民話ブログ

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現代における民話を探求、収集、創出するというテーマのアカウント。こじつければ何でも民話あるいはSF。すべては得体の知れない誰かの私小説。それに気がついてしまった! 長文多め。よろしくフォロー大歓迎。連絡先アドレス→ minwa.blog@gmail.com

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  • 山怪バンライフ

    打ちひしがれた男が山奥で車中泊していたら、色々と奇妙な事が起こっていくという小説。 一記事はすぐ読める分量です。 週に1〜2記事、更新(予定)

  • 民話ブログ的私小説

    以前から書いていたブログ的小説、あるいは小説的ブログ。 むかしのものは加筆修正して収納。新作も順次追加中。

  • 民話的雑記帳

    日々の雑感。読んだ本、映画の感想など。順次追加。

  • 民話的スポット紹介

    民話的スポットを紹介していく記事の置き場。 順次追加中。

  • 民話ブログの民話

    あちこちで採集した民話です。

最近の記事

  • 固定された記事

この世界が仮想現実であることが証明された。

そうなのではないかと常日頃から思っていた。 マトリックスの一作目をDVDで観たとき「これだ。すごくよく分かる。この感じ」と思わず膝を打った。郊外の街に住む高校生だった自分にとっても、まさに仮想現実という概念こそがガチでリアルな現実だった。ヤバいよヤバいよ、と激しく興奮したことを覚えている。 つまり、この世界は仮想現実なのだ。 それが今朝、ほんのつい数時間前に5月の朝陽が入り込むリビングにおいて証明されてしまった。 もう一度言おう。 この世界が仮想現実であることが証明され

    • 山怪バンライフ ③

      朝霧の食魔  次に目が覚めると、辺りはぼんやり明るい。リクライニングにしていたシートを起こして、車の外に出てみる。 明け方の空気が頬を一瞬で冷やす。濃い霧が出ている。かなり山深い所まで来ているのだ。 「ほら、やっぱり何もない」  車の周囲をぐるっと見て回ったが、人間や野生動物の足跡らしきものは見当たらない。けれどもバンの車体には小さな手形がべたべた付いている……といった怖い話的な痕跡もなかった。 「あれはただの夢だよ。幽霊なんていない」  助手席に置いた骨壺に語り

      • 山怪バンライフ ②

        他に誰もいない 「どう?」  わりとドラマチックな最後だって思わない? これが自分の終わり、そして君との最後の想い出……になる筈だったんだけど。  車はギリギリの所で停車していた。  直前になって自分がブレーキを踏んだのか、最新の制御システム、事故防止機能のようなものが働いたのか、どうも分からない。しかし目の前のガードレールを超えて味わった感覚は、ただの妄想とも思えなかった。  とにもかくにも、自分の乗った車はこうして崖上に留まっている。 「もしかして、助けて

        • 山怪バンライフ ①

          死出の旅へと  妻が死んだ。もう自分には何もない。何をする気にもなれない。だが飯を食わなければお前も死ぬのだぞと誰かに言われた。言われたような気がしただけかもしれない。部屋はずっと薄暗く、自分がいつ眠り、いつ起きているのかも判然としない。ずっと時間の流れが感じられない。しかし体重は二十キロ近く落ちている。  どこにも出かけずにいたので、すっかり足が萎えていた。手の平から錠剤がこぼれ落ちて床に転がり、かがみ込んでそれを拾うのだが自力では立ち上がれない。そのまま部屋の隅まで這

        • 固定された記事

        この世界が仮想現実であることが証明された。

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        記事

          『コロナの時代の虎』

           一見すると廃墟のようにも見える古びた二階建ての小さな店舗だが、日が落ちる頃そこを通ると大抵は明かりが灯っている。だから一応は廃墟でないらしい。恐らく元は濃紺色だったと思われるが長年の雨風や他の何かに染められたり色あせたりで屋号の文字も擦れて読み辛い、とにかくボロ布じみた暖簾。しかし思い切ってそれを潜ってみれば意外にも店の中はいつも賑わっている。いまにも崩れ落ちそうな小さく狭い店だが、それでも結構繁盛している様子だった。 「いや、ほんまによう飲む。わしも若い頃よう飲んだけど

