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第三巻~オオカミ少年と国境の騎士団~ ③-5


      5
 

 騎士として夜警を買って出たオードは、早くも翌日の夜に活躍することとなった。
 それぞれ仕事から帰ってきたランたちは、月明かりを浴びて人間の姿に戻ったオードを連れて宿の前まで戻ってきた。
「いい? あたしたちが窓を開けたら、オードは縄梯子を伝って部屋に入るのよ」
「悪いが気がすすまない」
「なんでよ?」
「……アージュ。ひとり分の宿代を切り詰めたい気持ちもわかるが、泥棒じゃあるまいし、窓からこっそり部屋に入るというのは……」
「昨日だって、そうやって部屋に入ったじゃない」
「それはそうだが……」
「だって、あんた、ご飯食べたら、すぐ外に出るんでしょ? 昼間は鍵の姿であたしの首に下がってるし、はっきり言って、ベッドなんか必要ないじゃない。よって、あんたの分の宿代を払うつもりはないわ」
「ひどい言われようだな」
 オードは眉間に皺を寄せた。
「昼間、寝てたくせに。あたしが話しかけても返事しなかったじゃない」
「今は夜型の生活なんだ。大目に見てくれたまえ」
 すると、アージュが、ぶにっとオードの頬をひっぱった。
「なにをする!」
「だって、エラソーなんだもん。あたし、あんたが人間の姿になったら、一度はひっぱってやろうと思ってたのよ」
「……――」
 オードは脱力し、がくっと頭を垂れた。
「なによ?」
「いや、アージュらしいなと思って。君の相手をするのは、意外と疲れる」
 ふー……と息をついて、オードは後ろにいるランとアルヒェを振り返った。
「君たちは、なぜなにも言わないんだ?」
「いやあ、なんか口を出す暇がなかったっていうか、兄妹ゲンカみたいでおもしろかったというか」
「うん、オレも見てて楽しかった。オードって、しゃべるとき、こんな顔してたんだなーと思って」
「あ、僕も思った。ムッとすると眉間に皺が寄るんだね」
「ほっぺたひっぱられた顔もおもしろかったよ」
 アルヒェとランは妙に盛り上がっている。
 人を珍獣扱いしないでくれたまえ、とオードがさらに精神的な疲労を感じていると、バタバタと走ってくる足音が聞こえた。
「オード……いや、オード君はいるかっ?」
 切羽詰まった感じでやってきたのは、副団長のヒースだった。
「どうしたんだ?」
 いったいなにがあったのか、とオードが問う。
紫色の月が昇っているというのに、普通の人間であるヒースが外に出ているのは異常な事態だと察したからだ。
「そ、それが……」
 ヒースは四人の前に来ると、ひざに両手をつき、ぜえぜえと荒い息を吐きながら叫んだ。
「ミーファが……森にキノコ取りに行ったミーファが、まだ戻ってこないんだ!」
 ミーファは七歳の女の子で、今朝、ひとりで町を出たまま、夕方になっても戻らないのだという。心配した母親が日が落ちる直前に騎士団本部に駆け込み、探してほしいと訴えたのだ。
「今は魔の月……。しかも、このあたりの森には、紫蘭月の晩になるとドラゴンが現れるんだ!」
 ヒースの説明に、ランたちは目を丸くした。
 
