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日記 2024-06-28
長い午睡を経て、お風呂へ。外は一日雨だったので、雨戸をしていて、外気に触れたのは、朝、最近取り始めた新聞を取りに行ったときだけだと思う。熱いお風呂に入っている間、少しだけ部屋の冷房の温度を下げておくと、出てきたときの至福が生まれる。小さな至福。小さな至福づくりができるようになると、生きるのがほんの少しだけ楽になる。好きなアーティストの新作のアルバムが解禁されていて、それを聴く。これも小さな至福だろ
もっとみる会話「あまいもの/しょっぱいもの」
ねえ、アイスクリームを食べませんか?
えっ。死ぬのはどうするんですか?
しょっぱいものを食べた後って、甘いものを食べたくなりませんか?
でも甘いものを食べたら、またしょっぱいものを食べたくなりませんか?
そしたらまたしょっぱいものを食べればいいんです。
そしたらまた。
甘いものを食べて。
そしたらまた。
しょっぱいものを食べる。
そんなにお腹いっぱいになったら眠くなりそうですね。
そしたら寝ればい
小学生はなぜ下校しながら走るのか
机を窓向きにしてから数日。すこぶる調子がいい。机に向かっている時間はもちろん、机に向かっていない時間まで調子が良くなってしまった。これまで夕方の時間を執筆時間にあてていることが多かったけれど、午前から、最低限の分量をこなして、そこから午睡をはさんで、また夕方から書いたり、みたいなことすらできるようになっていて、びっくりしている。机の向き一つでここまで習慣というものは変わるものなのか、と。
今
『日曜のキルケゴール』
よく晴れた日曜の春の午後、お隣にキルケゴールが引っ越してきた。私はそばを食べていた。冷たいそばだ。豚肉があったので、それをめんつゆで煮て、あったかい豚そばにして食べるつもりだったが、豚肉は腐っていた。だからただの冷たいそばにした。指定された時間よりも少し短めに茹で、ザルに上げ、きりっと水で〆る。わさびときざんだネギを用意して、濃いめんつゆで食べる。美味しい。そばは噛まずに飲むんだ、なんて言ってい
もっとみる散文「りんごを輪切りにして食べる」
器用じゃない。字もあまりうまくない。左利きだけどそうだ。というか、左利きだからそうだと思っている。左利きは器用だと言われることがあるけれど、それは「右手と左手、どちらもある程度使える」という意味での器用で「何かの物事を精巧に行える」という意味での器用ではない。
なので。
りんごの皮を剥くのがとても下手だ。びっくりするくらい下手だ。僕がりんごの皮を剥くと、りんごのマントルの部分しか残らない。コア
『ミネラルウォーター』
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さっきホームで買ったミネラルウォーターを半分ほど飲み干し、前の座席の方に何気なく目をやると、目の前に座っている人は泣いているように見えた。いや泣いているように見えた、なんてものではない。明らかに泣いていた。ぐしゃんぐしゃんに泣いていた。肩を上下させながら、鼻をずびずびさせながら、目からは大量の涙の粒がこぼれ落ちて、彼女の頬を濡らしていた。うつむいていたので、直接顔を見たわけでは
『バッハ的な会計をする人』
会社員だった当時、僕は著作権処理に関する仕事をやっていたが、その隣に座っていた大仁田さんという女性は、会計の仕事をやっていた。各部が持ってきた請求書をじっと見て、それからパチパチと、パソコン画面に表示された表のしかるべき部分にしかるべき数字を打ち込み、なにかしらの結果が数字として表示されていた。
大仁田さんはいつもイヤホンをしていた。イヤホンをしていたから、人と話すのが嫌いなのかというと、そ