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マー君
2024年4月22日 17:12
どうしても大人にはなれそうもなかった。自分では努力してみた。でも、どんなに頑張っても、大人にはなれなかった。だから、大人になれないので、せめて大人のふりをしようと考えた。大人のふりをしてみて、初めてわかった。みんなも、大人のふりをしているんだ。大人のふりをしてみたら、大人のふりをした人が、あたかも大人のように接してくれた。だから、大人のように礼を言ってみた。やがて、大人のように就職
2023年9月15日 17:56
どうして理由など尋ねるのですか。いつも理由を尋ねるのですか。涙を流すのに、理由がいりますか。嘘をつくのに、理由がいりますか。夢を見るのに、理由がいりますか。追いかけるのに、理由がいりますか。あきらめるのに、理由がいりますか。忘れ去るのに、理由がいりますか。後悔するのに、理由がいりますか。理由、理由、理由。あなたと出会うのに理由がいりますか。それとも、あなたが答えてくれ
2023年6月29日 17:10
ある日少女は町に行き、白い詩集を買いました。小さなページの小さな言葉。今は寝息を立てている、生まれたばかりの言葉たち。いつか愛しいその人に、優しく優しく語るはず。いつか優しいその人を、愛しく愛しく包むはず。その日を夢見て眠ります。詩集を抱いて眠ります。目覚めた今日は昨日と同じ。夢見た明日も変わらない。変わらないなら眠ること。目覚めるよりも眠ること。白い詩集を胸に抱き、その日
2022年10月13日 18:08
幸福が欲しいと君は言う幸福を手に入れたいと君は願う君の幸福は何階建て?君の幸福は何角形?君の幸福は何平方メートル?君の幸福は時速何キロ?君の幸福は何人分?君の幸福は何年分?君の幸福は何色?君の幸福は何味?君の幸福は何キロカロリー?君の幸福は何キログラム?そうじゃないきっとそうじゃないそれは買ってきたりもらったりほらっと手のひらにのせてみたり引き出しから取り
2022年7月26日 17:48
月の姉妹はお年頃。月の姉妹は罪作り。妹は瞳で男を誘い、姉は美貌で踏みにじる。妹は言葉で男を騙し、姉は視線でとどめ刺す。夜な夜な続く酒宴でさえも、時々余る夜の名残り。殺めた男を懐かしみ、不意に流れるその涙。月の涙にご用心。月夜の晩のひとしずく。月夜の晩に行ったのさ。君のお家に行ったのさ。月の光に身を隠し、そっとたたずむ窓の下。聞こえてくるのは恋の歌。あいつが歌う恋
2022年6月3日 17:29
駅の名前は変わっていない。この町だ。列車を降りる。背後でドアが閉まる。歩き出した。襲ってくるもの。舞台じかけのように動きだした時が、ゴトリと音を立てて止まる。高架になった駅ビルが言う。夢破れたか。路地だった大通りが言う。みんな変わったよ。新しいショッピングモールが見下ろしている。みんなを捨てたというのは、お前か。花屋はファーストフード店に。あたしのせいじゃない。擦り切
2022年1月23日 19:02
空を見上げる。あちらでも、こちらでも、みんな空を見上げる。小さな広場で。両手を広げて、受け止めている。たかい空から舞い落ちてくる言葉を。悲しい言葉。嬉しい言葉。寂しい言葉。楽しい言葉。大きな言葉。小さな言葉。明るい言葉。暗い言葉。朝の言葉。夜の言葉。たくましい言葉。頼りなげな言葉。大人の言葉。子供の言葉。明日の言葉。昨
2021年12月12日 18:41
明日は明日の風が吹く昨日誰かの胸に不安を掻き立てた風誰かの頬の涙を乾かした風誰かの夢を粉々にした風地球の裏側の少女のため息少年の手のひらに握りしめられた風誰かと誰かの恋の炎を燃え上がらせた風そして吹き消した風誰かに道を踏み誤らせた風はるか昔、決闘の場に舞い上がった一陣の風誰かが誰かに何かを託した風人類の初めてのささやきを運ぶ風無人島の洞窟に置き去りにされた風その重さに耐え