マガジンのカバー画像

【note集】はじめての麻酔科

36
麻酔って、なんでそうするんだろう? はじめて麻酔の現場をみる人向けに 「麻酔科医がなにを考えているのか、やさしく解説する」をコンセプトにしたnote集📚 全35記事 1記事…
運営しているクリエイター

#手術室

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

麻酔って、なんでそうするんだろう?

かつて自分が麻酔科研修をしていた頃、疑問だらけでした。

「どうしていま鎮痛薬を増やすんだろう」

とか

「なんでこの吸入麻酔薬の濃度なんだろう」

とか

上級医によって言うことも違いました。
教科書をみても、はっきりとした答えがないこともありました。

しかし、麻酔はしなければなりません。
決断をしなければなりません。

どう考えて行動を選択していけばい

もっとみる
たかが移動、されど移動

たかが移動、されど移動

麻酔が終わったら、
患者さんを手術台から
病棟へ帰るベッドにうつします。

「ただうつすだけでしょ?」
いやいや、これが結構複雑なことなんです。

麻酔科医がやることは結構あります。

ベッド移動のとき、
麻酔科医がなにをみているのか?
まとめてみました!

■ 移動前の確認事項- 手術台をベッドの高さを合わせる移動するときは
手術台と移動用のベッドをくっつけます。

このとき高さが合っていないと

もっとみる
抜管したら放っておく

抜管したら放っておく

釣りみたいなタイトルですみません、、。
でも事実なんです😅

■ 抜管後、まず上気道閉塞がないか確認する 研修医
「抜管します!カフのエアを抜いてください」

看護師
「はい!抜けました!」

麻酔科医
「抜管したね。ちゃんと息はできてるかな?」

抜管後、麻酔科医がまず気にするのは「上気道閉塞がないか?」です。

■ なぜか?気道閉塞したまま帰室するのは危険です。
病棟で状況が悪化して、
呼吸

もっとみる
「安全で快適な抜管」を実現する5つの準備

「安全で快適な抜管」を実現する5つの準備

「麻生さん!!落ち着いて!手術終りましたよ!」

「うおぉー!こ✗ん△C□*K・・」

こんな麻酔の終わり方は嫌ですよね。

覚醒や抜管に伴う興奮は術後の合併症を増やします。
喉頭痙攣や、気道損傷、交感神経亢進による循環動態の変動、創部離開などがあります。

静かに穏やかに目がさめて、いつの間にか抜管されていた、、。
そんな覚醒・抜管を目指して私が実践してきた5つの準備について解説します。

「い

もっとみる
鎮静薬を中断すると目がさめる(わけではない)

鎮静薬を中断すると目がさめる(わけではない)

麻酔科外来で患者さんからこんな質問をよくされます。

「麻酔ってどのくらいで目がさめるんですか?」

私の答えは、

「薬の投与をやめると15分くらいで目が覚めてきますよ」

です。

これは
ある意味正しくて、ある意味まちがっています。

正しいのは、そのように目が覚める薬があること。
まちがいは、投与をやめるだけでは目が覚めない薬もあることです。
前者がプロポフォール、後者が吸入麻酔薬のことで

もっとみる
【全身麻酔】どのように目覚めさせるか

【全身麻酔】どのように目覚めさせるか

全身麻酔から「どのように目覚めさせたいか」は
症例によって違います。

目的に応じて、
薬剤の調整や麻酔計画を考えていきます。

覚醒したときに何を重視するのか?
さっそく具体例をみていきましょう!

■ 脳外科
- 意識の確認をしたい

脳腫瘍の手術ではもともと意識がクリアな人がほとんどです。

手術後に悪くなるとしたら
それは頭の中で何かがあったということです。

術後出血がその例ですね。

もっとみる
吸入麻酔濃度は【年齢調整】0.7MACで維持する

吸入麻酔濃度は【年齢調整】0.7MACで維持する

前回吸入麻酔濃度を考えるときの考え方
【MAC】について解説しました↓

今回は吸入麻酔を具体的に何%で設定するか、です。

先に結論の表を貼っておきますね。

ん?これはどう使うんだ?
と思った方でも大丈夫です!
記事の最後で具体的な使い方について解説します。

■ MACの応用、MAC-awake現代の麻酔で吸入麻酔薬に求められているのは「鎮静」です。
鎮痛・筋弛緩は別の薬剤があります。

もっとみる
吸入麻酔の濃度はどう決めているの?

