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沖縄生まれで今は岐阜にいます。海と山が好き。下書きの寄せ集め。古本屋「庭文庫」やってま…

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沖縄生まれで今は岐阜にいます。海と山が好き。下書きの寄せ集め。古本屋「庭文庫」やってます→http://niwabunko.com/

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  • 庭文庫のこと、書いてくれてありがとう

    庭文庫に来てくれた方が、書いてくれたnoteをまとめてみました。書いてくれて、本当にありがとう。

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固定された記事

イラスト交換みたいに、これまで読んだ本の話をする

この前、小学二年生の子と好きな絵本の話をした。彼女の好きな絵本を教えてもらい、わたしの好きな絵本を伝えた。彼女はわたしの好きな絵本を読んでくれて、「面白かったよ…

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4年前
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開ける窓

 朝、ものすごく明るい光が寝室に差し込んでいた。ベージュを買ったつもりのカーテンはほとんど白に近くて、白い光で部屋が満ちていた。娘に「起きてよ!」と促される。昨…

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1か月前
16

引っ越し、さみしい

 実家を出てから、ほぼ2年単位で家を変えてきた。どの家もそれぞれ好きなところもあれば、嫌いなところもあって、引っ越しはいつも旅みたいで楽しかった。ついこのあいだ…

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1か月前
9

なんか今日たのしかった

朝、わりかし気分悪めで起床。体調というより、気分の問題。 食材がないので娘とバローへ行く。普段は平日に行くことが多いから、日曜日の午前に来たのは久しぶりだ。なん…

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1か月前
17

エイサー

6年生のころ、学年でモテる男トップ3にはいるYくんが同じクラスだった。彼は勉強はからきしで、走るのも特に速いわけではなかった。大きな黒い瞳と、すこし天然パーマのか…

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1か月前
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毎晩毎晩倒れそうだ

 夜になるたびに「倒れそうだ」とおもう。布団に寝転がってもおもう。体力がないせいかとおもっていた。恵那に来て8年。ほとんど車。30代も半ばに近づいた。体力が落ちた…

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2か月前
9

岐阜駅本の市 ふりかえり&反省

3/2〜3/3 岐阜駅アクティブGにて開催された岐阜駅本の市のふりかえりを、忘れないうちに。 (経費、売上部分だけ有料にしています…) ▼イベント公式インスタ https://ww

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4か月前
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自営5年目にしてようやく定まってきたこと

 組織を離れて、ももちゃんとふたりで店をやるようになって、1番困ったことは、時間の使い方だった。会社や市役所の中にいるときは、就業時間中に、やれる範囲でやれば良…

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6か月前
10

あたらしい今日

 今ではなく「いつか」へ、ここではない「どこか」へ、行きたいと、わたしは幼いころから、ずっとおもっているのかもしれない。それが沖縄でも、大阪でも、東京でも、恵那…

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6か月前
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産後が終わった、そして日々はつづく

 娘が2歳半になった。手が汚れれば自分で手を洗えるようになり、人形を寝かしつけ、猫とねこじゃらしで遊び、アンパンマンのキャラクターを愛す。一歳のときより野菜をあ…

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6か月前
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 1日が24時間しかないこと、一生が長くても100年しかないことを受け入れられない。身体の有限性は、もう随分前からわかっている。ここにしかいない。頭の中では遠くへも行けることも。

 この体のまま2000年生きたい。それが無理なことが無理。前世も来世も信じない。

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6か月前
1

ビックラブを胸に

 庭文庫になる、古民家と出会ったとき、なんて美しい場所にある、なんて素敵な建物だろうと胸が高鳴った。坂を登って、途中にある大きなカヤの木を見て、山があって、きら…

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7か月前
16

なにを諦めてきたか

 30歳を過ぎ、誰かが何を掴んできたかよりも、何を諦めてきたのか、それがその人の人生を決めるんじゃないかとおもうようになった。  別に、決まりはしない。人生の、決…

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7か月前
9

ムーンビーチの朝

 娘はいつも通り7時前に起きた。窓から静かな青色が見える。朝日を見るつもりだったのに、寝過ごしたことを残念におもうが、ここは西海岸、そもそも朝日は見られなかった…

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8か月前
10

海のそばのホテル

 リゾートホテルだけがもつ、夜のこわさがある。清潔な真っ白なリネンの上で、ひとあし先に娘は寝息を立てている。窓を開けているから、外からはザザーザザーと波の音が4…

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8か月前
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飛行機