「ドラゴン!?」
 
「そう、四枚の翼を持つドラゴンだ。とても凶暴なんだよ」
 ランはうっかり「すごーい、強そう、見てみたーい!」と言いそうになって、口をぱっと押さえた。
 今は緊急事態なのだ。のんびりしている場合ではない。
「大変だ、早く探しに行かなくては!」
 正義感の強いオードは森のほうを見やった。
「ヒース、君は騎士団本部に戻りたまえ」
「し、しかし……」
「我々がミーファを探す。必ず見つけ出すから、君は母親とともに待っていてくれたまえ。悪いが君がいると、かえって足手まといだ」
「わ、わかった」
 ヒースは素直にうなずき、芝居小屋へと駆けていった。
「アルヒェは宿で待っていてくれ。ラン、アージュ――」
 行こう、と言いかけて、オードはすぐに「アージュはいい」と言い直した。
「なんでよ?」
「剣の腕が立つからと言って、君を危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「オード……?」
 アージュはハッと口をつぐんだ。
オードがこんなときでも気を回している理由がわかったからだ。
 アージュを普通の人間だと思っているアルヒェは、オードの言葉に同意し、うなずいた。
「そうだよ、アージュ。僕たちは宿屋で待っていよう」
「でも……」
「昨日も言ったはずだよ。僕たちは普通の人間。ついて行けば、オードたちの足手まといになるって。君が、ふたりのことが心配で、ついていきたくなる気持ちはわかるけど」
 アルヒェの瞳は真剣だった。アージュの身を本気で心配してくれているのだ。
「そう、よね……。あたしは普通の女の子だもんね……」
 アージュはうつむき、口の中で小さくつぶやく。
「ラン、行くぞ」
「うん!」
 オードとランは森へと駆けていく。
「さあ、アージュ、中に入ろう」
 アルヒェの手が左肩にやさしく置かれる。
 が……ややあって、
「……イヤよ」
 アージュはその手を右手で払い、顔を上げた。
「ごめんね、アルヒェ。やっぱり、あたしも行かなくちゃ!」
「え?」
「アルヒェは宿で待ってて!」
「アージュ!?」
 アルヒェの声を背に、アージュはランたちを追って走った。
「待って!」
 その声にランとオードは振り返り、立ち止まった。
 



 

「アージュ?」
 アージュは追いつくと、肩で大きく息をしてから、オードをキッとにらみ上げた。
「こんなときに余計な気を遣わないでよ、もう」
「……しかし」
「しかしもでももないの。あたしは魔の月の下を歩ける貴重な存在よ? 人手は多いほうがいいに決まってるでしょーが」
「あのー、オレ、実はよくわかってないんだけど……」
話の中身が見えてないランが、そーっと片手を上げる。
「あんたは黙ってて。とにかく、今はそのミーファって子を探すことが先よ。オードの余計な気遣いに関しては、あとで話し合いましょ」
「わかった」
 オードはうなずき、背を向け、歩き出した。
「ねえねえ、もしかして、オードとアージュってケンカしてるの?」
「ケンカではないが、似たようなものだ」
「そうね」
「……やっぱり、よくわからない」
 三人は森への道を急ぎ足で歩いていく。走らないのは、夜道が暗くて危険だからだ。
 やがて、ランたちは森の中に入った。
 生い茂る樹木のせいで、ただでさえ暗い月の光がさえぎられ、ますます歩きにくい。
「こんな森の中で迷子になったら、動けないよね」
「そうね、ただでさえ、暗いもの」
「無事でいてくれるといいが……」
 木の根に足を取られないように進むため、焦る気持ちとは反対に、どんどん歩く速度が落ちていく。
「ミーファ、って呼びかける?」
「いや、しかし、下手に大きな声を出して、潜んでいる魔物を刺激することになっては……」
「そうね、かえって危険なことになるかもしれないわ」
 アージュがオードの意見に同意したとたん、ガサガサという音が目の前の茂みから聞こえてきた。そして、その音がしたあたりに、ふわふわと赤い炎が舞い出したのだ。
 
「魔物っ?」
 
 アージュが身構え、オードが腰に佩いた剣の柄に手を伸ばす。
「も、もしかして、ドラゴンだったりして……」
 さっきは「見てみたーい」とお気楽に思ったランだが、心臓が早鐘のように鳴り出して、握った手のひらにじっとり汗をかいてしまった。
 と――。
 
