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詩: 打ち上げ (+アナグラム歌会【みえる式部 部門】【ぼーろ中将 部門】総評)


深夜に帰宅した夫と
FOBSのケーキをたべる

ミルクティとパッションフルーツのドーム
三層のマロンクリームを重ねたムース
アナグラム歌会の打ち上げと
名古屋出張の慰労をかねて

好きな家事は、
食洗機に皿を入れること
そのつぎは、洗濯物を干すこと
どちらも私の美学があって
パズルがぴったりとはまったとき
うれしい

ありえない量の食器と鍋が機内に納まり
限られた空間に服とタオルが整列するとき
少し アナグラム詩と似ている
完成した、という手応え

緻密につくられたケーキは
遠い国のバターとバニラと洋酒の香り
こんなに美味しいものを
絶妙なバランスの上に創り上げる
技術と感性

そんな詩が書きたい
そんな詩が書けたら
FOBSのケーキと同じくらい素敵な詩を
毎日のように、食卓に並べたい

*****

しつこくて、ごめんなさい。
あきやまやすこさんが、アナグラム歌会【やすこ納言 部門】の総評をしてくださいました。そして、【みえる式部 部門】【ぼーろ中将 部門】にも、言いたいことがたくさんあった…と、また目が冴えてしまいました。

総評をしたら「なぜ採らなかったのか」を書くことになってしまい、優劣を書くことになる。そんな懸念から大賞作品だけをご紹介したのですが、やすこさんが総評の見事なお手本を見せてくれました。全ての作品のいいところを拾い上げる……!これぞ「お披露目会」のようです。

うまくできたかわかりませんが、各作品のコメント欄に書ききれなかったことを総評としてまとめました。全作品には触れられませんでしたが、全作者の方に触れました。えらそうに聞こえるところがあったら、ごめんなさい。


【みえる式部 部門】

大賞作品には、折星かおりさんの「季節のめぐり」を選ばせていただきました。

かおりさんには、じつは同じように一つのフレーズに丁寧に向き合ってくださった闇夜のカラスさんの姿も重ねていました。「宝石箱に〜」の詩を7リフレインで完成していたのですが、16リフレインの超大作「かなしみのあめはふる」を見て、もう一踏ん張り11に増やしました。16は無理でも4×4だったらできる、という希望も与えてくれた作品です。

歌会の序盤では、「歌会中継⑤」で取り上げた、言葉の勢いとアクチュアリティであきやまやすこさんの「野さい児」、自由度とイメージの面白さでみなとせ はるさんの「めとろのーむ、と、ぴあの」が有力作品だと思っていました。このまま決まってしまうのかと心配していましたが、杞憂でした。

Shihoさんの「こねこ ねこ」、まずお題に飛び上がりました。声に出したくなるような、詩の全体を貫くリズムと躍動感。それが可愛い猫の飛び回る姿に重ねられた、すさまじい完成度です。
穂音(ほのん)さんのお犬三部作は、人間と動物の営みを土の香りでのどかに包むやすこ納言部門の傑作。その番外編「たわわ」にも、嗅覚や触覚に訴える際立ったセンスを感じました。
そこに、目頭あつこさんの「苹果青の色なせる稲」が登場。イメージの豊かさや完成度はもちろんですが、とりわけ「稲→(輪廻)→苹果」という行に釘付けになりました。記号によって詩のテーマが端的に表され「この世界の関数」を見たような感覚。忘れがたいです。

個人的に大好きな世界観をもつぺくみさんMinminさんの作品。とりわけ、ぺくみさんの「水晶と氷砂糖」とMinminさんの「にじいろのしゃぼんだま」の二編が、可愛くて儚くて美しく、歌会の幕開けにぴったりだと感じて、詩歌集の冒頭に入れさせていただきました。私の宝物のような詩です。Minminさんの詩「いつもみてるよ」は、一方で不明瞭さや不完全さの魅力があり、「、」のリズムがとても新鮮でした。

【みえる式部 部門】の中でも、予想外の化学反応が起きていました。拝啓 あんこぼーろさんの「かなしいあめはふる」は、Minminさん、闇夜のカラスさんの詩に結実。はっくーさんの「光と時間」は、つるさんの琴線をかき鳴らし、見事、音楽となって【ぼーろ中将 部門】を受賞されました。はっくーさんの端正な詩は、読む人の心に焦点を結ぶのですね。つるさんの「悲しみの風よ、こんにちわ」は、きみまるこさんから受け取ったインスピレーション。たくさんの交流が生まれて、とても嬉しかったです。

歌会中継④」で取り上げた、さりとてさんの「君はもういない」、まつおさんの「愛した果てに」はいずれも実力派の作品で、思わずアナグラム詩で応答してしまいました。お二人と詩を通じて交流できたことは素敵な思い出のひとつです。
雪柳 あうこさんの「おやすみなさい」も「耳押す〜闇」といった量感のある表現に、現代詩らしいと思いました。ほのぼのした情景でありながら、オリジナリティを感じさせるスパイスのような厳しさも感じました。

