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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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#ドラマ

『梨泰院クラス』は古びた社会構造を打ち破る爽快なドラマだ 初出:wezzy(株式会社サイゾー) 2020年4月26日

 筆者がたびたび寄稿していたウェブメディア『wezzy』が、2024年3月31日にサイトの完全閉鎖を予定しているそうです。そのお知らせの中で、「ご寄稿いただいた記事の著作権は執筆者の皆様にございます。ご自身のブログやテキストサイトなどのほか、他社のメディアでも再利用可能です」とあるため、こうしてブログに記事を転載しました。元記事のURLを下記に記載しておきますので、気になる方は閉鎖前に覗いてみてく

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窪塚洋介も好演!Netflix『Giri / Haji』が破壊するステレオタイプの日本人像と家父長制 初出:wezzy(株式会社サイゾー) 2020年2月15日

 筆者がたびたび寄稿していたウェブメディア『wezzy』が、2024年3月31日にサイトの完全閉鎖を予定しているそうです。そのお知らせの中で、「ご寄稿いただいた記事の著作権は執筆者の皆様にございます。ご自身のブログやテキストサイトなどのほか、他社のメディアでも再利用可能です」とあるため、こうしてブログに記事を転載しました。元記事のURLを下記に記載しておきますので、気になる方は閉鎖前に覗いてみてく

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“優しさより正しさ”が欲しい者たちの世界を描きつづけた傑作 ドラマ『トップボーイ』シーズン5

 イギリスの大人気ドラマシリーズ『トップボーイ』がシーズン5でファイナルを迎えた。2011年にチャンネル4で初放送されて以降、5シーズンにわたって物語を描いた本シリーズは、ダシェン(アシュリー・ウォルターズ)とサリー(ケイン・ロビンソン)という2人のドラッグディーラーを中心に話が進む。ロンドンの裏社会を舞台に、命を賭けた縄張り争い、感情の機微が行きかう人間関係などを丁寧に描きながら、登場人物たちの

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恋愛至上主義ではない恋愛ドラマ『愛と、利と』

 2023年2月9日、韓国ドラマ『愛と、利と』の最終回が放送された。KCU銀行ヨンポ店で働く4人の男女を中心としたメロドラマである本作は、恋愛至上主義ではない恋愛ドラマと言える作品だ。スヨン(ムン・ガヨン)、サンス(ユ・ヨンソク)、ミギョン(クム・セロク)、ジョンヒョン(チョン・ガラム)はそれぞれの恋愛模様を見せてくれるが、4人とも誰かと結ばれることなく物語は終わる。

 本作を観て特に興味深いと

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2022年のポップ・カルチャーを振りかえる

 2022年もポップ・カルチャーに触れていて感じたのは、自身の背景を強く滲ませた正直な表現が増えたということです。音楽作品でいうと、リナ・サワヤマの『Hold The Girl』は、これまで以上に自らの切実な想いが込められた素晴らしいアルバムでした。ロイル・カーナーの『Hugo』も、人生を振りかえりながら、自分の怒りや憎しみと向きあう痛みが顕著な作品と言えます。
 この傾向は今年突然始まったことで

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『シスターズ』『トップボーイ』『アス』 〜 “階級”の残酷さと無慈悲を描くドラマ/映画

 2022年9月6日、イギリスの保守党で党首を務めるリズ・トラスが第78代首相に就任した。就任後すぐトラスは組閣に取りかかり、主要閣僚を順次発表していった。
 トラスの人選は大きな注目を集めた。ガーナ系のクワーテング財務相、ケニアとモーリシャスがルーツのブレイバーマン内相といった面々を登用し、多様性をアピールしたのだ。

 白人男性以外が要職を担うトラス政権は、一見すると進歩的に見えるかもしれない

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ドラマ『トップボーイ』シーズン4

 さまざまなところで言ってきたことを繰りかえすようで申し訳ないが、ドラマ『トップボーイ』シーズン3(2019)は傑作だ。イースト・ロンドンのサマーハウス団地を拠点とするドラッグディーラーのダシェン(アシュリー・ウォルターズ)とサリー(ケイン・ロビンソン)が中心の物語による鋭い社会批評は滋味で溢れ、現実世界の問題と地続きの精巧なフィクションとしての輝きを放っている。
 『Bullet Boy』(20