 飛行機が好きだ。というか、飛行機から見える景色が好きだ。いつもいちいち感動してしまう。庶民でも飛行機に乗れる現代万歳!と叫びたくなる。だから絶対に席は窓際だ。…

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8か月前
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イラスト交換みたいに、これまで読んだ本の話をする

イラスト交換みたいに、これまで読んだ本の話をする

この前、小学二年生の子と好きな絵本の話をした。彼女の好きな絵本を教えてもらい、わたしの好きな絵本を伝えた。彼女はわたしの好きな絵本を読んでくれて、「面白かったよ」と言ってくれた。それが、とてつもなく嬉しかった。

小学生の頃、絵が好きな者同士でイラスト交換をして異様に楽しかった、そんな思い出がむくむく盛り上がった。編み物が流行ったときは、お互いに編んだものを差し出しあい、将棋が流行れば、毎日盤面を

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開ける窓

開ける窓

 朝、ものすごく明るい光が寝室に差し込んでいた。ベージュを買ったつもりのカーテンはほとんど白に近くて、白い光で部屋が満ちていた。娘に「起きてよ!」と促される。昨日遅い時間までたくさん泣いたから、あんまりうまく起きれない。多分娘はそれを察してくれて、一緒に横になってこちらを見ている。茶色の瞳がものすごく綺麗。こちょこちょしつつすこし話しているうちに、すこし元気が出て起き上がる。家中の窓を開けて壁につ

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引っ越し、さみしい

引っ越し、さみしい

 実家を出てから、ほぼ2年単位で家を変えてきた。どの家もそれぞれ好きなところもあれば、嫌いなところもあって、引っ越しはいつも旅みたいで楽しかった。ついこのあいだまで住んでた家は、はじめて5年住んだ家だった。庭文庫のある、笠置町内で賃貸の空き家が出るのをずっと待って、3年かかって見つけた家。猫を飼い、お隣さんと話し、娘が産まれて、大きくなった家。駐車場と家が遠くて、玄関まで人ひとりようやく通れるほど

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なんか今日たのしかった

なんか今日たのしかった

朝、わりかし気分悪めで起床。体調というより、気分の問題。

食材がないので娘とバローへ行く。普段は平日に行くことが多いから、日曜日の午前に来たのは久しぶりだ。なんか殺伐としている。店員さんもいそがしそうだ。どっと疲れつつ、帰ってきゅうりとハムをたんまりのせた冷やしラーメンを食べて庭文庫へ向かう。

自然の哲学お話会あったが、大体わたしは最初と最後しかイベントに参加できない。娘とず〜っと遊んでいた。

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エイサー

エイサー

6年生のころ、学年でモテる男トップ3にはいるYくんが同じクラスだった。彼は勉強はからきしで、走るのも特に速いわけではなかった。大きな黒い瞳と、すこし天然パーマのかかった髪、おもしろい話をするわけじゃないが、話すといつも笑いがおこる。活発なチームにいるのに、声が大きいわけではない。背は低いがミステリアスな雰囲気があった。

授業はいつも不真面目で、ふざけていた。先生に隠れてカセットテープを持ち込んだ

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毎晩毎晩倒れそうだ

毎晩毎晩倒れそうだ

 夜になるたびに「倒れそうだ」とおもう。布団に寝転がってもおもう。体力がないせいかとおもっていた。恵那に来て8年。ほとんど車。30代も半ばに近づいた。体力が落ちたのだと、おもっていた。

 しかしこの春、やってみれば10km2時間の歩きは結構余裕で歩けて、京都で自転車20kmの書店巡りも全然大丈夫だった。筋肉痛にもさほもならず、心地よい疲れがあった。もちろん、めちゃくちゃ寝はした。わたしにないのは

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岐阜駅本の市 ふりかえり&反省

岐阜駅本の市 ふりかえり&反省

3/2〜3/3 岐阜駅アクティブGにて開催された岐阜駅本の市のふりかえりを、忘れないうちに。
(経費、売上部分だけ有料にしています…)

▼イベント公式インスタ
https://www.instagram.com/gifu.honnoichi?igsh=Y3FwMnZlejNlcmxk

わたしたちは、3階で開催の小さな〝文学フリマ〟のような企画「Independent Publishing Ma

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自営5年目にしてようやく定まってきたこと

 組織を離れて、ももちゃんとふたりで店をやるようになって、1番困ったことは、時間の使い方だった。会社や市役所の中にいるときは、就業時間中に、やれる範囲でやれば良かった。おわらないものは、同僚や先輩にヘルプを出し、先送りにしてもいいものは時間のある時にやる。それだけでよかった。