ゆっちゃんさんの「おもしろきこともなき世をおもしろく」には、凄みがあります。高杉晋作の辞世の句を、深く汲んで書かれた詩だと思います。お題の文字の中で工夫されたドラマチックな展開と、問いかけに引き込まれます。
みなとせ はるさんの「はしる あのこの せなか おいかけて」「恋す乙女の初恋」も、言葉の面白さとともに、プロットや描写力を感じる詩です。一つの情景に踏みとどまって見せる、ほかの作品とは違ったアプローチに注目しました。

数理落語家 自然対数乃亭吟遊さんあきやまやすこさんは、色もの、時事もので【みえる式部 部門】の幅を、バーン!!と広げてくださいました。毎回、大いに笑わせていただき、本当にありがとうございました。お二人のおかげで、歌会の彩りが華やかに、そして自由な雰囲気になりました。

最後の最後に、だいすーけさんの「みらいにのこることばをさがしている」、まつおさんの「過去も未来も」が投稿されたときは、どちらも力作で「これが候補作では?」と誘惑されました。「みらいに〜」は、言葉と詩を俯瞰し、かつ未来に開かれた上品な作品。「過去も〜」は、いろは歌を4回、かつ歌会の主要テーマである恋と輪廻を情熱的に歌い上げています。どちらも言葉を揺るがせにできない、説得力のある作品でした。

どれも素晴らしい作品たち。最後の決め手は、結局「好み」でしかないのかもしれません。折星かおりさんの「季節のめぐり」に戻ってきて、そう思います。ご容赦ください。

【ぼーろ中将 部門】

こちらは選を考えなくてよかったので、純粋に楽しませていただきました。
感謝と感想だけ、簡単に述べさせていただきます。

秋谷りんこさんのショートショート「謎解きチャーハン」「名前の由来」は冒頭からこの部門をぐいぐい引っ張ってくださいました。すでに先を走ってくださっていたからこそ、後が続いたと感じました。
タネトハネさんと私のコラボレーション「わすれなぐさのうたぶえ」は、もうひとつの忘れられない歌会の思い出です。とっても楽しく、嬉しかったです。
nontaさんの「盗人」、そしてこれまでの絵日記の数々を、今回の詩歌集に使わせていただけたことに心から感謝です。力のある絵だと尊敬しています。
星野廉さんの「言葉は魔法」のエールをいただいて、歌会を自信を持って進めることができました。これからもアナグラム詩、続けます。
ぼんやりRADIOさんの「ともだち」は、私の気持ちを代弁してくれたかのような大好きなショートショート。アナグラムに気づいたときは、泣けました。
ゆうのうえんさんの「野さい児」&トートバッグは、コラボレーションの火付け役でした。これからも、ゆうのうえんさんの農園を応援しています。
数理落語家 自然対数乃亭吟遊さんの落語「すきしたい」。じつは私、これが候補作になると思っていました!面白いので皆さんに読んでいただきたいです。
あるさん手羽リポート。笑 AHOアナグラムの荒野を開拓するという偉業を成し遂げていただき、ありがとうございました!
【やすこ納言 部門】の平安歌人、言葉の箱庭さんの「」と「」。アナグラム制作絵巻ともいうべき「作」により、何人もアナグラム詩に誘い込まれました。
はっくーさんの「心地よい時間が落ちていた」を読んで、楽しんでいただけたことが嬉しかったです。アナグラム詩の面白さを言葉にしていただき、感謝です。
つるさん、【ぼーろ中将 部門】の受賞、心からおめでとうございます!受賞作品のほかにも、詩、絵、ジャズと多彩なご活躍は、MVPに相応しかったと思います。
ももりゅうさんは「月夜のダンス」、ぺくみさんは「蛍石の雨さ」で、それぞれ詩にイラストをつけて、多彩な一面を見せてくださいました。
いじゃらさん大作ミステリー。これも私の中では【ぼーろ中将 部門】の候補作だと思いました。最後の最後に、素晴らしい作品を届けてくださいました。

皆さま、どうもありがとうございました。

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それから、とても大切なことを書いていませんでした。申し訳ありません。

アナグラム歌会にサポートをいただいた、kesun4さんさくらさんあめの けいさんももりゅうさんゆうのうえんさん彩説さん拝啓 あんこぼーろさんさちさんタネトハネさんなおみさん、本当にどうもありがとうございます!!

おかげさまで、無事、盛会のうちに、アナグラム歌会を終えることができました。
これからも、詩とアナグラム詩を広げていきたいと思います!

ちなみに、彩説さんのnoteでは、自分の出てくる短いお話を書いてもらえます。「みえる」は氷を作りました。オラクルカードみたいでオススメです。

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長くなって、ごめんなさい。ここまで書いて、やっと気が済みました。

今度こそ、アナグラム歌会をおひらきにしたいと思います。

さっそく、さくらさん百瀬七海さんから「#アナグラム歌会」をつけた新作を投稿いただいています。新しいマガジンも作りました。
作品が集まったら、また中継で取り上げさせていただきますね。

長文失礼いたしました!
※この記事にコメントはご不要です。激励&感謝のメッセージを、すでにたくさん受け取らせていただきました。どうもありがとうございました♡
 
 

お読みいただき、どうもありがとうございました!それだけで十分に嬉しいです。 もしもサポートをいただいたときは、ほかの方の詩集に、そして私が詩を書いている日々のノート(440円)に使わせていただきます♪