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待合室のオウム

なんて変な声なんだ。
見回すと、あれ?人じゃないんだ、鳥なんだ。
あんなところに鳥かごがあったなんて、
気がつかなかったな。

待合室には私の他に待っている人はひとり。
数列前に座っている後ろ姿が見えるだけ。
他には鳥かごの中にオウムらしき鳥が1羽。
あまり綺麗な色じゃないから気づかなかったんだ。テレビも無いから、この叫び声はあのオウムに違いない。

ああ、うるさい。
まるで人の叫び声だ。
こんな美容整形外科にオウムがいるなんて。
なんで鳴いているんだ。

・・・

なんで私はここにいるんだ。

ああ、そうだった。
整形してもらいに来たんじゃないか。
腫れぼったい目を綺麗な二重にしてもらいに来たんじゃないか。

ほお
でもなんでそもそも整形する気になったんだ。
聞いたかな?わけを。

言ったよ。
好きな人がいたって。
違う大学だったけど、ドキドキするくらいカッコ良くって。一度だけデートしたけど、音沙汰なくて諦めてたら、半年ぶりに誘われて、会おうねって。次の日曜、とっても楽しみにしていたんだ。そしたらその前日、友達から電話があって、夕刊見てって。

「21サイ、ダイガクセイ、
ハンググライダーノジコデ、ソクシ」
って書いてあった。

・・・

ああ、うるさいオウムだ。

覚えてるのは
眠れなくって、
朝まで飲めないカティサークを飲んで吐いたり、お葬式に町田の先まで行ったり、
はじめて会った彼のお母様にご挨拶したり、、

うう〜ん
でもそれでなんで整形する気になったんだ。
よくわからないな。

なんで何回も聞くんだ。
なんで整形しちゃいけないんだ。
自分の顔を自分のお金で好きに変えて
何がイケナイんだ。

じゃ、何を迷ってるんだ?
何が気になるんだ?

しつこいな
どうして聞くんだ。
私の勝手じゃないか。
なんで気になるんだ。

・・・

そういえば
医者は乗り気じゃなかったな、相談の時。
どうしてかな、、

・・・

ああ、また、鳴いてる。
前から鳴いていたのに気づかなかったのか、
今はじめて鳴いたのか。

・・・

オウムが、、
なんでこんなところにいるんだ。
なんで私はここにいるんだ。

以上。


というわけで
あの日、私はあの待合室から戻ってきた。
目を覚ましてくれたのは1羽のオウムだった。
オウムのおかげで私の目は今でも腫れぼったいままだ。

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