7 四人は無事に山を越え――半日後、アーキスタの国境の町、アスタナへとたどりついた。 《どうにか国境を越えられたな》 「ああ。僕にとっては三年ぶりの故…
6 そして、さらに何事もなく時は過ぎ、紫蘭月四日の夜となった。 騎士団の本部には、ほとんど詰めているものがいない。隊長すらいない。いるのは、副団長…
5 騎士として夜警を買って出たオードは、早くも翌日の夜に活躍することとなった。 それぞれ仕事から帰ってきたランたちは、月明かりを浴びて人間の姿…
4 紫蘭月一日の夜。 月が昇る時間を見計らって、ランたちは宿の裏にある木の根元にオードを置いた。 そうして、言われたとおりに木の後ろにまわり、…
3 そして、その日の夕方。 「ホントにおいしい料理が食べられるんでしょうね」 「うん、ホントだって」 「ホントにィ? あんた、なんでもおいしいお…
2 犯人は国境を突破しようと、海辺か山、そのどちらかの町に潜伏しているはず。 だとしたら、このディンガの町にいる可能性も高い。 「きっと、賞金だっ…
第三話 「紫の月と王冠泥棒と国境の騎士団」 1 緑豊かな山の中を、土色の道がジグザグに上へと伸びていく。 そんな山道を登った者は、誰でも息…
第二話「水の都と夏祭りとそれぞれの過去」 1 青蘭月も半ばを過ぎ――ランたちはセルデスタの王都、水の都と謳われるディスターナに到着した。 …
3 赤い花びらが、はらりと足元に落ちた。 枕元に飾られていたのは、ファーレスティーネの花。 赤く気高く、誇らしく――と謳われた、故国の花だ。 …
第一話 「夏の陽射しと乙女心」 1 青い海とまぶしい太陽。 青蘭月は一年でもっとも太陽が輝き、気温も高い時期である。 「ふあああああああああ…
黒蘭月の間を抜けると、また壁画の間だった。 「結婚式の次だから何かと思えば……」 アルヒェの唸りも当然だった。壁に描かれていたのは、先ほど倒したばかりの二匹…
4 それから七日後の昼すぎ。 海賊船『女神の翼』号は順調に航海をし、ゼーガント諸島をのぞむ海域に出た。 そして、ランたちは急な崖が続く海岸線に注ぎ込…
その日の夕食は大変にぎやかだった。 海賊たちは大きなテーブルをみんなで囲み、大皿から好きなように料理をとって食べ、酒を飲み、陽気に歌い、大声で話す。 「まるでお…
翌日は快晴だった。 「海賊船かあ、一度乗ってみたかったんだよね〜」 甲板で潮風を受けながら、ランはどこまでも広がる海を眺めていた。 針路を南東に取った海賊船『…
第三話「青い月と大海原をゆく海賊と伝説の秘宝」 3 (なんでこんなことになったんだ――!?) なりゆきを黙って見ているしかなかったオードは、ランの首…
ムーンライト・ワンダーランド公式
2024年3月12日 17:10
【読者さまへ】藤咲先生への声援質問など、短期間募集いたします。(~今週末:2024年3/15金曜日まで)聞きたい事、伝えたい事などございましたら、どしどし書き込んでください!【更新停滞】本文のデータ化が準備できていない為、更新を一時停止しております。
2023年9月17日 15:26
7 四人は無事に山を越え――半日後、アーキスタの国境の町、アスタナへとたどりついた。《どうにか国境を越えられたな》「ああ。僕にとっては三年ぶりの故国だよ」 さっそく宿屋に入った四人は、ほっとした笑みを浮かべあった。 と、ランが窓の外の景色を見ながら、「まだ日が高いし、オレ、せっかくだから、町の様子を見てこようかな~~」 と言い出した。「それじゃ、僕も一緒に行くよ。なんだ
2023年8月13日 15:44
6 そして、さらに何事もなく時は過ぎ、紫蘭月四日の夜となった。 騎士団の本部には、ほとんど詰めているものがいない。隊長すらいない。いるのは、副団長のヒースと二、三人の青年だけ。みんな、なにも起きないからあきたのだ。そろそろ王冠泥棒問題も忘れられているというか――あきてきた、というほうが正しいか。 都から離れた国境の町に「王家の宝を盗んだ盗賊が隠れているかも!」という推測は、大い
2023年8月13日 15:40
5 騎士として夜警を買って出たオードは、早くも翌日の夜に活躍することとなった。 それぞれ仕事から帰ってきたランたちは、月明かりを浴びて人間の姿に戻ったオードを連れて宿の前まで戻ってきた。「いい? あたしたちが窓を開けたら、オードは縄梯子を伝って部屋に入るのよ」「悪いが気がすすまない」「なんでよ?」「……アージュ。ひとり分の宿代を切り詰めたい気持ちもわかるが、泥棒じゃあ
2023年7月9日 15:10
4 紫蘭月一日の夜。 月が昇る時間を見計らって、ランたちは宿の裏にある木の根元にオードを置いた。 そうして、言われたとおりに木の後ろにまわり、ランたちはその時をじっと待つことにした。 魔の月は魔物が徘徊するので、日が落ちると人々は皆、門戸を固く閉ざし、誰も外に出るものはいない。 やがて、月が昇り――紫色の月明かりがあたりを照らすと……。 「久しぶりだな、この感覚は」
2023年6月3日 15:39
