近藤 真弥

ポップ・カルチャーが大好きなフリーライター/編集。批評スタイルは「媚びずに是々非々」。主な仕事のまとめ : http://masayakondo.strikingly.com/ 連絡先 : acidhouse19880727@gmail.com

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    • 音楽レヴュー 2

      音楽作品のレヴューです

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      書き残しておきたい雑感の寄せ集め

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      観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。

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      興味深かった書籍について書いたものをまとめています。

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    2022年のポップ・カルチャーを振りかえる

     2022年もポップ・カルチャーに触れていて感じたのは、自身の背景を強く滲ませた正直な表現が増えたということです。音楽作品でいうと、リナ・サワヤマの『Hold The Girl』は、これまで以上に自らの切実な想いが込められた素晴らしいアルバムでした。ロイル・カーナーの『Hugo』も、人生を振りかえりながら、自分の怒りや憎しみと向きあう痛みが顕著な作品と言えます。  この傾向は今年突然始まったことではなく、数年前から兆候がありました。その具体例のひとつは、プロデューサー/DJの

      • アイルランドからFuck家父長制のポスト・パンク〜M(h)aol『Attachment Styles』

         以前ブログでも書いたように、いまアイルランドの音楽シーンがおもしろい。記事を書いたあとも、ヒップホップ・グループのニーキャップがNYタイムズにピックアップされるなど、その勢いは増す一方だ。  こうした潮流をきっかけに、M(h)aol(〈メイル〉と発音するらしい)も大きな注目を集めた。2014年にダブリンで結成されたこのバンドを知ったのは、2021年のデビューEP「Gender Studies」を聴いたときだ。自身の政治/社会性を隠さない歌詞と、グルーヴィーでざらざらとしたサ

        • 恋愛至上主義ではない恋愛ドラマ『愛と、利と』

           2023年2月9日、韓国ドラマ『愛と、利と』の最終回が放送された。KCU銀行ヨンポ店で働く4人の男女を中心としたメロドラマである本作は、恋愛至上主義ではない恋愛ドラマと言える作品だ。スヨン(ムン・ガヨン)、サンス(ユ・ヨンソク)、ミギョン(クム・セロク)、ジョンヒョン(チョン・ガラム)はそれぞれの恋愛模様を見せてくれるが、4人とも誰かと結ばれることなく物語は終わる。  本作を観て特に興味深いと感じたのは、さまざまな解釈ができるエンディングだ。スヨンとサンスが互いに好意を持

          • 2022年ベスト・アルバム20

             なんだかんだいっても、アメリカとイギリスがポップ・ミュージックの中心なんだなと複雑な想いを抱きつつ、そのアメリカとイギリスから登場した音楽を欧米圏のアーティストではない人が更新していく様には、とても興奮しました。その雑感を示す意味でも、1位に選んだ作品は象徴的かなと思います。  〈『』〉で括られた作品はフル・アルバム、〈「」〉で括られた作品はEP/ミニ・アルバムです。 20 Various Artists『Mirinae 미​리​내』  韓国・済州島が拠点のレーベルによ

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            2022年ベスト・トラック20

             ここ数年のベスト記事とほぼ同じことを言うようで恐縮ですが、今年もアジアのポップ・ミュージックをたくさん聴きました。欧米圏の有力メディアやオルタナティヴな媒体が積極的にアジアの音楽を取りあげてくれるおかげで、これまで以上にディグりやすくなりました。  アジアの中でも韓国はおもしろい作品が多かったと思う一方で、フィリピンやタイなどもどんどん盛りあがってるなと感じる1年でしたね、また、そうした波にようやく日本のアーティストたちも乗りはじめたか?と思う瞬間も多かったです。 20

            2022年ベスト映画20

             女性の映画監督による作品と出逢う機会に恵まれました。国も視点も多彩で、勉強になることも多かったです。アジア圏に良作が目立ったのも2022年の特徴ですかね。 20 『スピリットウォーカー』  韓国産SF映画。ハリウッド映画も顔を真っ青にして逃げだすであろう小細工なしの王道エンタメ作品。やはり韓国映画は奥が深くおもしろい。 19 『彼女たちの話』  男女対立の構造に疑問を抱いた少女の物語。いまだ男性優位な日本で作る映画としては甘さも感じられるが、対立構造を乗り越えようと

            2022年ベスト・ドラマ20

              今年は韓国ドラマが飛びぬけていました。これまでは多国籍なリストになっていたと思うのですが、質を優先するとどうしても韓国の作品が多くなってしまいました。さまざまな視点から風刺や社会性を込めるクリエイターの才能には感謝しかありません。筆者の人生を鮮やかに彩り、視点や価値観を拡張してくれたのですから。 20 『ジャングル ~絶望の街~』  UKドリルやグライムがモチーフのクライムドラマ。映画『ブルー・ストーリー』(2019)を想起させる演出と詩的なセリフの多用が目立つ内容は

