶ浜に
浮いたりひっくり返ったり
僕は目が悪いのでそれらが棒人間に見える

渋滞に巻き込まれて
二時間余
僕は
生きることに辟易した
失望した

そんな苛立ちを
春の蜜柑にぶつけている

アーアー
本日は建国記念日なり
かつて神代の神武天皇が即位した日なり
これ紀元節なり
日本が滅びた日に慶事を喪くし
日本が再た主権国家の領分を得て
勝ち得た国民の祝日なり
建国を偲び

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改元だ、祭りだ、「没ネタ祭」!

改元だ、祭りだ、「没ネタ祭」!

皆様、こんにちは。素敵な創作活動されておりますでしょうか。何のタイミングを計ったわけでもありませんが、「わたむし」さんが没ネタ祭をご所望なので即断して開催でございます。(※注)

人様には、その心中に誰に見せることもできぬ秘密の手帳がございます。その手帳には発表しようとしてできなかった遺恨の未完成作品が溢れております。
つまり。伝えられなかった想いが未完了に詰まっているのでございます。

帯紐をそ

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象では大きすぎる。

「愚者の楽園:象では大きすぎる」
(2000年11月16日初稿/2018年10月28日改稿)

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差出人不明の小包には、小さな象が入っていた。
耳にカードが挟んである。
『これは不幸の象です。この象を受け取った人は、六十四人のひとに同じ文面のカードと象を送付してください。期限は一週間と致します。もしも!実行されなかった場合には!恐れ入りますが、インドの呪いが貴方を襲うことになるでしょう』

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思い出が多すぎる。

わっしょい。没ネタ祭です。
つい先日、手元にないと思い込んでいた過去の作品の一部を妻が保管していることを知り、おそるおそる再読する機会を得ました。
20年近く前に書いた作品と云うのは、もう恥ずかしいとか照れくさいなどと云う衒いを越えて、ただただ拙く、そして愛おしいものでした。
当時の私は本当に(本当に)ひどい生活をしていて(吐きそう)、更にタチの悪いことにそれを誇りに感じている愚かな一面もあり、今

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