3 そして、その日の夕方。「ホントにおいしい料理が食べられるんでしょうね」「うん、ホントだって」「ホントにィ? あんた、なんでもおいしいおいしいって言うから、イマイチ信用に欠けるのよねえ」 疑わしげな目を向けるアージュを連れて、ランは鉱夫が利用する食堂へとやってきた。親方に一応、確認を取ったところ、「騎士団の人ならいいよ」とあっさりと許可をくれたのだ。 食堂に入ると
2023年6月3日 15:32
2 犯人は国境を突破しようと、海辺か山、そのどちらかの町に潜伏しているはず。 だとしたら、このディンガの町にいる可能性も高い。「きっと、賞金だってかかってるでしょうし。あたしたちでとっ捕まえれば、国境は開通、路銀だって稼げるのよ。これって、まさに一石二鳥だわ!」 アージュは翌朝、「とにかく騎士団の本部に行ってみる」と、オードを首にかけて宿屋を出て行った。 犯人を捜すと言って
2023年6月3日 15:28
第三話 「紫の月と王冠泥棒と国境の騎士団」 1 緑豊かな山の中を、土色の道がジグザグに上へと伸びていく。 そんな山道を登った者は、誰でも息があがり、すぐに汗だくになってしまう。 それでも小鳥のさえずりや、谷川の流れる音に励まされつつ登っていくと、ふいに、棚のように張り出した平らな場所に出る。 そこが、アーキスタとの国境の町――ディンガだ。 山間のこの町は気温が低
2023年5月14日 17:40
第二話「水の都と夏祭りとそれぞれの過去」 1 青蘭月も半ばを過ぎ――ランたちはセルデスタの王都、水の都と謳われるディスターナに到着した。 レンガ造りの街の中を縦横無尽に水路が走り、日の光に水面がキラキラ反射している。そこにはアーチ型の橋がいくつも架けられ、それぞれの国の民族衣装をまとった人たちが楽しそうにしゃべりながら歩いていた。「とってもにぎやかな街だね、ここ
2023年4月23日 13:56
3 赤い花びらが、はらりと足元に落ちた。 枕元に飾られていたのは、ファーレスティーネの花。 赤く気高く、誇らしく――と謳われた、故国の花だ。 この花のような色を持つ髪と瞳を綺麗だと言ってくれたその人は、今はもう遠い存在。 閉じられたまぶたが、ふたたび開くことはない。 アージュは夢のなかで、花に手を伸ばした。 指先で触れたとたん、はらはらと残っていた花びらが落ちて――。
2023年4月1日 21:34
第一話 「夏の陽射しと乙女心」 1 青い海とまぶしい太陽。 青蘭月は一年でもっとも太陽が輝き、気温も高い時期である。「ふああああああああああ」 桟橋で釣り糸を垂れていたランは大あくびをかました。朝早いとはいえ、太陽の光がぽかぽかとあたたかくて、眠気を誘うせいだ。《ラン、これで二十七回目のあくびだ》 ランは目尻ににじんだ涙を、手の甲でこすった。「ふぇ? そう
2023年2月25日 15:54
黒蘭月の間を抜けると、また壁画の間だった。「結婚式の次だから何かと思えば……」 アルヒェの唸りも当然だった。壁に描かれていたのは、先ほど倒したばかりの二匹の魔物だったのだ。王子は魔物に勇敢に立ち向かい、戦った。そして、その魔物を従え、凱旋したのだ。「これって、さっきの魔物たちを連れて帰ってきたってこと?」 ランの問いに、アルヒェが壁画を見つめながら、「そうみたいだね。しかし、魔物を
2023年2月25日 15:50
4 それから七日後の昼すぎ。 海賊船『女神の翼』号は順調に航海をし、ゼーガント諸島をのぞむ海域に出た。そして、ランたちは急な崖が続く海岸線に注ぎ込む滝の裏に隠された、古代の遺跡へと辿り着いたのである。「すっげ――……」 晴れた空の下、甲板に立ったランは目の前の滝を見上げた。 海賊船のゆうに二倍はあると思われる幅の滝は、まるで水の壁のようだった。「こんなとこ、初めて見たわ」
2023年2月5日 17:33
その日の夕食は大変にぎやかだった。 海賊たちは大きなテーブルをみんなで囲み、大皿から好きなように料理をとって食べ、酒を飲み、陽気に歌い、大声で話す。「まるでお祭りみたいだね」「いつもこうよ。はい、スープ」 マーレがスープを入れたカップをランに回してくれた。《客船でかしこまって食べるより、このほうが気が楽だろう、ランは》 オードとは食堂で再会した。今はいつものようにランの首にかかっている
2023年2月5日 17:24
翌日は快晴だった。「海賊船かあ、一度乗ってみたかったんだよね〜」 甲板で潮風を受けながら、ランはどこまでも広がる海を眺めていた。 針路を南東に取った海賊船『女神の翼』号は、帆に風を受け、波を蹴立てて進んでいく。 昨夜、ランは目を覚ましたあと、自分が置かれている事態をあっさり受け入れた。 ――というか、オードと話し合って、一応、海賊と取引をしたのだ。 ガレオスが昔から狙っている古代遺跡の
2023年1月21日 16:16
第三話「青い月と大海原をゆく海賊と伝説の秘宝」 3 (なんでこんなことになったんだ――!?) なりゆきを黙って見ているしかなかったオードは、ランの首にかかったまま心の中で舌打ちした。あのふたり、なんか裏がありそう――と言っていたアージュの勘が当たったのだ。 今、ランとオードは海賊船に乗っていた。ランは意識を失っている。あのあと、ぎゃーぎゃーわめいたため、妙な薬をかがされて眠ら