 自分でやると決めてから、やることの膨大さにくらくらした。目先のお金、予定も大事。ただそれだけじゃなくて、来年、再来年、

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あたらしい今日

あたらしい今日

 今ではなく「いつか」へ、ここではない「どこか」へ、行きたいと、わたしは幼いころから、ずっとおもっているのかもしれない。それが沖縄でも、大阪でも、東京でも、恵那でも。

 朝ドラあまちゃんの中で、「どこへ行ってもおなじよ!」と春子さんが言う。そうか〜???とおもっていたが、そうなのかもしれない。

 今、と、ここ、がこわい。寄る辺のない宇宙みたいに広くて、掴む先がなにもなくて。

 ながらくわたし

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産後が終わった、そして日々はつづく

産後が終わった、そして日々はつづく

 娘が2歳半になった。手が汚れれば自分で手を洗えるようになり、人形を寝かしつけ、猫とねこじゃらしで遊び、アンパンマンのキャラクターを愛す。一歳のときより野菜をあまり食べなくなり、走るのがぐんとはやくなった。

 毎日、驚くくらいに新鮮に、かわいい。毎朝、毎晩、なんてかわいい子がわが家にいるんだ、といちいち感動してしまう。その感動と、当たり前に並行に新たな悩みや課題は常に出てくる。

 娘が2歳半を

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 1日が24時間しかないこと、一生が長くても100年しかないことを受け入れられない。身体の有限性は、もう随分前からわかっている。ここにしかいない。頭の中では遠くへも行けることも。

 この体のまま2000年生きたい。それが無理なことが無理。前世も来世も信じない。

ビックラブを胸に

ビックラブを胸に

 庭文庫になる、古民家と出会ったとき、なんて美しい場所にある、なんて素敵な建物だろうと胸が高鳴った。坂を登って、途中にある大きなカヤの木を見て、山があって、きらめく木曽川があって、そうして茶色のあの、建物がある。どうしてもここで、古本屋をやりたいと、物件を借りられるまでに1年かかった。そうしてオープン前、徹夜で庭文庫に泊まり込み、本の値段をつけたり、もらった箪笥の引き出しを出して本棚にしたり、縁側

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なにを諦めてきたか

なにを諦めてきたか

 30歳を過ぎ、誰かが何を掴んできたかよりも、何を諦めてきたのか、それがその人の人生を決めるんじゃないかとおもうようになった。

 別に、決まりはしない。人生の、決定打などどこにもない。毎日があるだけで、その毎日の中で、誰かがなにかを諦めている。

 王様になりたかった。大富豪にも、イローンマスクにも、鈴木敏夫にも、茨木のり子にも、大江健三郎にも、古井由吉にも。

 どれにもなれないまま、頭が痛過

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ムーンビーチの朝

ムーンビーチの朝

 娘はいつも通り7時前に起きた。窓から静かな青色が見える。朝日を見るつもりだったのに、寝過ごしたことを残念におもうが、ここは西海岸、そもそも朝日は見られなかったのだと気がついたのは浜に降りて、後ろのホテルの方から太陽の光が射しているのを見たからだった。「海へ行こう!」と娘が言うから、ももちゃんを起こして3人で砂浜を歩く。どの時間帯とも違う海。わたしは朝の海が好きだ。

 娘は海に入りたがっていたが

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海のそばのホテル

海のそばのホテル

 リゾートホテルだけがもつ、夜のこわさがある。清潔な真っ白なリネンの上で、ひとあし先に娘は寝息を立てている。窓を開けているから、外からはザザーザザーと波の音が4階のこの部屋まで届く。ももちゃんは煙草を吸いに外へ出ている。枕元のスイッチで部屋の電気を消して、娘の隣にもぐりこむ。天井が高い。同じこのホテルの中で、セックスをしたり、お酒を飲んだり、尽きない話をしたり、もう寝たりしている人たち、夜勤をして

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飛行機

飛行機

 飛行機が好きだ。というか、飛行機から見える景色が好きだ。いつもいちいち感動してしまう。庶民でも飛行機に乗れる現代万歳!と叫びたくなる。だから絶対に席は窓際だ。窓の見えない飛行機はただの大きなつまらない乗り物でしかない。

 飛行機から見える世界と、わたしの想像する死後の世界の姿は随分似ている。上空は上に行けば行くほど濃くなる青で、下には先の見えない白いふわふわの物体。毛布のようであり、砂のようで

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