吸入麻酔の濃度はどう決めているの?

吸入麻酔薬ってどのくらいにしておいたらいいんだろう。
麻酔科の先生達は適当に気化器をひねってるようにみえるけど、、。
どうやって決めてるんだ?

今回はそんな疑問にお答えします。

長くなってしまったので2回に分けて解説です。

先に答えをいってしまうと【0.7MAC】で維持します。

■ まずは難解なMACの話麻酔の勉強をすると最初の方に出てくる【MAC】

吸入麻酔濃度を語るときに使う概念です

もっとみる
麻酔中の鎮静度合いは脳波で判断する

麻酔中の鎮静度合いは脳波で判断する

麻酔中
患者さんがどのくらい寝ているか、
麻酔科医はどう判断しているの?

結論、脳波を見て判断しています。
さっそく見ていきましょう!
トップ画がなんなのかはすぐにわかります。

■ BISモニターで脳波をみる脳波の測定というと
頭に電極をたくさんつけて測るイメージがありませんか?

てんかんの診断など詳しく分析が必要な場合は
上図のようなセッティングになります。

一方で手術室は
シールひとつ

もっとみる
【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

全身麻酔中

研修医
「心拍数と血圧があがったら患者さんが「痛がっている」っていうことですよね?」

麻酔科医
「基本はね。でもそうじゃないことも結構あるんだよ。」

例外もあるので、
総合的な判断が必要になります。

というのが前回の話でした。

今回は、

心拍数の上昇
血圧の上昇


本当に「痛み刺激」由来なのか?
その総合的な判断の仕方
についてまとめます。

(ちょっと長めの記事です。

もっとみる
【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

全身麻酔導入が終わり、手術が始まった。

麻酔科医
「患者さんが痛がっているか、ってどうやって判定する?」

研修医
「えっと、心拍数の上昇とか血圧の上昇ですか?」

麻酔科医
「そうだね!でも、、」

例外が結構あります。

■心拍数と血圧の上昇が基本

さきの会話で研修医が答えてくれた通り、

全身麻酔中の痛みの判定は、
心拍数と血圧の上昇が基本です。

簡単に流れを説明すると
図のようになり

もっとみる
【全身麻酔】血圧はいくつにするべきか?【3グループにわける】

【全身麻酔】血圧はいくつにするべきか?【3グループにわける】

全身麻酔中に血圧を維持するのが大事なのはわかったけど、
どのくらいで管理すればいいの?

今回はそんな疑問にお答えします。

元ネタの論文はこちら
Blood Pressure Targets in Perioperative Care
Hypertension. 2018;72:806–817

■ふだんの血圧で3グループに分けるさっそくですが、この記事の結論です。
スライドにまとめてみました

もっとみる
なぜ血圧を維持するのか?【理由は2つ】

なぜ血圧を維持するのか?【理由は2つ】

麻酔中、血圧をさげるのは良くない。

麻酔科医をはじめ、みんな
なぜ麻酔中の血圧を気にするのでしょう。

「なんで麻酔中は血圧をみるんだろう?」

今回はそんな疑問にお答えします。

■なぜ血圧に注目するのか?- 理由① 組織酸素化を保つ目安になるからそもそも、循環を維持するのは
「組織の酸素化を保つ」ため
です。

全身に酸素を含んだ血液を行き渡らせるため
ある程度の血圧が必要になるわけです。

もっとみる
血圧が下がったら?【考えること3つ】

血圧が下がったら?【考えること3つ】

研修医
「血圧80きったんですけど、エフェドリンでいいですか?」

麻酔科医
「うーん、とりあえずプロポとレミをさげようか。それからネオシネをいれよう。」

よくある
研修医と麻酔指導医のやりとりです。

今回の記事では
なぜこのようなやりとりになったか、を解説していきます。

後半で具体的な麻酔科医のアタマの中も紹介します!

■原因別に考える前回、麻酔中の原因は3つしかない

という話をしまし

もっとみる