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【心理学】権力を持つと人は自分を見失いがちになる

優秀なリーダーはメタ認知力が高いと言う事が分かっています。

メタ認知力とは「自分自身を俯瞰して、客観的に観察する力」のことです。優秀なリーダーはこのメタ認知力が高いと言う事が分かっています。

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メタ認知について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓


そしてなんと、組織心理学者のTasha Eurichが約5000人の参加者を対象に行った研究では、80〜90%の人の「自分はこういう人間である」っていうセルフイメージは間違えているという事が分かっています。

要するに80~90%の人のメタ認知力は、自分の事を正確に理解できない程低いって事なんですよね。



さてというわけで今日は前回に引き続き人の認知力が下がる原因についてお話ししていこうと思うのですが、ここで約80〜90%の人々が無意識にメタ認知力を下げる原因をおさらいしておくと、大きく分けてそれは3つありましたよね。

何かと言うと

・経験

・権力

・内省

でしたよね。昨日はこの中の「経験」についてお話ししてきたので、今日はその続きについてお話ししていこうかなと思います。

↓昨日の記事



権力で人は本当の自分を見失う


というわけで2つ目の人々が自己評価を間違えてしまう原因は「権力」です。


どういうことかというと例えば会社の中で上位の役職についていたり、立場が大勢の人より上だったりすると、人はメタ認知力が下がってしまうんですよね。


それは昨日の記事でもお話しした2007年にコロンビア大学が行った実験による結果です。

その実験からは

527の組織の3,217人のマネージャー(業務を管理・統括する責任者)とそのマルチソース評価者(複数の人から同じ条件で評価をしてもらう事)からデータを収集した結果、経験がより豊富なマネージャーは経験の浅いマネージャーよりも、リーダーシップ能力に関する自己評価の精度が低かった


という事がわかっていますよ〜って事を昨日の記事でもお話ししたのですが、この実験から何がわかるのかというと、立場が上で権力がある人はメタ認知力が低いって事なんですよね。


そして実はこの実験ではもう1つわかっている事があって、経験がより豊富なリーダー(マネージャー)は経験の浅いリーダー(マネージャー)よりも自分を過大評価していた事も同時にわかっているんですよね。

この経験豊富や上位のリーダーまたはマネージャーの多くが自身を過大評価していた傾向にある現象は、研究者が測定した感情面の自己認識・正確な自己評価・共感・信頼性・リーダーとしての手腕などを含んだ20項目の能力のうち19項目で観察されています。


例えば読者の皆さんもまだ仕事を始めたてだった頃や目上の存在がいた時って

「この人先週は〇〇って言ってたのに今日は△△って言ってたよ、どっちやねん。」

みたいな経験した事がある方は多いと思います。いましたよね、そういう過去の発言をすぐに忘れちゃって1週間以内に自分で矛盾を生み出してしまう迷惑な上司とか先輩。


でも自分がその人より下の立場で何をされたかはこうやって思い出す事が出来るのですが、その当人である上司や先輩に限ってそういう事って全く記憶にないんですよ。なぜかというと無意識の行為だから。もし今の時点で仕事で上司や先輩がいらっしゃる方からすれば「ほんまにに勘弁してや」って感じですよね(笑)


でもね、いざ自分が上司になったり先輩になったりすると80~90%の人ってそういう上司達先輩達と同じような言動をとって、同じような事を自分の部下達後輩達に思わせているんですよ、ってのがこのコロンビア大学の研究でわかった事です。


いやほんと困っちゃいますね〜(笑)

「権力に溺れる人間は良くない」

みたいなことって、世間でもよく言われているしそれを美徳だと感じる人って結構日本でも多いと思うのですが、大体の人が「権力」という大海原に溺れてしまっているのですからね。


じゃあなぜ人は「権力」を持つとメタ認知力が低くなるのかというと、考えられる原因は2つあります。



✔️人が権力に溺れる理由


1つ目が、上級リーダーはその立場の高さゆえに率直な意見をくれる自分より上位の存在がそもそも少ないからです。


・上級リーダーの間違いを指摘される機会の少なさがメタ認知力を下げる

まあこれって協調性が大好きな日本ではよくある話だと思うのですが、例えばその会社の社長が朝礼とかで

「みんな!今日からはプロダクティビティ(生産性)をアップさせるためにスタンディングデスク(立ち机)をイントロデュース(導入)しようと思う!」

みたいな事を言ったとしますよ。

まあこの人が何言ってるのかは全くわからないじゃないですか。いますよねこうやって、日本語にマイナーな横文字を入れて理解できない言葉を話してくる人。


ただそこでね

「え、プロダクティビティ?スタンディングデスク?イントロデュース?って何ですか?多分みんな理解できてないと思うので理解できる言葉でお願いします。」

なんて下っ端の人間が言おうものなら100歩譲って理解のある社長がその発言を許したとしても、その周りの役員の人達が黙ってないですよね。


こういう、例え発言が間違えていても自分より目上の人の間違えを指摘するのは無礼っていう謎の文化が日本にはあるじゃないですか。

そしてこれは日本だけではなく世界にも多かれ少なかれ見られる現象で、こういう文化があると、上の立場の人って上の立場になるほど間違いを指摘されなくなるんですよね。

だから結果的に肯定ばかりされるようになった権力者は、メタ認知力が下がってしまうと言うのが、一つ目の原因です。


2つ目にリーダーが権力を行使すればするほど、自分のキャリアを損なうことを恐れて他の者は当人に建設的なフィードバックを伝えたがらなくなる事が2つ目の原因だと考えられています。

