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特集エッセイ

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就職氷河期世代に向けた、エッセイを発信します。
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カナちゃんと小さい窓

カナちゃんと小さい窓

文・ハネサエ.(OTONAMIE)

ひきこもり支援センターへの取材に同行させてもらったとき、担当職員の方が「ひきこもりと聞くと内向的で人と話すのが苦手な人、と思われがちなんですがそんなことはちっともなくて、」と話してくれた。さらに、ひきこもり状態にある人の中には不登校から始まる人も多く云々、と話は続いた。
不登校と聞くと少しだけ身近に感じるのは、私がかつて不登校児の家庭教師をしていたせいかもしれ

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痣があろうと

痣があろうと

文・ハネサエ(OTONAMIE)

短大に通っていたころ、ある講師がことあるごとに「氷河期だからって」と言っていた。

「私たちが就職活動をしていた頃はね、もっっっとすごかったんだからね。氷河期どころじゃなかった。大っ氷河期。氷河期だからって就職できないなんて甘えたこと言わないことね」

その講師は私たちより20歳ほど年上で、よく授業そっちのけで自分の就職体験を語っていた。

「私が就職したのは学

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「重ねて、ご縁と呼ぶにはあまりにも」

「重ねて、ご縁と呼ぶにはあまりにも」

文・ハネサエ(OTONAMIE)

前回の記事に書いた、就職氷河期だった2003年の私の就職活動のあれこれ。今回はその後についてです。

新卒で就職したのは小さな出版社だった。
内定が決まった後に行われた面談の席には、出版部と営業部の部長、それに人事の男性がいた。
入社面接のときと同じように元気にはきはきと質問に答えていたら、当時の出版部の部長が「優秀やな」と呟いた。
私は物心ついたころからうんざ

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「ご縁と呼ぶにはあまりにも」

「ご縁と呼ぶにはあまりにも」

文・ハネサエ(OTONAMIE)

もしかして、私は途方もないことをしているのでは、そんなことを思ったのは短大2年生の夏頃だった。
2003年。時はまさに、就職氷河期と呼ばれる時代だった。

出しても出しても通らないエントリーシート、運よく通った書類審査も面接で振り落とされる。大口採用をしているという企業ならどうにか紛れ込めるんではないか、という甘い期待を頼りにかたっぱしから受けて、かたっぱしから

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分からないことがたくさんあって

文・ハネサエ(OTONAMIE)

もうすぐ子育て10年生で、ライター7年生になる。
長さだけで言えば、子育ては義務教育の過程を卒業したことになるし、ライター業は細々ながらも小学校を卒業したことになる。
なのになんてことだろう、いまだにいろんなことが分からない。
悲しいくらい、なにひとつ分かったような気になれない。
先へ先へ進むほど、いろんなことが分からなくなってどんどん自信を無くしていく。それな

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手を取ることは難しい

手を取ることは難しい

文・ハネサエ(OTONAMIE)

人よりできることがうんと少ないのに、私にとって、誰かの助けを借りることはとっても難しい。そう気がついたのは3人目の子を産んで、1年と少しが経った頃だった。

心身の疲労が限界に達したのだろう。なにをするにも時間がかかるようになってしまい、ある日とうとう布団から出られなくなった。
食事を作るどころか食べることさえできなくなって、子どもたちの世話もままならなかった。

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