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The Aerial Assassin サンキューマタネウィルオスプレイ

金網の中でのごちゃごちゃ血まみれぐちゃぐちゃ試合をただ観た。
直接会ったこともないその選手のことを勝手に書きたい。
 
入団したころから観ていた訳じゃない。
会場に足を運んで生で観たことだって両手で数えるほどだ。
新日本プロレス在籍としての最後の試合も大阪だったけれど行かずに配信で観た。
 
いつの間にか気付けば目で追っていた。
むちゃくちゃだからだ。
なんでそんなに身体張るねん。
知人は見るたびに言っていた。
「やさしいなあ」
どんな選手のどんな技もやりすぎくらい受けまくるから、だから相手選手が「すごく」見える、ああ、プロレスだ。
 
でも、わたしは、それは「やさしさ」ではないと思っていた。

正確には、「やさしさだけではない」んちゃうかな、だ。
 
いや、全くないとは言わん。たぶん、とても、本当にやさしい。
 
でも、ただやさしいとかよりももう
「そうすることがあたりまえ」みたいな、
「そうすること」を疑いもせずに体が動いているというかそうするのが自分自身というか、
「そうしかできひん」「そうせんと生きてられん」みたいな、
せやからあんなに後先も考えずに人間離れした技や受けや試合運びをするのじゃないかと思っていた。見て、そう思っていただけだ。
 
おっさんじゃないけどおっさんなのにヤンチャBOYみたいな顔で、まだやる、そこまでやる、まだ倒れない、まだまたゾンビみたいに立ち上がって、
鬼みたいな顔で、張る、蹴る、飛ぶ、受ける、飛ぶ。
 
某選手が例えた言葉は「猫。強靭な猫」。
某番組が付けたキャッチコピー「青い目の忍者」はやはり気に入らない。
やっぱりこれだ、「エアリアル・アサシン(空中の暗殺者)」。
 
よく言えばストイック、
よく言わなければ自分のことしか考えていない考えられない(?)オタク、ガチでマジでほんまにプロレスオタクなんだろう。
いつからか自身の病気のことをはっきり公表もした。家族のこともだ。
退団と移籍は、家族のため、お金……とは言っていないしそれだけじゃないんだろうけれど、そこもにおわせていたように見えたし、バックステージで試合直後のテンションのままいろんな不満をぶつけたり激昂もしていた。故郷の言葉を早口でまくし立てて。無論その中にはスラングも含まれていた。
いつからか「新日はもっと給料を上げるべきやろ」がわたしの口癖になっていた。お前は身内か。
でも、こうしてキモい情を寄せるやつ以外にとっては、近しい人たちにとっては、いろいろ相当面倒臭いやつだったりもした・するのかもしれないとも思っていた。うんたぶん絶対面倒臭い。いろんな噂もきいたりした。
 
試合中、技の途中で、十字を切るような仕草をする姿が観ていて毎回胸に刺さった。
エグいような試合の「もう無理なんじゃないか」と思うようなシーンで、何度も、何度も。

あれが、あれは、祈りだ。
 
最後のサイン会にだって行っていない。
でも握手できるならしたかったかもしれない、出来た頃(コロナ前?)に、
って、その頃はそんなに目で追っていないが。
触れることでそのひとをすこし感じられるんじゃないかとか、言えないなりに何か伝えようとするひとつのかたちとして、
あくまでオーケーがされている場で、触れてみたかったかな、と思ったりもする。
いや、ただセクシーだから触りたいだけかもしれない。
 
2.11新日本プロレスでの最後の試合は、
金網の中皆で好きなことを好き勝手やっていた試合に見えた。
SNS上でも「最後がこれでいいの…?」「ちゃんとした試合を」みたいな意見が散見された。
そうだろう。わたしも最初はそう思った。めちゃくちゃやん、と。
いちいち口に出た。「新日に金網はいらん」「新日にそういうデスマッチはいらん」
先に言う。デスマッチは大好きだ。わたしの普段着は葛西純のTシャツだ。
でも。なんだよこれ。プロレスなんか。映画?  
主演オレ。仲間と力を合わせて悪を倒して(倒せなかったけど)お客さんに感謝を述べ大喝采の中を仲間と愛する人と去っていく。END。Fin。
2時間の超大作映画? 何かのゲーム?
違う。これも、いや、これは、プロレスなんだろう。
「ちゃんとした」ってなんだ。「新日とは」「プロレスとはこうあるべき」ってなんだ。
それはお前の理想化と押しつけでしかないんじゃないか。 傲慢なんじゃないか?
「これは、これが、このひとが望んだ最後の試合の形なんだろう」
「それをすることを会社がオッケーを出したのだろう」
めちゃくちゃだ。自己満足に近いかもしれない。お腹いっぱい。いい表情(かお)してた。ぼろぼろの最高にいい表情(かお)で感謝を述べる姿と熱狂興奮の客席からの「サンキューオスプレイ」の大合唱はまだ耳を離れない。
1.4の入場もだ。アサシンクリードのコスプレで登場した。しょうもな。かっこえ。その日の客席には愛する妻と家族を呼んだと後に知った。めっちゃええ。
 
そうしてもう休むことなくもう次に居る。
進んでる働いている生きている愛し合ってる。
ただひとつ言いたい言わせてくれ。
身体大事に家族大事に。
サンキューマタネウィルオスプレイ!



*
去年書いた連載Homeのプロレスネタ。
後楽園ホーーール!(笑)


WebマガジンTabistoryもぼちぼちまた再開とのことです(編集長より)
送ったまんまの立ち呑み酒場話原稿、
かなり前の話なんやけど、記念すべき(?)20回目、
ちょっとええ話(え?)です。ぼちぼちとお待ちくださいな。


◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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Webマガジン「Stay Salty」Vol.33巻頭に自己紹介エッセイを寄稿しました。

12月Vol.34からは不定期コラムコーナー「DAYS」も書かせていただいています。

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読書にまつわるエッセイ集(ZINE)、
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旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
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noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。


旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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