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医工産学連携の基礎

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研究者として医療機器・ヘルステックの研究開発と事業化、人材育成に関わった経験から、医工連携・産学連携で考えておくべき基礎的な事柄をまとめてみます。
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医工産学連携の基礎:(1) 医工連携における医療と医学と工業と工学と 〜 学の視点から

医工産学連携の基礎:(1) 医工連携における医療と医学と工業と工学と 〜 学の視点から

このシリーズでは、研究者として医療機器・ヘルステックの研究開発と事業化、人材育成に関わった経験から、医工連携・産学連携で考えておくべき基礎的な事柄を自分の視点でまとめてみます。

※本シリーズは

北海道大学病院 医療機器開発推進センター医療機器開発人材育成プログラム(2021年11月)
「医工連携による医療機器開発:医療と医学と工業と工学と」

 名古屋工業大学―名古屋大学医学系研究科合同シンポ

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医工産学連携の基礎:(2)「学」とは何か 〜 大学教員のお仕事① 研究 〜

医工産学連携の基礎:(2)「学」とは何か 〜 大学教員のお仕事① 研究 〜

前回の記事の続きです。医工連携は「医工産学連携」であり、医・学との付き合い方がポイントというお話をしました。

大学のセンセイって普段何やってるんでしょうね?

学者っていうと、その分野についていろんなことを広く深く知ってる人って感じがしますし、研究者っていうと何か一つのことを部屋にこもってひたすら考えてる人って感じがしますし。

僕も実際学生時代、自分が大学教員になるまで、大学の先生とは学問を教

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医工産学連携の基礎:(3)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事② 教育、そして社会貢献活動としての研究教育 〜

医工産学連携の基礎:(3)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事② 教育、そして社会貢献活動としての研究教育 〜

前回の記事の続きです。
大学教員も、資金繰り→生産活動(研究)→成果の公開→資金繰り、のループで生活する、一般的な経営と同じ様な生活をする研究者という職業人です。

まず研究を中心とした仕事について紹介しましたが、もちろんそれだけが大学教員の仕事ではありません。まず学生教育、講義が絶対ありますよね。他にもたくさんの仕事があります。

この記事では本務たる研究・教育関連の残りを解説します。

教育:

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医工産学連携の基礎:(4)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事③ 校務と広報活動

医工産学連携の基礎:(4)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事③ 校務と広報活動

前回の記事の続きです。
前回までで研究者・学者・教員としての大学教員の本務たる研究と教育、社会貢献としての産学連携と科学/教養教育活動の説明をしてきました。

まだまだありますが中心的な部分は校務と広報活動です。この記事ではそれらについて紹介します。

大学運営:校務、学務他大学は「学問の自由」を謳う組織でありそのために高度な自治を維持してきた歴史を持つ組織なので、今でもかなり多くの部分で教員が自

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医工産学連携の基礎:(5)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事④ 大学教員との協働で考慮すべきことは「プロセス・成果の公表戦略」

医工産学連携の基礎:(5)「学」とは何か 〜大学教員のお仕事④ 大学教員との協働で考慮すべきことは「プロセス・成果の公表戦略」

前回の続きです。ここまでの3記事で、大学教員は

本務は研究。資金繰り→研究→論文発表の無限ループ。

次いで欠かさざる本務が教育。そして学内外連携の研究教育による社会貢献も。

さらに学務・校務。学生と資金を集める広報も大事。

という職業であると解説してきました。

このような職業である大学教員と医工産学連携での技術・製品開発を行う際、大学教員の生態・生存活動を踏まえて考えていただきたい事業戦

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医工産学連携の基礎:(6) 共感① 「ニーズドリブン」と「デザイン思考」

医工産学連携の基礎:(6) 共感① 「ニーズドリブン」と「デザイン思考」

この医工産学連携の基礎シリーズでは、ここまでまず医工産学連携のプレーヤーと、その中で一番わかりにくい人種「学者」とは何かについて解説してきました。

ここからは連携による技術開発・事業開発についての私なりの戦略について解説していきます。
まずはその根本にある思想と姿勢から。

信頼を形成するには?信頼の3要素医療製品・事業開発とは直接関係はないのですが、ここではまず私の好きなTEDトークを一つご紹

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医工産学連携の基礎:(7) 共感② ユーザからの共感とプロセスエコノミー的アプローチ

医工産学連携の基礎:(7) 共感② ユーザからの共感とプロセスエコノミー的アプローチ

前記事ではデザイン思考等でも取り上げられている、製品・事業開発におけるユーザへの共感の重要性について解説しました。

この記事では事業開発におけるもう一つの重要な共感、ユーザからの共感について解説します。

ユーザからの共感がなければ買ってもらえないユーザへの共感に基づき、アンメット・メディカル・ニーズを掴み的確なインサイトを獲得し、それに対する適切な解決策となる技術を持つ製品を開発できたとして、

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医工産学連携の基礎:(8) 実例①学会・展示を通じたユーザへの共感の深化と技術の強化

医工産学連携の基礎:(8) 実例①学会・展示を通じたユーザへの共感の深化と技術の強化

前記事までで、大学研究者の実体、「共感」の重要性について解説しました。

ここからは私が大学研究者として開発に関わった医療関連製品の実例などを元に、

知の開拓と公開が必要な大学研究者との協業のメリット

オープン開発環境での共感の獲得と増強法

を示していきたいと思います。

注) ここで扱う実例は医療関連製品ですが薬事品ではありません。薬事品の場合は規制に対応した特別な対応が必要となりますが、

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医工産学連携の基礎:手術支援ロボットの開発研究において最初に考えること

医工産学連携の基礎:手術支援ロボットの開発研究において最初に考えること

先日とある会議で大学での医療機器開発のお話をしていて、表題の手術支援ロボットのことを思い出しました。

医療・福祉ロボットの研究室大学(院)生時代、私は卒論・修論と手術支援ロボット・メカトロニクスを研究テーマとしていました。所属していた東京大学の医用精密工学研究室は医療・福祉ロボットでは有名な研究室です。

現教授の小林英津子先生は薬事承認まで至った初の国産手術支援ロボット「Naviot」の開発者

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