「あれ? どうして君たちがここに?」
 
 聞き覚えのある声とともに、茂みの向こうからひとりの青年が顔を出した。
ルージンだ。
 手には、火を灯したカンテラを提げている。魔物だと思ったのは、実はカンテラの火だったのだ。
「どうしてここにって、それはあたしたちのセリフよ!」
 ホッとすると同時に、アージュがルージンをにらみつける。
「まったく、魔物だと思っちゃったじゃない! 驚かさないでよ!」
「あ、ひょっとしてルージンも女の子を助けに来たの? ミーファって子が森から帰ってこないから、騎士団は大騒ぎなんだよね」
 ランが言うと、ルージンはうなずいてみせた。
「あ、ああ。実は、ぼくもそうなんだ。ほら、ぼくがこの町に来た日に、熱を出した子どもの治療をしたと言ったろう? その子がミーファなんだよ。だからとても心配になってね」
「けど、騎士でもないルージンがこんなところにいるなんて危険だよ」
「それは、ランも同じだろう?」
 すぐに返され、ランは返事に困ってしまった。
 本当は呪われた血を持つ者だから、大丈夫なんだけど……。とは、とても言えない。
「しかし、困ったな――」
 オードはしばらく考えたあと、
「帰れというのはたやすいが、そうなると今度は送っていくための人間をつけなくてはならない。ならば、我々についてきたほうが安全だ」
 と結論を出した。
「恩に着るよ。ところで、君は誰だい?」
「ああ、紹介が遅れてすまない。私はオード。騎士団の夜警の任についている」
 するとルージンは、ぽんと手を打った。
「そうか。君が噂のオードなんだね。今日の昼間、食堂で騎士団の連中からさんざん君の話を聞いたよ。腕も立つし、勇気もある。とてもすごい若者だと聞いていたから、お会いできて光栄だよ」
「こちらこそ、療術師で料理人であるあなたの噂はかねがね聞いている。どうぞよろしく」
 ルージンとオードは軽く握手をし、あいさつを交わした。
「ところで君はいつ、この町に来たんだい?」
「昨日の夕刻だ」
 正確には、その時間に鍵から一年ぶりに人間に戻ったのだか――あながち間違いではない。
「え? 街道は泥棒騒ぎで封鎖されていたんじゃないの?」
「申し遅れたが、私はグランザックの王立騎士隊の騎士だ。王命を受けて、アーキスタに行く途中なのだ。どこの検問所も私の腕前を披露すると簡単に通してくれたんだ」
 横で聞いていたランは、
(オードもアージュと同じで噓がうまくなってるよぉ)
 と妙に感動し、また感心した。
「へえ……」
 ルージンはオードの格好を上から下まで眺めた。
「グランザックかー、あそこはいい国だよね。そういえば、あの国の刺繍は馬蹄形だったね。一度、船でグレスタの港に立ち寄ったことがあるんだ。思い出したよ」
 グレスタは先月、ランたちが客船に乗り込んだ港町である。
 しかし、いろいろと話をしている場合ではない。今はミーファを探し出すことが第一だ。
「それ貸して。あたしが先頭に立つわ」
 アージュがルージンの手から、カンテラを取り上げる。
「君たち、カンテラも持たないで、よくここまで来たね」
「用意している暇がなかったのよ」
 アージュを先頭に、ラン、ルージン、オードの順で四人は進んでいく。オードが最後尾なのは、背後から魔物に襲われた場合に備えて、だ。
(オレがオオカミに変身できれば、その子の気配や匂いを追って、すぐに見つけられるかもしれないのに!)
 ランはそんなことを考えたが、今は黄蘭月じゃないし、もし金貨とかを見つめてまた根性で変身するにしても、ルージンがいるのでそれはできない。
 しばらくして、ランたちはぽっかり開いた暗く大きな穴の前に出た。
「これ、洞窟?」
「いや、廃坑じゃないかな。今は使われてない古い坑道が、いくつもあるらしいよ」
 と――ルージンが言った、そのとき。
 微かに、すん……すん……と鼻をすするような音が聞こえてきた。
「もしかして!」
 アージュはカンテラを高く掲げ、中に向かって呼びかけた。
「ミーファちゃん、いるの?」
 すると――……。
「誰?」という心細そうな声が返ってきた。ミーファはここに迷い込んでいたのだ。
「ミーファ、ぼくだよ。ルージンだ」
 ルージンがアージュからカンテラを受け取り、中へと入っていく。
 すぐにルージンがひとりの女の子を抱き上げて出てきた。ミーファは入り口にほど近いところでうずくまっていたらしい。
「よかったあ……」
「うん」
「ああ、無事でなによりだ」
 ランたちはホッとした顔になった。
「足をくじいて動けなくなってたみたいだ。痛いのに、よく我慢したね」
 ルージンは首に抱きついたミーファにやさしく言った。
「こ、声を出したら、魔物にた、食べられ、ちゃうと思った……か、ら」
 次の瞬間、泣くのを堪えていたミーファが安心したせいか、火がついたようにわんわん泣き出した。
「ちょ、ちょっと!」
「ミーファ、泣かないで。もう大丈夫だから、ね?」
 ルージンがやさしくゆすってあやすが、ミーファの涙は止まらない。
「下手したら、魔物が……」
 アージュが言ったとたん、オードがシュッと素早く剣を抜いた。
「もう遅い」
「え!?」
 シャシャシャシャシャシャシャ、となにかがこすれる妙な音が、後方から聞こえてくる。
「貸して!」
 アージュがルージンからカンテラを奪い、ずいっと一歩踏み出した。
 と――紫色の薄闇の中で、いくつもの赤い光がまたたき、ランが叫んだ。
「魔物だ!」
 
