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リリとロロ

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リリ・シャロンという自由について。
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リリとロロ 「匂いのゆくえ」について

リリとロロ 「匂いのゆくえ」について

この作品は「羽化」と同時進行で書き始めたが、再考に再考を重ね、難航したためこのタイミングでの投稿になった。

結果、かなりコンパクトになった。

長々と苦悶について綴るための作品でもなければ、誰かの参考書になるための道筋を遠回りして辿る作品でもないと思っていた。

ましてや形而的な作品なんて、リリとロロのテーマにそぐわない。

短絡的に言うと少年誌のように「オレたちの闘いはまだ始まったばかりだ!」

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リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ⑤

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ⑤

完結

以前までは
「おひさまの香り?太陽に匂いはないでしょ」
と思っていた。

違う。

匂いは感情だ。

彼女は色々な知識を分け与えてくれた。

私の悩みの解決の糸口を見つけ出してくれたのは彼女だった。

音楽も本も文化的側面を持つ芸術が、音や文字を介して共感覚のように伝わるのも、そこに感情があるからだ。

調香は世間的に見れば、文学でも芸術でもないかもしれない。

冷たく言えば化学の括りなの

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リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ④

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ④

きれいな話。

彼女と出会ったのは高校の頃だった。

共通の話題は特にないがどこか居心地が良く、昼食を共にすることが多かった。

彼女の好きな音楽の話。

私の好きな本の話。

互いの好きについて気兼ねなく話し合える仲だった。

ちょうど読み終えた「音楽の海岸」。

きっと彼女は気に入ってくれるだろう。

そう思い家に招いたとき、彼女は目的のそれよりも本棚の上のアロマオイルに興味を表していた。

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リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ③

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ③

くすぶる

私自身だけが自分の匂いをこうも嫌うのか。

皆は自分の放つ臭気について如何に思い、日々を過ごすのだろうか。

また、私の匂いをどう感じているのだろうか。

その目尻に皺の寄った顔の裏側には、

授業中私の背後にあるはずの真剣な眼差しの裏側には、

体育で仲間と笑い合いながら眉に乗った汗を拭うその裏側には、

一体どれくらいの悩みが隠れているのだろうか。

そしてどれくらい私の匂いを気に

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リリとロロ 「匂いのゆくえ」②

リリとロロ 「匂いのゆくえ」②

みんなコンプレックスってあるよね。

時が経つにつれ、自分にも匂いがあり、その匂いを嫌うようになった。

生きていくうちに知っていった。

好きな人は私の好きな香りを持っていること。

友人の家で初めて友人の「生活の匂い」を感じること。

匂いはその人の新たな一面となり得る。

フェロモンというものは無臭らしいが、固有の匂いというのは掻き消せない奥底に留まったまま、皮脂や汗を介して排出される。

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リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ①

リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ①

調香のロロ

マドレーヌを紅茶に浸したことがあるだろうか。

「プルースト効果」というものらしい。

本を好んで読まない私がこの言葉を知ったのは、とある本の虫から教わった20代の頃だった。

今でも不思議と鮮明に覚えている。

グラタンの美味しい地元の喫茶店。

螺旋階段を上った二階の角の席で、彼女はソニック・エティックや村上龍の話をしてくれた。

「どこかへ消えてしまいたい気持ちと同時に、どこで

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リリとロロ なかがき

リリとロロ なかがき

「まえがき」と「あとがき」があるんだから、「なかがき」もあるでしょうよ、そりゃあ。

別にここがちょうど中間地点になるというわけではなく、「羽化」「サブリナロマンス」「アザンの森」と書き終えて、キリが良いから書いてみた。

先にあぐら女(Low-key dub infection)でのセルフカバーをして知られていたせいもあってか、何故か人気の「アッシュ」というリリ・シャロンの曲。
前回のスタジオデ

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リリとロロ 「アザンの森」について

リリとロロ 「アザンの森」について

バッドエンドや胸糞悪い作品が好きで一度書いてみたかった。

そもそも本は普段読まない上に、サスペンスなんてテレビドラマですらあまり見ない。

ユージュアル・サスペクツは見たけどあれはミステリーなのかな?

