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読書感想

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自身で書いた読書感想についてのnoteをまとめました。 小説・エッセイ・ビジネス本とノンジャンルです。
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記事一覧

【読書感想】『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤)

【読書感想】『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤)

池井戸潤さんの最新長編作『俺たちの箱根駅伝』。
一人の箱根駅伝ファンとして、刊行を心待ちにしていた。

関東学生連合チームとテレビ局の二つの柱からなる物語構成。
その臨場感やリアリティに瞬く間に魅了されてしまった。

だからこそ、読書感想記を書いてみることにした......のだが、感想記というよりは、実際の箱根駅伝も面白いよ!という箱根駅伝推しの記事となってしまった。
その点をご理解の上、読んでい

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【読書感想】『シャーロックホームズの凱旋』(森見登美彦)

【読書感想】『シャーロックホームズの凱旋』(森見登美彦)

そこまで森見登美彦作品に触れてきたわけじゃないが、整理として。

森見作品は
①ダメな大学生が妖の京都で七転八倒する青春作品
②虚実入り乱れる世界観で読者の頭を溶けさせる作品
のパターンが多いかと思っていたけども、今回は圧倒的後者だった。

「シャーロックホームズ」とか作品名に入るくらいだから、原作を絡めてくる換骨奪胎な作品にするんだろうと思っていたら案の定。
(丁寧すぎるくらいに原作を拾っていて

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【読書感想】『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク)

【読書感想】『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク)

最近、本棚に光文社古典新訳文庫の本が並ぶ頻度が増えている。

古典をきちんと読んでおきたいという気持ちがあるからだが、どうも岩波の訳文や文章が受け付けないことも多く、何かいい方法はないかと辿り着いたのが、光文社古典新訳文庫だった。

今回読んだのは、アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』

クラークといえば、SFの原点。
ただ、今作は楽しむ以上に、考えさせられた。

以下、ネタバレ含むのでご理

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2023年の読書をPowerPointのスライドにまとめてみる

2023年の読書をPowerPointのスライドにまとめてみる

早いものでもう12月。
年末の慌しさが感じられる時期になったこともあり、今年の読書振り返りをしたい。

2023年は読書の記録をきちんとつけ、整理していくことを目指していたこともあり、今年読んだ本の棚卸しをしてみる。

手当たり次第に本を読んでいくのではなく、たまには本との向き合い方を振り返ってみるのも大事だろう。

スライドつくってみた私は、『読書メーター』というアプリのほかに、Excel上で書

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あなたにとっての「名著」とは。

あなたにとっての「名著」とは。

あなたにとっての「名著」を教えてください。

この質問をされたら、たぶん思考の沼に落ちる。
底なしの沼に。

つい最近、本屋で手にしたリーフレット。
NHK番組「100分de名著」の特別エッセイ。
内容はとても面白く、無料なのでぜひ読んでもらいたいと思うと同時に、冒頭の質問を自分に問いただしたくなったという状況である。

幼少期の「名著」幼少期の頃に読み、今の自分の幹となった作品を挙げるならば、ハ

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10年ぶりくらいに辞典を買った話

10年ぶりくらいに辞典を買った話

半年くらい前に本屋で辞典を買った。紙の。
紙の辞典や辞書なんて買うのは高校生の時ぶりだと思う。

前もって買おうと決めていたわけでもなく、ただタイトル見て面白そうだと思った。
それがこれ。
『類語ニュアンス語辞典』

いろんな言葉を知っている人になりたい。
と、その時の熱に浮かされ買ってみたが、読んでみると意外と面白い。

たとえば。
とある特定の事象を言葉で言い表したいときに、どんな言葉を使うか

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桃を煮るひと/くどうれいん

桃を煮るひと/くどうれいん

この頃、自分の食べ物に対するスタンスが雑になっている気がする。
というよりも執着がそこまでないのではないか、と。

自分でご飯を作るのは好きだけども、何を作ろうか考えるのを諦めていることが多い。
最近のご飯を振り返ってみても、夜は奥さんが作ってくれる機会が多かったり、昼は外食に行ったり。

