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初展示、全貌公開。

Title: "Destroy, against me"


クリエーションの分解展 / Decomposition of creation

Miku Kawai

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1. クリエーションの動機


祖父は、私が18歳の時に亡くなった。大学一年生の時だった。それまで感じたことのない、外の世界のよどみ、重圧と、人間の脆さを感じた。言葉でわかったんじゃない。世の中は、人が一人絶えても、見向きもせず、何も知らずに廻り続けていた。その孤独、虚しさ、をどうにか、せめて、自分の記憶と心に刻みつけたいと思った。この気持ちを、感情を、私の内側で静かに起きた現象を、死ぬまで、忘れてはならないと思った。人と比べ、周りの力から空白として認識していた自分は、自分の生に対して責任を持っていなかった。透明だった。祖父に対して情けないと思った。自分に責任を、血をもって、その透明な存在を乗り越えたいと心にいだいた。生きたい。生きようと、目をかっぴらき、もがいた。その軌跡は、私にとって、血のように見えた。人々はそれぞれの内側で生き、よどんだ顔をしていた。絵の具で色を足していくと、最後には黒くなる。その滲みを、人々と世界と重ね合わせ、どこか理解できた。


2. 制作過程における紆余曲折


2020年は複雑に入り組んだ。大学を辞めたあと、コロナウイルスで仕事や生活が不安定になり、心が押しつぶされ、失せてしまった。環境の変化に心体が蝕まれた。朝に心が失せ、何もできない。考えられない。ただ落ち込む。お金もない、何もしないことが怖い。自分の焦りだけがつもり、すでに押しつぶされていた。それが1年続いた。四国に一人で旅に出た。何かを求めていた。なんでもよかった。ただ、溺れていた自分自身の冷たい水の中から出て、大地の新鮮な空気を吸いたかった。なんでも良い、自分の海のなかから出られる、その、何かを求めていた。このときから、写真を撮り始めた。それでも手が止まった。先生に、なんでも良いから。点でも良いから、毎日何か続けてみな。といわれた。その言葉にすがり、毎日、こんなもんしかできないのかと自分を責めながら、続けていった。そのおかげで、最後の2ヶ月は、手が、心が。思うように動き始めてくれた。


3. それから


「もや」が、私の頭と心と、からだ、手足を侵略した。からまり、内側に押しつぶされて、鉛のように固まってしまった。その鉛を少しずつ、打ち壊していくように、怒りを布にぶつけた。メンズのジャケットに鋏を入れ、刻んでゆく。無言で切り、ミシンでまた縫い合わせる。サラリーマンのシャツを5体。外側から自分を認識していること。怒りやくるしみ、無。流れのある感情にのせて鋏を入れ、色を抜き、再び縫い合わせていった。人々の目、自分の目、強い目を描き続けた。書き殴っていった。乗り越えたいのだと思う。女であること、人であること。くるしい。だけど、つくる。創りつづける。

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