          『コロナの時代の虎』

          『田舎はこんなもん』

          集落を囲む山々の稜線に、細長い建物がへばりつくように建っている。その建物は尾根伝いに回廊のように長く延びて、集落の収まる盆地を縁取るように一周していた。一見すると万里の長城みたいな壮大さで、これはきっと重要な文化遺産だとか宗教的な建造物じゃないかと思われる。でも実際は、バブル末期に着工して一応は完成したが運営会社の倒産によって営業を開始する事もないままに朽ちていく、やたら長大なホテルの廃墟だった。 「もったいない……」 その廃虚を間近にして私が思わずつぶやくと、すこし先を歩

          『田舎はこんなもん』

          ぽっくりさん 1

           じわじわと苦しめられて死ぬのは厭だなと、多分ほとんどの人が思う。たとえば死が確実に目前に迫りつつある事を日々自覚せざるを得ない老人は——逆説的になるが元気な老人ほど、現状ある程度健康であるだけ、とくにそう思うのだろう。だから世の中には「ある日突然ぽっくりと、苦しまず自覚なく死にたい」と願う人たちが一定数いて、そんな彼や彼女たちが一カ所に集まって「ぽっくり、ぽっくり、どうかぽっくり死なせて下さい……どうぞ死なせたまええ!」とか、そんなような祈りを意気軒昂と捧げている寺院が日本

          ぽっくりさん 1

          極私的散歩ダイジェスト 【巣鴨~板橋】

          世の中がコロナになるすこし前、高校の同級生が近所に遊びに来て、いい歳をした男二人で平日の昼間から散歩したことがある。 今回は、その記録。個人的に何となく思い出しながら何となく書きます。だから有用な情報とかエモい感動など別にないと思います、すいませんごめんなさい。個人的な文章の練習とかリハビリ、あるいは習慣化の為の記事ですね。何かもっと気楽にnoteも更新していいんじゃないかと思ったわけで。さあ、だから気楽にダラダラ書くぞ。書きます。 あとこれもとくに書く意味がないけど、現

          極私的散歩ダイジェスト 【巣鴨~板橋】

          短編ゴシックホラー 『悪魔城 ITABASHI』

          まったく無駄な遠回りばかりだったと、これまでの人生を振り返って私は思う。 つまり「中年の危機」と世間で謂われるものに、漏れなく自分も捕らわれてしまったのかもしれない。これも俗世に生きる男の多くが経験するという現代的な通過儀礼と考えれば「何だそんなものか」と逆に楽天的になりもするのだが、それと同時に自分というものが余計に詰まらない、如何にも取るに足らない存在に思われてもきて、やはり辛くなる。 いっその事すぐにもっと歳を取って一気に老いさらばえてしまえば、たとえば枯淡の境地と

          短編ゴシックホラー 『悪魔城 ITABASHI』

          短編グルメ私小説 「正義の消費者」

          地元の国道沿い、道の駅。 本館とは別に仮設のバラックみたいな建物があって、その中には飲食店がいくつか並んでいる。それぞれ好きな店の食券を券売機で買って、好きな席で自由に食事する。つまり小規模ながらもフードコートのような形式で、休日ともなれば家族連れなどで大いに賑わった。 そこに出店するうどん屋が、おれたち二人のお気に入りだった。 初めてそこを訪れた日の事。 うどん屋の調理場に立つ店主を見つめ、榎木が言った。 「あいつを見ろよ。……ほら、よく太っているだろう。知ってるか?

