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短編小説・読切小説集

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自作の一回読切の小説や、数回で完結する短編小説を集めています。基本的にハッピーエンドな青春時代を描いています。
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#後輩

短編小説「バレンタインデー」前編

短編小説「バレンタインデー」前編

序章「お母さーん、友チョコ作りが間に合わないから手伝ってよー」

今年高校受験を控えているというのに、ウチの一人娘、伊藤真美は受験勉強より、バレンタインのチョコ作りに熱心だ。

「もう、どこが間に合わないの?」

「全然お湯の中で溶けてくれないんだもん!」

「そりゃそうよ、こんなでっかい塊をそのままお湯に浸けてても、すぐ溶けるわけないよ。もっと細かく切り刻まないと…。一回外へ出して、包丁で細かく

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短編小説「バレンタインデー」中編

短編小説「バレンタインデー」中編

前編はコチラ ↓

3「夏休み合宿」咲江の大学の軽音楽部では、夏休みの8月上旬に、大学のセミナーハウスを借りて、3泊4日の合宿を行うことになっている。
基本的には昼間は各バンドで練習して、夜は各バンドの発表会になっている。

大学のセミナーハウスと言っても、箱根にある結構立派な宿舎で、ほかの音楽系サークルも利用できるよう、防音の広いスタジオルームも完備されている他、箱根の観光名所を割引で利用出来る

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【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第9回)

【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第9回)

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25俺が風邪をこじらせたせいで、妹と2人暮らしを始めて初の年末年始を、両親とは別に過ごすこととなってしまった。

「悪かったね、由美。俺のせいで金沢に行けなくなって」

「ううん、金沢に行くより、お兄ちゃんの体調の方が大事だもん。金沢なんて、横浜より寒いでしょ、きっと。アタシもお兄ちゃんも元気で、そんなに忙しくない時に、一度金沢に行ってみようよ」

「そうだね。父さんたちは新幹

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【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第10回)

【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第10回)

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28平成2年、2月。
俺はバレンタインデーに軽音楽サークルの後輩、サキちゃんからチョコをもらう約束をし、つい浮かれていたことで、妹の由美からドン引きの不審な目で見られてしまい、若干兄と妹としての関係がグラついてしまった。

それ以来、俺は徹頭徹尾アパートでは無表情、無感情を貫くようにしていた。

これまで高校のバレー部時代、1つ年上の女子の先輩と付き合ったことはあるが、学年違い

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【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第11回)

【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第11回)

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31「お帰りなさい」

由美は戸惑った。明らかに若い女性の声だったからだ。正樹なら、おかえり~としか言わないのに。誰?

「由美、今朝は悪かったな。置き去りにして…。こちらは、俺の大学の軽音楽サークルの後輩、石橋咲江さん」

「由美さん、はじめまして」

由美は玄関で固まっていたが、とりあえず挨拶した。

「どっ、どうも…。由美です」

「由美がビックリするのも仕方ないよな。兄

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