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俺にとって女は全て「将棋の駒」である。犯罪級のクズ男に恋をして

※こちらの記事は、 【コンテスト】あなたが出会った「クズ男」のエピソードを募集します! に応募しています。

あれは、私が32歳の頃。今から8年ほど前だろうか。

周囲の友達は次から次へとハイスペック男子をゲットしては成婚していった中、私はなかなかピンとくる男性に巡り合えず悶々としていた。

そんなある日、合コンで端正な顔立ちのイケメン男性と遭遇する。

目鼻立ちはハッキリしており、ルックスは俳優の西嶋秀俊、声は谷原章介にとても良く似ていた。

目力が強く、オーラもそんじょそこらの一般人男性とは違うといった感じで、最初は思わず芸能人かモデルなのではないかと思ったほどのイケメンであった。

スペックは某大手企業のサラリーマンで、月収は手取り40万以上。フットサルチームに所属するスポーツマンで、体は細身マッチョといったところ。条件もルックスも申し分ない。まさに、パーフェクトヒューマンといったところだろうか。

当時イケメンが大好きだった私は、一目見るなりすぐに心を奪われた。

彼はずっとコソコソと携帯を弄っていたり、時々席を立っては誰かと電話をしていたが、合コンに参加した女性達はそんなことおかまいなし。みんな他の男性には目もくれず、彼に対して「めっちゃイケメン!イケメン!」と連呼。

無理もない。イケメンのレベルがあまりにも高過ぎて、とてもじゃないけどこんな地方の居酒屋にいるのは違和感しかないとさえ思えた。

彼は合コン中、終始大人しかった。余計なことは一切話そうとせず、恥ずかしそうに俯いていた。合コンが終わると、最後に全員の連絡先を交換。

さて、このイケメン男の恐怖の真実がわかるのは……まさにここからである……。

合コンの数日後、イケメンから「木曜日の夜、ご飯食べに行かない?」と唐突なメッセージが届く。普通なら、合コン終わったら「今晩はありがとうございました」とか一連のやり取りがあって、それからご飯のお誘いだよね?なんでこんなに唐突な訳?あと、なんでまた木曜日限定?

とにかく、誘い方に無駄が一切無いのである。そして強引かつ自己都合も甚だしい。普通、女性を誘う時は相手の都合聞くよね?それとも、イケメンは無駄なことはしないのだろうか。

たまたま木曜日の夜暇だった私は、あんなイケメンとご飯を食べに行けるならと意気揚々で「大丈夫です」と返事をした。まさか、これが悲劇を呼ぶとは梅雨知らず……。

デート当日。仕事帰り、彼の職場最寄りの駅へとそわそわしながら向かう。彼は大きな車で颯爽と登場し、「ごめん、遅くなっちゃったね?待った?」とキラキラした瞳と笑顔で私に声をかけた。

彼は運転席からわざわざ降りて反対側のドアまで向かい、助手席のドアを開けてくれた。妙に手慣れた動きだったが、ドラマのワンシーンのように美しかったので違和感なし。

スーツ姿の彼は、まるでテレビから出てきた俳優のように格好よかった。あまりのカッコ良さに、思わず溜息が出てしまった私は、本当は少し待っていた癖に「い、い、今きた所!」と答えてしまった。

彼はニコッと笑って「車、乗って!」と爽やかに対応。世の中にこんなに美しくて紳士すぎる男が独身?絶対、絶対裏に何かあるはずだとは思いつつも、彼のイケメンオーラに逆らうことができず「は、はい……」と助手席に乗った。

彼が連れていってくれた店は、オシャレな雰囲気のレストランバー。

「わぁ、なんでオシャレなお店なんだろう!私の地元の男たちなんて、ほとんど居酒屋ばっかり!」と言うと「ははは、ここのお店は本当に美味しいよ。きっとみくちゃんも気に入ってくれると思うよ」と、これまた爽やかな笑顔の彼。店のチョイスから、対応の仕方まで全てここまで完璧である。

店員に誘導されて入った部屋は、席が横並びの個室。オシャレな部屋ではあるが、なんとなく嫌な予感がした。

彼は私の隣に座るなり「いやー、みくちゃんをはじめて見たとき本当に可愛いと思ったよー。ずっと話したいと思ってたんだー!いやー、本当に可愛いねー!あと、加藤夏希に似てるよね!僕大好きなんだ、加藤夏希!!」と、やたら饒舌。(実際問題、私と女優の加藤夏希は似てないです)

合コン時は、あんなに大人しかったのに。まるであの時とは別人のようだった。

私は、ふと思わず彼に対して疑問に思っていたことを伝えた。

「あのう、檜山さん(仮名)は本当に彼女いないんですか?というか、本当に独身ですか?こんなハンサムで気遣いもできるなら、誰も放っておかないと思うんです」

すると彼は「あー」と言いながら苦笑いし、こう答えた。

「俺、特定の彼女は作らない主義なんだよね。昔結婚してたけど、離婚したからバツイチ。もう結婚は懲り懲り。

俺には、駒達が沢山いるから大丈夫」

ん?駒?駒達って何?