まあこれは例えば、良くしてくれている取引先には態度よく接しますよね。

これはなぜかというと、無礼な事をして「取引やめまーす」って言われたら、終わりだからです。


だからそういう無礼な事がないように、権力が有る者に対して人は、建設的なフィードバックをする事をやめてしまうのです。


ただ、これは僕の体感なのですが、優秀なリーダーは部下からの本音を欲している人が多いです。ただ、その邪魔をするのがそのリーダーの周りの人間や、2つ目の原因のような、言う側の勝手な忖度のケースもあります。



権力を持つと人は自分を見失っていく


という感じで2つの原因が挙げられるのですが南カリフォルニア大学の経営学教授のジェームズ・オトゥールさんによれば、こういう原因から人は自分の権力が大きくなるにつれ人の話を聞く耳を持たなくなっていく事がわかっています。


なぜかというと、上級リーダーは「自分は部下よりも多くを知っている」と考え、そして部下や後輩が上級リーダーに意見を求めるとその分の代償として権力が生じるという認識が部下や後輩にあるからです。

そして結果的にそれが自分を間違えて過剰評価する原因になり、正しい自己評価をする、メタ認知力を失う原因になるのです。

南カリフォルニア大学の経営学教授のジェームズ・オトゥールさんの意見↓

https://www.scu.edu/ethics/focus-areas/business-ethics/resources/speaking-truth-to-power-the-role-of-the-executive/


と言う感じで、人は権力を手にするとメタ認知力が下がってしまう事が分かっているのですが、どうすればそうならないように対策できるのかというと



✔︎どうすれば人は権力に溺れなくなるのか


ではどうすれば、自分が権力を持っても正しい自己評価をするためにこれを改善できるのかというと、自分も部下や後輩に厳しいフィードバックを求める事です。

例えば自分の部下に、自分のアイディアを厳しく精査してもらうとか、あえて自分の反対意見を言ってもらうとか、色々やりようはありますよね。


これって世間的には「なんとなく良い」ってわかっている人も多いと思うのですが、このジェームズ・オトゥールさんによると部下や後輩など自分より目下の人間には、権力がある人への発言を怖がるのは歴史的にも変わってなくて、ここってどうしても生物的な本能が働くのでまずは上の人が能動的に改善していかなければこういう負の構造は変わらないという事がわかっているんですよね。


リーダー的存在が下の人間にも厳しいフェイードバックを求めることによって、例え人は権力を持って自己評価を間違えたとしてもフィードバックを貰えるたびに「あ、こっちの方が確かに正しいな」って自己評価を正しい方向に持っていけるようになり、結果的にその行動はメタ認知力を上げるんですよね。



部下にフィードバックを求める上司は周りからの評価も高い


そしてこれは副産物として捉えていただいても構いませんが、2つのリーダシップ開発会社NovationsとZengerFolkman の創設者であるジョセフ・フォークマンさんが持つ約5万人の大規模なリーダーの360度評価のデータでは、リーダーシップ能力において全員から満遍なく非常に高い評価を受けたリーダーは、上司・同僚・部下・役員などなど多数の役職や立場の人からの厳しいフィードバックを頻繁に求めていた事がわかっています。

まあだからいろんな人に自分の厳しいフィードバックを求める事は、自己評価の正確性をあげる面においても、自分の身の周りの人からの評価を上げる面からしてもとてもメリットが多いのです。



部下にも意見を聞く事が大切


ただここで注意しなければならないのが、確かに周りの人に厳しいフィードバックを求める事はメリットが多いのですが、周りのフィードバックは全て必ず正しいのかというとそうではないという事です。

例えば自分が会社経営をしていて

「1+1=2だと僕は思うんだけど、君はこの意見についてどう思う?」

って周りの人に厳しいフィードバックを求めるとしますよね。すると周りの人は

「いやいや社長、僕は1+1=3だと思いますよ?」

って多くの人がフィードバックをくれたので

「ん?まあみんなが言うからそうか!1+1=3だ!」

ってしてたら会社はいつか必ず破綻します。


人は感情で動いたとしても会社は感情で動かないように、人間って生き物なので間違えるものなんですよね。

それは何も今回スポットライトを当てて話してきた「権力がある人」だけに限った話ではなく、同期も部下も後輩も自分も全員間違える事はあるのです。

だからそれを受け入れた上で客観的に正しい選択をする、と言う事は周りの人へ厳しいフィードバックを求める事の大前提です。


と言う感じで人のメタ認知力が下がる原因その2の「権力」について本日はお話をしてきました。


まあただ、本当に権力に溺れてしまったりした人とか、如何しようも無いぐらい頭が悪い人って、こういう今日僕がお話してきた事実すらも受け入れられないと思うので、そういう人達はここまで文章を読んでいないと思うんですよね。

逆説的に、ここまでまひろ(著者)の記事を読んでくださった方々の中に例え「権力に溺れてるかも」って言う自覚からこの記事を読んでくださった方がいたとしても、ここまでの話を理解できたと言う事はもっとこれから成長できる幅があると言う事だと僕は思うので、ぜひ実践してみてくださいね。


と言う事で、明日は人々のメタ認知力を下げる3つ目の「内省」についてお話していこうと思いますので、ぜひご覧ください。



それでは、最後まで読んでくださりありがとうございました。

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