あなたにここにいてほしい(詞と、ある物語の断片)
【詞・物語の断片】あなたにここにいてほしい(650字)
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『雪の守り手へ、銀竜が贈った歌』
春に呼ばれて川となる
彼らの長い旅のはじまり
すべての命をあまねく巡る
やがてふたたび
雪山へ
降りてくるのは遥か先
変わらず静かな山の上
抱えた熱を冷ますため
凍って眠る
ゆりかごの
あなたは守り手
偉大なる
この循環を司る者
あなたにここにいてほしい
生まれ変わりの彼らのために
この星で生きる子らのために
あなたにここにいてほしい
叶うなら わたしのために
あなたが好きな わたしのために
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絵本『雪の精霊は銀竜と歌う』には、最後にもう1ページあった。だいぶ後になってその歌の存在を知ったレイミィは、確信を持って想像する。
あの隠れ家の本になかったそのページは、きっとロッカが持っているのだろう。ロッカには、専用の部屋はなかった。だからあの、いつも身に着けていた小さな革袋の中、たぶんあそこだ。
今度会ったらロッカは、どんな曲だったか、教えてくれるだろうか?
それとも。それは秘密、と言われてしまうかもしれない。
(シルヴィが、自分だけにくれた宝物、だもんね)
ロッカへのうらやましさが、半分。自分の知らなかった、シルヴィのカケラを見つけたうれしさが、半分。
レイミィは本を閉じ、元の位置に戻した。
「むかしむかしの、そのむかし。寒くてつめたい、雪の山……」
覚えている昔話を、口ずさみながら。レイミィは部屋の扉をパタンと閉め、楽団の書庫を後にした。
(あなたにここにいてほしい)了
【2022.8.10.】
++(間奏-2)++
→ 第4話-1『愛し子は祈り、朝を迎える』
『猫耳吟遊詩人の子守唄』目次とリンク
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