衝撃のセリフが続きすぎて、頭に内容が入ってこない。とりあえず「駒って何ですか?」と聞いてみることにした。

「ん?ああ。駒っていうのは、ほら将棋の駒のこと。

ほら、将棋の駒に歩兵って沢山あるでしょう?歩兵って、代わりが沢山あるじゃない?一個倒れても、次の歩兵が必ずやって来る。

俺にもね、愛人という名の駒達が一杯いる訳よ」

ん?将棋の駒が女の例えってこと?

そういや昔、テレビで叶姉妹がグッドルッキングのメンズ達と人間チェスをしてるって話をしていたっけ。

ふとそんな叶姉妹の変態的な話を思い出す私。となると、彼も叶姉妹みたいに愛人達と人間将棋をやっているということ?ん?どういうこと?

話がぶっ飛びすぎて、理解に苦しむんですけど?

とりあえず話がいまいちわからないので、少し話を戻して「なんで特定の彼女作らないんですか?」と尋ねてみることにした。すると、彼から思いもよらない台詞を聞くことになったのである。

「んー。僕が女性を抱き続けるのは、元はといえば復讐のためでもあるんだ」

「は?復讐?復讐って、何の?誰に対してです??」

「いや、実は俺。昔すごい大失恋をしてね。あの頃のショックが忘れられなくてさ……。

ショックな気持ちを埋めるために、俺はいろんな女性を抱くことで心の傷を埋めて、

そして俺を傷つけた女性へ復讐をすることに決めたんだ!」

悲劇のヒーローのように涙目で語る彼、最低なことを言ってるが、皮肉なことに顔面偏差値高過ぎてドラマのワンシーン状態。これがブサメンなら「何言ってんだこいつ」で終わるのに、イケメンとは罪な生き物である。

「大変だったんですね……」と伝えると「ありがとう」と涙目でウルウルと私の目をじっと見つめる彼。大きくて綺麗な瞳は、まさに吸い込まれそうなほど美しかった。

ふと目を反らすと、頬にチュッとキスをするイケメン。ビックリして彼の顔を見ると「実は、合コンの時からずっとキスしたいと思っていたんだ」と。

その後、このスケコマシ野郎は

「僕の駒の一員にならないか?」

と真っ直ぐな目で誘ってきた。

駒の一員になるということは、つまり結婚はますます遠ざかるということである。

この人は1人の女性を大切にすることはできず、あくまで自分が大切。自分の傷つかない恋愛しかできないのだ。どんなイケメンで好条件の人でも、そんな人と時間を消費している暇は私になかった。

「ごめんなさい。うーん、駒はちょっとなれない」

「そっか。ごめんね。こんな話しちゃって。いいなと思ってたから、仲良くなれたらと思ったんだけど。みくちゃんにも、素敵な人が現れるといいね」と、イケメンは爽やかな笑顔でニコッと笑った。

エグい取引をしているにも関わらず、最初から最後まで彼は爽やかな対応で嫌な印象は一切なかった。

その後、彼にメールしても一切返事が来ることがなかった。駒になってもらえないから、見切ったのであろうと思われる。

さてさて。地獄の話はここで終わりではない。実は、彼と同じ職場の男性からとんでもない話を聞かされるのである。

「えっ?檜山とデートしたの?あいつ、まじでヤバいよ!絶対関わらない方がいい。

あいつ、独身じゃないよ。嫁も子供もいる。職場の人はほぼ愛人でみな穴兄弟。

職場に限らず、セックス依存症で出会い系サイトにも手を出してるし。

でも、あのイケメンでしょう?だから、出会い系で女の子釣っても『あっ、お金いいです!払わせてください!』って女性からお金払いたくなるみたい。

1度女の子らと3 pしてた時に、俺に電話かかってきてお前も来いって言われ、本気でお前何やってんだって叱ったわ!

正直、出会い系で女の子釣るとか犯罪だろって思うけどさ、イケメンはそれでも許されるんだよ。とりあえず、関わらん方がいいわ」

衝撃の事実のオンパレードに、頭が真っ白になった私。それでも、彼と一緒にご飯を食べたあの日は夢の世界のようであったのは間違いない。

世の中には、エグい話をしても、ヤバいことやってても許されてしまう男性がいる。

イケメンのハイスペック男性は、緩い目で女性に見られるのも事実。ただ、それにしても彼は酷すぎるが。でも、あの日デートしたことは不思議といい思い出にもなっている。

確かに酷い男ではあるが、彼は「僕は学校であり、僕を通じて女性達が幸せになってくれたらそれでいいんだ」と遠い目で話していた。

彼は人を本気で愛せない性格なのかもしれないが、彼なりに女性達を愛しているし、幸せになってもらいたいという思いがあったのではないか。

もし一夫多妻制の国なら、彼はもうちょっと幸せに暮らせていたのかもしれない。そして、そんな彼を完全に「悪い奴」と言いきれない私は、やっぱりダメンズ好きのクズ男製造機なのかもしれない。

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