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#エッセイ
諦めがもたらしたのは納得だった
10秒台で走る選手が隣のレーンにいて、私は絶望した。
伸びないタイム私は中高6年間を陸上競技部で過ごした。今振り返ると、そこには悔しかったり辛かったりした場面が多いように思う。もちろん地区大会さえも突破するのが難しい、並以下の選手ではあったが、自分なりに辛さは味わったと思っている。もちろん、一番つらかったのはタイムが伸びなかったことだ。
私は4年かけて100mのタイムが0.8秒しか縮まらなかっ
左胸を失って、生きやすくなったと思う
私には左胸がない。5年前に乳がんの手術をして、全て切り取った。乳房再建はしなかったので、私の左胸があった部分には、今も横一文字に引かれた傷跡が残っている。
服を着ていれば分からないので、見た目は普通の人と同じだ。普通の母親で、普通の店員で、どこにでもいる普通の人。術後も以前と同じように過ごしているので、こちらから伝えた友人以外、誰も私が乳がんだとは気付かないだろう。
唯一、温泉に行った時だけは