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あなたにここにいてほしい(詞と、ある物語の断片)

詞と、ある物語の断片です。長編小説(ライトノベル)へのチャレンジ、なのですが、短編小説のように書いてnoteにちょっとずつアップすることにしました。断片がつながった時の物語のタイトルは『猫耳吟遊詩人の子守唄』の予定です。

・ひとつ前のお話→『雪の精霊は銀竜と歌う
・記事の終わりに目次(全話へのリンク)を貼りました。


【詞・物語の断片】あなたにここにいてほしい(650字)

レイミィ:異世界に転生した少女。推定17、18歳。猫耳を持つ”精霊の愛し子”。吟遊詩人楽団バルド・バンドのメンバー。

シルヴィ:銀竜。人の姿を持った精霊。幼かったレイミィを育てた。
ロッカ:雪の精霊。青年の姿をしている。幼かったレイミィを育てた。

+++++

『雪の守り手へ、銀竜が贈った歌』

 春に呼ばれて川となる
 彼らの長い旅のはじまり
 すべての命をあまねく巡る

 やがてふたたび
 雪山へ
 降りてくるのは遥か先
 変わらず静かな山の上
 抱えた熱を冷ますため
 凍って眠る
 ゆりかごの
 あなたはり手
 偉大なる
 この循環を司る者

 あなたにここにいてほしい
 生まれ変わりの彼らのために
 この星で生きる子らのために

 あなたにここにいてほしい
 叶うなら わたしのために
 あなたが好きな わたしのために

+++++

 絵本『雪の精霊は銀竜と歌う』には、最後にもう1ページあった。だいぶ後になってその歌の存在を知ったレイミィは、確信を持って想像する。
 あの隠れ家の本になかったそのページは、きっとロッカが持っているのだろう。ロッカには、専用の部屋はなかった。だからあの、いつも身に着けていた小さな革袋の中、たぶんあそこだ。
 今度会ったらロッカは、どんな曲だったか、教えてくれるだろうか?
 それとも。それは秘密、と言われてしまうかもしれない。
(シルヴィが、自分だけにくれた宝物、だもんね)
 ロッカへのうらやましさが、半分。自分の知らなかった、シルヴィのカケラを見つけたうれしさが、半分。
 レイミィは本を閉じ、元の位置に戻した。
「むかしむかしの、そのむかし。寒くてつめたい、雪の山……」
 覚えている昔話を、口ずさみながら。レイミィは部屋の扉をパタンと閉め、楽団の書庫を後にした。


(あなたにここにいてほしい)了
【2022.8.10.】

++(間奏-2)++
→ 第4話-1『愛し子は祈り、朝を迎える


『猫耳吟遊詩人の子守唄』目次とリンク

#猫耳吟遊詩人の子守唄  ←ジャケ付き更新順一覧です

第1話 プロローグ・REBIRTH (3100字)
第2話-1 眠りのくにの愛し子よ (2600字)
第2話-2 銀竜は歌い、愛し子は眠る (3500字)
第3話 愛し子は七つの祝福を贈られる (6700字)
(間奏-1) 雪の精霊は銀竜と歌う (2100字)
(間奏-2) あなたにここにいてほしい(650字)
第4話-1 愛し子は祈り、朝を迎える(8700字)
第4話-2 誰にも、聴こえないように(6000字)
第5話 卵は嘆き、愛し子は歌う(11500字)
第6話-1 銀竜は問い、愛し子は冀う(7500字)
第6話-2 愛し子は出会い、精霊たちは歌を奏でる(7600字)
第6話-3 樹に咲く花は(7000字)
++++++
第?話 吟遊詩人は宣伝する<前編> (12600字)
第?話 吟遊詩人は宣伝する<後編> (12100字)


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