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詩『つぼみを産む』#創作大賞2024

つぼみ、
しずかに肥えろ、蕾、

あらゆる経験を養分として、打ち上げ花火のように、咲き誇れ、 

はな、
色とりどりの、季節の花よ、

     太陽の旋律に誘われて、葉が揺れている。朝露を弾いて、輝くみどり。つぼみが美しくひらかれるその時まで、祈るように眠っているいのち。少しずつゆめを蓄えて、膨らんでゆく植物のこどもたち。乳白色の雨やひかりを浴びて、横顔が逞しくなる。だんだんとあたたかくなってゆく晩春に、きみは蕾を宿した。ちいさな、ちいさな、たくらみ。しずかな、しずかな、ささやき。ゆたかな、ゆたかな、ほほえみ。優しく娘の頭を撫でるように、喋らない植物を擦る。柔らかい産毛がちくちく、と肌を刺す。甘酸っぱい痛みをやんわり記憶する。乳房のようなふくらみを結んで、たおやかに太陽の走りを追いかける。すう、光の粒を吸う。すう、舌の上で転がす。朝も、昼も、夜も、揺れて、揺れている、呼吸。手を振って、指先のウェーブ。ゆっくりと瞳を瞬きするように、芳しい開花したはなびらが反射している。

さあ、開いて、
ひらいて御覧よ、大輪の花を、
 
生命の炎を激しく滾らせなさい、

夏に背伸びせよ、向日葵、
太陽を凝縮した花よ、

     太陽を追いかけて
     太陽と共に廻る
     太陽と共に踊る
     太陽と共に時を刻む

     沿って
     沿って
     沿って
     
           歩んで
           歩んで
           歩んで

      ちょっとずつ草臥れて
      ちょっとずつ枯れ果て
      ちょっとずつ草臥れて

やがて朽ちて
   朽ちて 
   朽ちてゆく
 
         (大地に還れ!)

   太陽はいつか沈む

   そしてまた新しい太陽が昇る

きょうはなにいろのはながさく、なにいろのはながかれる、なにいろのつぼみがうまれる、だれもしらないだれもしらないだれもしらない、いのちはうわがきされる、きおくもうわがきされる、きろくはやぶられるためにある、いのちのちぶさをすって、いのちがつぎのいのちをはぐくみつづける、くりかえし、くりかえし、うまれてしんで、しんでうまれて、はなのいのちはみじかい、いのちはめぐる、きおくはめぐる、じかんもめぐる、きょうもあしたもあさっても、はながさいてはかれてゆく、ろうそくのほのおもいつかきえる、いのちもいつかはきえる、それでも、それでも、いきてゆくつぼみをみつめる、蕾


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、Strolling Rickyさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門

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