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2021年のポップ・カルチャーを振りかえる



 おそらく、他の方々と比べてかなり遅いタイミングでのベスト記事発表でしょう。いつもは年末に発表していたんですが、例年よりも仕事とプライベートの忙しさが凄まじく、書く時間をなかなか取れなかったのが遅くなった主な理由です。とはいえ、年度で見ればぎりぎりOKかな?と思うので、どうかご容赦を。

 アルバム、トラック、映画、ドラマ、本のベストを選んだのは従来通りです。ただ、前回は選ぶ作品数を増やしたの

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2021年ベスト・ドラマ20

 ドラマは音楽や映画以上に韓国の作品が際立っていた。作られる物語はバラエティー豊かで、物語に込められた視点も実に多彩でした。世情に対するオルタナティヴな価値観を醸す作品も多く、それらは韓国に住んでいない人でも共鳴できるものだと思います。

 ブログやWebマガジンで評した作品は、タイトルにリンクを貼っております。こちらもぜひ読んでください。

20 『マイネーム:偽りと復讐』

 体技中心の骨太な

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ドラマ『地下鉄道 ~自由への旅路~』



 『地下鉄道 ~自由への旅路~』は、Amazon Prime Videoのオリジナル・ドラマ。監督は『ムーンライト』(2016)や『ビール・ストリートの恋人たち』(2018)といった良質な映画を作りあげたバリー・ジェンキンスが務めるなど、配信前から大きな注目を集めていた。

 本作の主人公は、アメリカ南部のジョージア州にある大規模農園で働く黒人奴隷のコーラ(スソ・ムベドゥ)だ。農園での辛い生活

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ドラマ『スカイ・ロッホ』の逃走劇は、男性優位社会からの脱出だ



 コーラル(ヴェロニカ・サンチェス)、ウェンディー(ラリ・エスポジット)、ジーナ(ヤニ・プラド)という3人のセックスワーカーが逃亡劇を繰りひろげる『スカイ・ロッホ』は、ネットフリックス作品のなかでも特に配信を楽しみにしていた。ドラマ『ペーパー・ハウス』(2017〜)でも良い仕事を果たしたアレックス・ピナやエステル・マルティネス・ロバトなどが制作/脚本に関わり、劇中で使われる音楽は筆者が好きなポ

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ドラマ『都会の男女の恋愛法』は、多彩な映像表現で心を語る



 『都会の男女の恋愛法』は、2020年12月22日から韓国のkakaoTVで放送されているウェブドラマ。チ・チャンウクとキム・ジウォンを主演に迎え、都会で生活する男女の複雑な恋愛関係や気持ちを描いた群像劇だ。日本でもネットフリックスを介し、ほぼリアルタイムで観られる。

 筆者は基本的に、ドラマ評は全話放送されてから書くようにしている。ある回だけがおもしろくても、全体で観たら微妙な作品も少なく

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ドラマ『保健教師 アン・ウニョン』が描く、痛みを知るからこそ人に優しくできる大人



 『保健教師 アン・ウニョン』は、韓国の作家チョン・セランによる小説『保健室のアン・ウニョン先生』を原作としたドラマ。アン・ウニョン役には映画『82年生まれ、キム・ジヨン』でも主演を務めたチョン・ユミ、ウニョンと共に行動する同僚教師ホン・インピョ役にはナム・ジュヒョクが迎えられている。

 物語は、赴任中の学校で起こる不可思議な現象を、ウニョンとインピョが解決していくというもの。
 ウニョンは

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2020年ベスト・ドラマ50

 今年からドラマもベスト50を選んでいます。理由は、ドラマに関する原稿を書く機会が増え、“メインのフィールドのひとつ”としてとらえていいかなと思ったからです。これまでも映像作品について書くことに自信を持っていましたが、それがより深まったのは今年の仕事のおかげ。いろいろ支えてくれている方々には感謝しかありません。
 評価基準はベスト・ブックと一緒です。質のみならず、何かしらの同時代性を見いだせるドラ

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