            2022年ベスト・ブック20

             今年も韓国の本を多く読みました。すでに人気のK-文学はもちろん、学術書やノンフィクションなどさまざまな分野で興味深い言葉を楽しめた。装丁も素晴らしいものがたくさんあり、手に取るおもしろさをあらためて感じる機会にも恵まれました。 20 著/ペリーヌ・ル・ケレック 訳/相川千尋 解説/北原みのり 『真っ赤な口紅をぬって』  性暴力の女性被害者から聞きとりしてきた経験を反映したフェミニズム詩集。詩という形式だからこそ、より率直な感情を表現できることもあると教えてくれる良書だ

            ミュージック・マガジン最新号にヤング・ファーザーズの記事、Lexie Liu『The Happy Star』評、RM『Indigo』評を寄稿しました。ぜひとも。http://musicmagazine.jp/mm/index.html

            購入記録(7〜9月)

             この記事は、聴いた作品の中から“興味深い”音楽をピックアップしたリストと、そこから“好き” “面白い”と感じた30曲を選んだSpotifyのプレイリストで構成されております。  今年の夏は暑いと感じるときが少なかった気がします。 7〜9月に聴いた主な作品 〈「」〉はEP/シングル/ミニ・アルバム 〈『』〉はフル・アルバム 7月 Fourth Phase「Like 90s EP」ハウス John Tejada「Nocturama」テクノ Scott Avery「C

            購入記録(4〜6月)

             この記事は、聴いた作品の中から“興味深い”音楽をピックアップしたリストと、そこから“好き” “面白い”と感じた30曲を選んだSpotifyのプレイリストで構成されております。  おかげさまでおもしろい依頼をたくさんいただいて忙しくしているのですが、その影響で購入記録の更新が滞ってしまいました。本当は月1更新したいけれど...。というわけで3ヶ月まとめての紹介になりますが、参考になれば嬉しいです。 4〜6月に聴いた主な作品。 〈「」〉はEP/シングル/ミニ・アルバム。

            人々の不安や哀しみに寄り添うLoyle Carner『Hugo』の誠実な言葉

             UKラップ・シーンにおいて、ロイル・カーナーというラッパーは独特な立ち位置を保ってきたと言える。サウス・ロンドンのランベスで生まれたカーナーは、グライムやUSヒップホップの影響下にありながら、それらの音楽とは毛色が異なるサウンドを作品では鳴らしているからだ。他のUKラッパーがアフロスウィングやUKドリルを定石とするなか、ジャズ、ゴスペル、ソウル、ファンクといった要素が濃い方向性を突きつめ、孤高的存在感を放ってきた。  庶民の視点を忘れない歌詞も、カーナーの音楽を特別なものに

            bounce467号にSHYGIRL『Nymph』評とVIEUX FARKA TOURÉ & KHRUANGBIN『Ali』評を寄稿しました。ぜひとも。https://tower.jp/mag/bounce/2022/bounce_466

            ミュージック・マガジン最新号のクロス・レヴューとマンチェスター・エクスペリメンタルのディスクガイドに参加しました。Sampa The Great『As Above So Below』評も執筆。ぜひとも。http://musicmagazine.jp/mm/index.html

            SEULGI(슬기)「28 Reasons」

             レッド・ヴェルヴェットのスルギ(슬기)がソロ・ミニ・アルバム「28 Reasons」をリリースした。これまで彼女は、アイリーンとユニットを組んでの課外活動はあったものの、自分だけを前面に出したソロ作品は本作が初めてだ。ゆえに発表前から注目度は高く、期待も集めていた。  結論から言うと、本作は素晴らしい作品だ。スルギはヴォーカルもダンスもハイレヴェルなアーティストであるのは周知の事実だが、そうした豊かな表現力が見事に発揮されている。全体的にダークなサウンドは統一感を演出しな

            なぜ、いまマニック・ストリート・プリーチャーズが求められているのか?〜『Know Your Enemy』リイシュー版がヒットした理由

             今年9月、ウェールズのロック・バンド、マニック・ストリート・プリーチャーズ(以下、マニックス)が『Know Your Enemy』のリイシュー盤を発表した。本作のオリジナルは2001年3月に6thアルバムとしてリリースされたが、今回のリイシューは当時と異なる形で世に出ている。内省的で柔和な質感の音が多いディスク1「Door To The River」、激しいギター・サウンドが中心のディスク2「Solidarity」という2枚組の構成になっているのだ(完全生産限定盤にはデモ音