【全身麻酔】血圧はいくつにするべきか?【3グループにわける】
全身麻酔中に血圧を維持するのが大事なのはわかったけど、
どのくらいで管理すればいいの?
今回はそんな疑問にお答えします。
元ネタの論文はこちら
Blood Pressure Targets in Perioperative Care
Hypertension. 2018;72:806–817
■ふだんの血圧で3グループに分ける
さっそくですが、この記事の結論です。
スライドにまとめてみました↓
まず、
ふだんの血圧をもとに
低血圧群、通常血圧群、高血圧群の3グループにわけます。
低血圧群
収縮期血圧<90mmHg
もしくは
拡張期血圧<50mmHg
通常血圧群
収縮期血圧 90〜129mmHg
かつ
拡張期血圧 50〜79mmHg
高血圧群
収縮期血圧≧130mmHg
もしくは
拡張期血圧<50mmHg
そして
それぞれのグループで
管理目標を決めていきます。
共通している目標は
「ふだんの血圧から
あまり大きくはずれすぎないようにする」
ということですね。
■具体的にあてはめてみる
よくある症例について
あてはめてみましょう。
63歳男性
ASA-PS 2
合併症に高血圧症あり。
アムロジピン5mg内服していて
ふだんの血圧はだいたい140/85mmHgくらい。
まずグループ分けです。
表に照らし合わせると「高血圧群」にあてはまります。
このグループの管理目標は
「ふだんの血圧の80%-110%」なので
具体的な管理目標は
「112-154/68-94mmHg」
かつ
収縮期血圧160mmHg未満
となります。
結構高いですよね、、。
同じようにやっていくと、
ふだんの血圧が120/60程度の場合
「正常血圧群」のグループになり、
このグループの管理目標は
「ふだんの血圧の80%-110%」なので
具体的な管理目標は
「96-132/48-66mmHg」
かつ
「平均血圧65-95mmHg」
となります。
やはりそこそこ高めに維持していますね。
■なぜこの目標になったのか?
簡単にいってしまうと、
「いろいろな臨床研究から
この範囲であれば術後の臓器障害が少なかった」
からです。
もう少し細かく説明します。
- ふだんの血圧をもとに決める
麻酔の現場では
「この人はもともと血圧高いから麻酔中も高めで管理しようね」
なんていう会話がよくあります。
教科書でこんな図をみたことはありませんか?

高血圧治療ガイドライン2004より引用
脳血流の自動調節能
正常血圧者と高血圧者の比較
という図ですね。
血圧低下に対して、
高血圧者の方が
脳血流は低下しやすくなっています。
人によって許容できる血圧の範囲がちがう。
このことは
全身麻酔の臨床研究でも明らかになっています。
全身麻酔中でも
ふだんの血圧にあわせて血圧を調整したほうが、
術後の臓器機能障害の発生頻度は低くかったのです。
JAMA. 2017 Oct 10; 318(14): 1346–1357.
- 平均血圧を保つ
循環維持の
ゴールは組織の酸素化で、
血圧の維持はその手段でした。
ここでいう血圧は「平均血圧」です。
組織灌流は平均血圧に影響を受けます。
なぜか?
平均血圧の説明をしますね。
心周期の大部分は拡張期です。
なので、組織に血液が流れるときも拡張期の影響が大きくなります。
平均血圧は、
収縮期と拡張期の時間配分を考慮した
「末梢組織に血液が流れるときの圧」をあらわしています。
式で表すと、こんな感じ↓
平均血圧=拡張期血圧 + 1/3×(収縮血圧-拡張期血圧)
計算式のとおり
収縮期血圧より拡張期血圧に多くの重みをおいています。
平均血圧は組織灌流に影響するから
下がりすぎないようにするんですね。
- 実は高すぎるのもよくない
血圧が高すぎると、
周術期にはさまざまなリスクをかかえます。
手術部位からの出血、
血管吻合部の破綻、
脳出血などです。
ある研究では、
入院期間の延長、死亡に独立して関連することが示されています。
Anesth Analg. 2002;95:273–277
未破裂動脈瘤があるなど
出血の危険性が高い場合は、
収縮期血圧コントロール目標の「下限」を目指すといいでしょう。
さきにだした例でいうと、
「112-154/68-94mmHg」
この目標であれば
収縮期血圧112mmHgを目指す。
ということです。
■さいごに
まとめです。
全身麻酔中の
血圧はいくつにするべきか?
ふだんの血圧をもとに
管理目標をきめる方法を紹介しました。
元ネタはこちらです。
Blood Pressure Targets in Perioperative Care
Hypertension. 2018;72:806–817
興味のある方はぜひ読んでみてください!
「血圧をいくつにするべきか問題」はさまざまな臨床研究で検討されているところです。
この論文をとりあげた理由は、
そんな状況の中
大胆にも血圧管理の具体的な戦略を打ち出しているからです。
臨床医は決断しなくてはなりません。
たとえそれが、
答えのない問いであってもです。
その道標になろうとした
この論文を評価したいと思います。
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長い記事を
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