 シャシャシャシャシャ!
 
 その魔物は異様な音を鳴らしながら、こちらへ向かってきた!
 カンテラの灯りに照らされたそれは、無数の足と無数の目を持つ、巨大なムカデのようなヤツだった。体の長さがどれだけあるのか、後ろのほうは光が届かないためにわからない。
「早く逃げて!」
 アージュがルージンを促し、剣を抜く。
 ミーファをぎゅっと抱き、ルージンはすぐさま坑道の奥へと走っていった。
今は魔の月。
なので、紫色の月光が届かない場所のほうが安全なのだ。
 シャシャシャと向かってくるムカデをかわし、サッと避けると、アージュは後ろに回りこみ、背中を剣で斬りつけた!
 直後、キーンと音を立てて、なにかが飛ぶ。
アージュは剣先を見て、唖然とした。剣が折れたのだ。
「こいつ、すごく硬いわ!」
「アージュ、危ない!」
 振り下ろされた足を避け、ランは横っ飛びに飛んで、アージュを弾き飛ばす。
 アージュがいた場所に魔物の細いトゲのついた足が何本も、ぐっさりと刺さった。
「今だ!」
 オードがすかさず、魔物を足で踏みつけ、起き上がらないように動きを封じる。
 そして、一瞬で狙いを定めると、硬い殻の間と間の節目に、ずっぷりと剣を差し入れた。
 
シュウウウウウ……――。
 
 息が漏れる音が聞こえ――、魔物はやがて動かなくなった。
 坑道の前に、静寂が戻る。
「やっつけたの?」
 ランがきょとんとした顔でオードを見る。
「ああ、もう大丈夫だ」
「ふー……よかった、簡単に片付いて」
 アージュが起き上がり、息をつく。
「それはよかったんだけど、なんかあっけなかったね」
 少し残念そうにランが言うと、オードが魔物から剣を抜いた。
「派手に戦う必要などない。アージュ、自分の腕を過信するな。相手を見極める時間が少しでもあるなら、冷静に判断して、弱点を狙うことだ」
「悪かったわね、馬鹿みたいにすぐに斬りかかって」
 ツンとアージュが顔をそらす。
「でもさー、なんかオレ、オードには、もっとバッサバッサとやってほしかったんだよなー。ほら、昨夜のカードを切り刻んだみたいにさ」
「期待に添えなくてすまないが、私は曲芸師ではない」
 オードは剣を戻す。
「オード、なんかかわいくなーい」
「ねーっ」
 ランとアージュがぶーぶー言っていると、
「もう大丈夫みたいだね」
 坑道の奥からルージンが戻ってきた。安心して疲れが出たのだろう、見れば、ミーファは眠っている。
「さすがは騎士だ。冷静な観察力や判断力も強さのひとつだよ」
「わかってくれるか」
 ああ、とルージンが微笑み、うなずく。
「じゃあ、早く帰ろう。この子をお母さんの待っている家に送り届けないとね」
 
