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現代の奴隷制🇺🇸―刑務所大国アメリカの「産獄複合体」。映画「13th 憲法修正13条」

もうすぐアメリカ大統領の中間選挙があります!!



ってことでアメリカについて今回は書きたいと思います。


ドキュメンタリー映画「13th 憲法修正13条」


皆さんはアメリカ合衆国憲法修正13条を知っていますか??

1865年南北戦争での北部の勝利を受けて定められました。

「奴隷および本人の意に反する労役は、犯罪に対する刑罰として当事者が適法に宣告を受けた場合を除き存在してはならない。」
と定め奴隷制を廃止した条文とされています。


しかし、受刑者については「本人の意に反する労働」を認めていました。
そして、現代でも廃止されたはずの奴隷制が形を変えて存続していることを告発したドキュメンタリー映画です。


アメリカは実は世界一の「刑務所大国」と言われています。

未決勾留を含め20年時点で、約170万人が連邦や州の刑務所などに収監されています。(日本は約5万人)。
コロナ下では、外出制限による逮捕者の減少や感染防止のための早期釈放などにより収監者が大きく減りましたが、ロンドン大のデータによると、米国の人口10万人あたりの収監者数は600人超で世界最多です。

70年代にニクソン政権が「麻薬戦争」などで厳罰化を打ち出し、80年代にレーガン政権が取締を強化して以降、収監者の数は急激に増えました。

そして狙い撃ちされたのが黒人です。人口あたりの収監者の割合は白人の5倍以上です。


1980年代後半、「クラック・コカイン」と呼ばれるタバコで吸引できるコカインが都市部の貧困地区に住む黒人の間で急速に広まりました。
1988年までは麻薬所持に対する禁固刑は最大1年でしたが、5年に引きのばされました。白人が使用していた粉末のコカインでは500グラムを所持しているのが見つかった場合でも5年の禁固刑でしたが、黒人が使用していたクラック・コカインの場合は、わずか5グラムの所持で同じ5年の禁固刑が科され、その結果白人の数十倍から100倍の刑期が科されました。

黒人は専門的な薬物の治療システムも受けられず、刑務所に送られました。
刑務所は、まともな治療を受けられない大量の麻薬患者の収容所になってしまったのです。

そして「麻薬との戦争」政策は、警察官の恣意的尋問や所持品検査の権限をほとんど無制限に拡大しました。
その結果、外観から判断して「怪しい」と思った人物に職務質問する「レイシャル・プロファイリング」が可能になり、黒人というだけで警察官に尋問されるようになったのです。

そして麻薬を所持していれば単純所持でも刑務所に送られ、出所後もフードスタンプなどの社会的援助を受けられなくなります。
低所得の家族向けの住宅にも入居できずホームレスになってしまいます。
一家離散、子どもは養子にだされます。
選挙権も剥奪されます。
こうして社会から疎外された元囚人たちは再び犯罪を犯して刑務所にもどっていきます。

こうして、受刑者は増え、刑務所はどんどん建設されます。
連邦と地方の政府予算が圧縮される中で、警察・裁判・刑務所関連予算は急増し続けています。
そして、これらの巨額な予算は多くの人を潤しています。
監獄建設とその運営に多額の予算が注ぎ込まれ、監獄誘致によって過疎地には再開発の機会が、失業者には雇用が、企業には、建設需要、物品・サービス需要、あるいは民営監獄経営には利潤が提供されることになりました。
まるで公共事業。

1980年代に入り、監獄内での企業による囚人雇用が許可されました。
企業は組合に入れない囚人を健康保険、失業保険、傷害保険のための分担金を支払うことなく、労働者として使用できるようになりました。
民営監獄も始まり、多国籍企業がこれに参入し、いずれも高配当を続ける企業になっていました。


このような企業・政治家などの利権集団の複合体は、「産獄複合体」と呼ばれています。
犯罪の防止、社会の安全、受刑者の更生に関心はなく、もっぱら収監者数の維持、拡大による利潤の拡大に関心を抱いています。

かつて黒人は、南北戦争後のジム・クロウ法の下で犯罪者に仕立て上げられ、長期刑を科された上で、囚人として企業に貸し出され過酷な労働を強いられていました。

私有財産でなかった囚人を大事にする理由はなく、彼らは残酷な懲罰を受けながら危険な条件下、限界まで働かされたため、彼らの死亡率は他の地域の同じ産業での労働者の死亡率の10倍をほとんど常に超えていました。
奴隷として黒人を使えなくなった代わりに、囚人にして強制労働させたのです。


その時代と同じことが、21世紀である今も行われているのです。


近年「革新派」と呼ばれる検察官たちが、厳罰ではなく更生プログラムの拡充を訴えて、民主党支持の強いシカゴやボストン、サンフランシスコなど声を上げています。
しかし、コロナによって治安が悪くなると、厳罰を求める市民感情が強くなって、革新派検察官への逆風となっています。🥺
サンフランシスコの検察官はリコールされてしまいました……


しかし、「アンダーカースト」とも呼ばれる階層を意図的に作り出しているのは、奴隷制の時代に奴隷であった黒人が「人間以下」の家畜と同じ扱いを受けてきたことと同じなのでは?
ジム・クロウ法の時代に黒人が隔離政策で法の保護の外側に置かれていたことと変わりません。

差別はあの手この手で行われます。
見えない「レイシズム」にこそ目を向けるべきではないでしょうか?
アメリカが変われば世界も変わるのでは⁉️🗽


 

参考文献
「アメリカ黒人の歴史 奴隷貿易からオバマ大統領まで」
上杉 忍著 中公新書

「アメリカ黒人史 奴隷制からBLMまで」
ジェームズ・M・バーダマン著 ちくま新書

 


執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン

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