小雨がんも

日曜。あっという間に夕方。曇天。ポツポツと小雨が降っている気配をベッドに横たわりながら感じる。夕飯の材料もないし、そういえば図書館の本も返却期限が明日に迫っている。服を着替え、自転車に乗る。

小雨は降っていた。しかも相合い傘をするカップルを見つけてしまう。あちゃちゃと思うが、気にしない。図書館で本を返し、また本を借りる。11冊。図書館の日に生まれたことが運命であると思うくらいには、図書館がずっと好き。小学校くらいから両思いなので、きっとあの相合い傘カップルよりも歴だけは長い。でも相合い傘はできない。

図書館の帰りにスーパーに寄る。バナナやらクロワッサンやら鶏肉やらを買いつつ、がんもを買った。がんも? がんもどき? 正式名称もわからなければ、実際、あれがなんなのかもよくわからない。豆腐の仲間であり、豆腐に野菜の端くれみたいなのをどこかのタイミングで混ぜ、揚げたっぽい固体。がんもも小さい頃から好きだったけれど、図書館と違って、高校くらいからずいぶんと疎遠になっていた。でもここ数年、たまに目についてはテキトウにお醤油とお酒とみりんと砂糖とで煮て、食べる。美味しい。結構びっくりするくらい美味しい。がんもは値引きシールが貼ってあって、129円だったと思う。冷蔵庫に今もあるけど確認はしない。確認・反省等は、しなくていいことも多々ある。

帰り道。相合い傘カップルはいない。自転車に乗った少年野球の男の子にすれ違った。小学生の頃の自分かと思った。

アパートに着き、自転車置き場に自転車を停めようとすると、停めた衝撃でスーパーの袋からポーンとがんもの袋が飛び出す。がんも自体は飛び出していないから特になんの問題もないけれど、僕はそれを見て、がんもが小雨にあたりたかったのかもしれないと思った。今夜にでも人間に食べられる。そんな運命を前に、最期にこの世界に飛び出して、曇天の空を己のまなこで見上げ、雨にあたりたいのかもしれないと思った。小雨を浴びたがんもはどこか誇らしげだった。

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