 
 ミーファを助け出したランたちは町へ帰り、騎士団本部で待っていた母親のもとに無事に送り届けた。
 その際、ルージンが「彼こそは騎士の中の騎士だ」とオードの活躍ぶりを語ってほめちぎったので、オードはますます騎士団の青年たちから一目置かれる――というよりは、「そんなにすごい人に気さくに話しかけられない」という方向性で崇められるような感じになってしまった。
 宿では、アルヒェが寝ずに待っていた。彼は一緒についていったアージュをとても心配していたので、元気に帰ってきた彼女を見て、ホッとした顔をした。
 アージュはちょっと顔を赤らめてからベッドに潜り込み、ランは昼の鉱山での仕事の疲れもあり、すぐに眠ってしまった。
 オードはアルヒェが取っておいてくれた夜食を食べると、ひとり外へ出た。
 月が出ている晩は身体を動かせるいい機会なのだ。ましてや、紫蘭月は他の月に比べて、日数が短い。だからなおさら、時間を大切にしたかった。
 オードは少し町の中を歩き、広場に出た。
 剣を抜き、月光の下にさらすと、剣先が紫色に反射した。
 
(白蘭月の白い丘に咲く白い蘭の朝露が手に入れば、本当にもとの身体に戻れるのだろうか)
 
 呪われた血を清めるという朝露。
しかし、それがいったいどこに行けば手に入るのか……。
西へ向かって旅していたアージュにも、わからないようであるし。
(来年の紫蘭月には、故国へ戻れればよいのだか……)
 そのとき、フィアルーシェ王女は他国へ嫁いでいるか、婿をとっているかもしれない。
(ルーシェさまがしあわせでいれば、私は……なにも)
 オードは剣を一閃した。
(なにも言うことはない? 本当にそうなのか?)
 そうではない。と心の中で叫ぶ。
 しかし、今の自分に王女を幸せにする資格は――ない。
 やりきれないものを抱え、オードは剣を振るった。
 剣の稽古することでしか、気を紛らわすことができなかったのだ。
 
 
 そして、また翌日。
 夜になるとオードとランとアージュは夜の見回りに出かけた。アージュは意地になっているのか、アルヒェの心配を押しのけて、ついてきたのだ。
 昨日、ミーファが行方不明になって魔物に襲われかけたばかりだし、さすがに今日は日が落ちる前に町の住民はみな家に入り、門戸を固く閉ざしている。
「なんか、静かだよね……」
 ランのつぶやきに、
「……そうだな。みな、家に入っているからな」
 とオードが周囲をザッと眺める。
 アージュはなにか考え込んでいるのか、なにも言わない。
 ランは、とほほな気分になった。
(オレが言ってるのは、三人一緒に歩いてるんだから、話をしたりしようよってことなんだけどな~~)
 せっかくオードが人間の姿になったのだ。もっとお互いのことを話したり、遊んだりしてみたい。たとえばオードと川に釣りに行ったり、眺めのいい場所に行って、おいしいお弁当を食べたり。
(でも、夜しか人間の姿になれないんじゃ、やっぱり難しいかな……)
 ランはチラリとオードとアージュを見た。
 このふたりは何日か前から、なんだか様子がおかしい。ケンカしているワケではないといっていたが……。
 ちょっと気まずい。
 ランは思いため息を吐いた。
 
 

(3巻・第三話-6 へ続く…)

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