元は僕が実際に見た夢だったので、これが正しいサスペンスなのかはよくわからない。

拙い文章なのでアドバイスをくれると嬉しい。

精進致す。

アザンはアンモニアのことで、森はヘブライ語でシャロン

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑪ ⑫

リリとロロ 「アザンの森」 ⑪ ⑫

これにて完結.°(ಗдಗ。)°.

小気味良い電話の音で目覚める。

見慣れた天井に布団。

今日一日、自分は何をしていたのだろう。

iPhoneの時刻は0時8分。

知らない携帯番号からの電話を不審に思いつつ低い声で応答すると、電話口は年増の女性だった。

「もしもし。燈里ちゃんのお知り合い?」

嫌な予感がした。

全て夢じゃなかったのか。

陽太の肉体が死に、本来の僕に返ってきたのか。

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑨ ⑩

リリとロロ 「アザンの森」 ⑨ ⑩

どんどんと不穏な空気になっていくね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

暗い。
中身は大人でもやはりこういった気味の悪い場所は怖い。

ただそれ以上に彼女は父親を手に掛けたという事実ものしかかり、恐怖心は計り知れないものだろう。

二人とも滴るほど汗をかいているが、ただ一度彼女を抱きしめた。

「大丈夫。何とかする。」

何とかってどうするんだ。
僕にもわからない。

ただ彼女の返答は

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑦ ⑧

リリとロロ 「アザンの森」 ⑦ ⑧

今回結構ヘヴィーで露骨な表現があるので注意

「遅えと思ったら、さっきのボウズ連れ込んで油売ってたのか!」

勢いよくドアを引っ張り、燈里の頭部を殴った。

「何だお前。このガキのことが好きなのか。母親に似てお前もサカってんな!」

「そういうんじゃ」

「そもそも誰だよ、この小便臭いガキは。」

「私も初めて会ったから」

「一目惚れってやつか!」

「だから…」

「ああ!ちょうどいいな!お前

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑤ ⑥

リリとロロ 「アザンの森」 ⑤ ⑥

今回ドキドキするところです。

わざわざ首を突っ込む話でもないのに、不思議と言葉になって出てしまった。

これはお持ち帰りの常套句とも取れるが、この歳で言うと全く別の意味になった。

いや、現実世界だと完全に誘拐でお縄だ。

少しの沈黙の後、ほころびかけた顔をキュッと締め上げて

「気安く呼ばないでよ。」

と、つっけんどんな返答をくれた。

不思議と彼女の表情には数滴の期待と不安が入り混じってい

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リリとロロ 「アザンの森」 ③ ④

リリとロロ 「アザンの森」 ③ ④

面白くなってきたとこです。

「はい。燈里ちゃんと僕、どうぞ。」

この店のママらしき人物が整えた椅子の前にオレンジジュースとポッキーを少し置いてくれた。

「おい!そんなガキに俺は一銭も払わねえぞ!」

「いやあねえ、これは私からの奢りよ。

僕?名前は?お母さんはどこにいるの?」

そういえばそうだ。

この女性も僕の名を知らないし、一見である可能性は高い。

あのクソ親父の子種とは思いたくも

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リリとロロ 「アザンの森」 ① ②

リリとロロ 「アザンの森」 ① ②

長編かつサスペンス初挑戦なので暖かい目で見守ってください。

先に言っておきますがグロテスクな表現、著しく倫理観の欠如した表現が含まれますので苦手な方は頑張ってください。

そして、あまりに長いので2話ごと掲載します。
普段の倍以上の文量なので価格はちょっと上がってて堪忍す。
「お昼休憩に読める600文字程度」を意識してきましたが、内容が内容なのでお昼に読む人はいないですね。

この物語はフィクシ

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