          短編グルメ私小説 「正義の消費者」

          現状たまに小説ぽい変な民話?をアップするだけのアカウントだけど、本当は週四位のペースで投稿、たとえば療養&料理日記に本や映画ゲーム関連記事とか有料悪口マガジンとか色々やりたい!と、そんな気持ちもあります。よしまずは自己紹介ページでも作ろう…もう一年程そう思い続けて放置してますが。

          現状たまに小説ぽい変な民話?をアップするだけのアカウントだけど、本当は週四位のペースで投稿、たとえば療養&料理日記に本や映画ゲーム関連記事とか有料悪口マガジンとか色々やりたい!と、そんな気持ちもあります。よしまずは自己紹介ページでも作ろう…もう一年程そう思い続けて放置してますが。

          短編小説 『田舎はこんなもん』

           集落を囲む山々の稜線に、細長い建物がへばりつくように建っている。建物は尾根伝いに長く延びて、ちょうど集落のある盆地を縁取るように一周している。一見すると万里の長城みたいな壮大さもあるから、これはきっと重要な文化遺産だとか宗教的な建造物じゃないかと思われる。でも実際は、バブル末期に着工して一応は完成したが運営会社の倒産によって営業を開始する事もないままに朽ちていく、やたら長大なホテルの廃墟だった。 「もったいない……」 その長大な廃虚を間近にして私が思わずつぶやくと、すこし

          短編小説 『田舎はこんなもん』

          【民話ブログの民話】 スナック純ちゃんと正夫さん

           旧国鉄I駅のすぐ近くに、古い店舗のスナックや飲み屋などがゴチャゴチャと軒を連ねる、ちょっと独特な雰囲気の通りがある。その一角の小さな居酒屋に、ここ数年の自分は通っていた。  これは前回と同じように、その店の女将・M子さん(64)から聞いた話である。 ○ 「いまはラーメン屋さんとかも出来て、若い人よく歩いてたりするけどね、ちょっと前まで雰囲気違ったんよ」   M子さんの営む居酒屋は、開店してから大体二十年くらい。全体的に古びて煤けて見える界隈だが、意外と店や人の入れ替わり

          【民話ブログの民話】 スナック純ちゃんと正夫さん

          『繰り返し、何度も砕かれる』

          「明日、地球が粉々になるんだって」 「何それ? 粉々って、粉チーズみたいに? でも粉チーズって、最初から粉だよね。あれ、元は塊なの? その塊を砕いて粉にしてるんだっけ?」 「そうだと思う」 「そういえばさ、給食にパスタ出たじゃん」 「出たね。ソフト麺の」 「あれに付いてくる粉チーズって、小さい袋に入ってたよね。一人用の、使い切りサイズ」 「そんなのあったっけ」 「あったよ」 「思い出せない」 「いや、絶対あったし。ほら、ミートソースのときだけ付いてきたやつ。それ以外は、全然出

          『繰り返し、何度も砕かれる』

          【民話ブログの民話】 猫捕り女たち

           旧国鉄I駅のすぐ近くに、古い店舗のスナックや飲み屋などがゴチャゴチャと軒を連ねる、ちょっと独特な雰囲気の通りがある。その一角の小さな居酒屋に、ここ数年の自分は通っていた。  その店の女将、M子さん(64)から聞いた話である。 ○  去年の今頃、この通り周辺に数匹ばかりの野良猫が居着いていた。どうやら店舗の隙間や、線路に面した空き地を住処にしていたようだ。やがて可愛らしい子猫の姿も見られるようになり、同じくこの通りに生息する人々によく親しまれた。猫好きのスナックのママや

          【民話ブログの民話】 猫捕り女たち

          【民話ブログの民話】 一昨日のサーモン

           一見の客が店に入ってきてカウンター席に着いた途端に「サーモン下さい」と言った。昔ながらの江戸前の小さな寿司屋をずっと一人で切り盛りしてきた頑固親父は最近めっきり年を取り、それで余計に頑固になっているものだから、たちまち青筋をこめかみに浮かび上がらせ、その客をいきなり怒鳴りつけた。 「うちはそんな店じゃねえやい! 一昨日来やがれってんだ!」  若い男の一見客は自分がどうして怒鳴られたのか分からない様子で、ただ親父をじっと見つめる。親父の方は年甲斐もなく一気に興奮したので、

          【民話ブログの民話】 一昨日のサーモン