外食が悪いというつもりもないけれど、ちゃんとしてた頃は、気候や当日の体調も踏まえて食べログやGoogle m

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2022年の読書振り返り

2022年の読書振り返り

今日で2022年も最後の日。
今年、自分が注力したことの一つが読書。
4月頃から読書ノートでの記録を、6月頃からアプリでの読書管理を始めた。

せっかく記録をつけ始めたので、今年特に心に残った本をテーマごとに振り返ることとしたい。

色褪せない名作編『月と6ペンス』(サマセット・モーム)

因習的なロンドンでの生活から、自身の本来あるべき姿を求めて、原始的で官能的なタヒチへと生きる場を探し続けるス

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【読書感想】春を背負って(笹本稜平)

【読書感想】春を背負って(笹本稜平)

いきなり個人的な話ですが、今年の夏はよく登山をしました。
近隣の山も行けば、北アルプスや南アルプスまで。
日帰りすることもあれば、山小屋やテント泊することも。

なぜ山に登るのか?と言われても、ジョージ・マロリーのように「そこに山があるから」と、かっこよく言えるわけもなく、ただ「非日常」の中に浸りたいから、というのが一番の理由です。

同じく、別の世界に入り込むことができるから、という理由で読書(

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【読書感想】SNS上で見られる不思議な論調について思うこと

【読書感想】SNS上で見られる不思議な論調について思うこと

はじめに(陸上観戦という趣味)陸上競技(とりわけ、駅伝や長距離種目)についてのライトなファンを自称している。

ファンを自称するからには、記録会や大会での順位やタイムは当然頭に叩き込むし、その大会が各チーム・選手にとってどんな位置づけなのかというのも理解しようと努める。

そうした記録会や大会のエントリーやリザルトを把握するときに、大いに役立つのがSNSでの情報収集となる。

近頃も、残り1カ月近

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【読書紹介】「島」が舞台の作品たち

【読書紹介】「島」が舞台の作品たち

最近、「島」を舞台とする作品になぜか縁あって、よく手に取っては読んでいます。

似たような本もあれば、唯一無二な作品も多くある印象。

整理もかねて、読んだ本を供養していきます。

無人島に漂着する系作品①蠅の王(ウィリアム・ゴールディング)

②十五少年漂流記(ジュール・ヴェルヌ)

最近、noteに記事をあげた2作品。
どちらの作品も、少年たちが不可抗力によって無人島に漂着するところから物語が

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【読書感想】無人島漂着にまつわる物語(『蠅の王』『十五少年漂流記』から)

【読書感想】無人島漂着にまつわる物語(『蠅の王』『十五少年漂流記』から)

先日、『蠅の王』(ウィリアム・ゴールディング)と『十五少年漂流記』(ジュール・ヴェルヌ)を読みました。

どちらも無人島に漂着した少年たちが救助されるまでの生活や、彼らの心理状態を描いた作品です。

どちらも似たような冒頭でありつつ、その後の展開は恐ろしいほどに異なります。
どうして同じような境遇にも関わらずこうなったのか、を考える良いきっかけとなったので、思うことを書いていきます。

ストー

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ディストピアとユートピアはどう違う?

ディストピアとユートピアはどう違う?


先日、ジョージ・オーウェルの『1984年』を読んだ。
この作品は、SF作品の中でも「ディストピア」や「管理社会」を描いたものとも言われる。

わたしは、こういった作品群が小説・映画・アニメ問わず好きなので、思うことについてnoteにまとめてみることにした。

管理社会って?ざっくりいうと、管理社会は「社会統制によって個人を抑圧することで成立する社会形態」といえる。

ここでいう社会統制は、情

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旅行にまつわるエトセトラ(読書感想文)

旅行にまつわるエトセトラ(読書感想文)

またコロナがやってきた。
旅に出る日が遠くなる。

旅行に気軽に行けなくなった今、わたしは旅行の空想に浸るしかない。

その術は本だ。
読書を通じてまだ訪れていない地にあたかも行ったかのような妄想に耽ることは、コロナ禍でも制限されるものではない。
そして時には、実際の旅に行く以上の感動を与えうるものでもある。

そんな前置きをしたので、ここ数ヶ月読んだ小説やルポを供養していく。

「深夜特急」(沢

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