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逆境の心理学|ヴィクトール・フランクル「夜と霧」「ロゴセラピー」その背景

どうも!カリスマCST講師こと大先生マダオです!
今回はどん底に堕ちている時に救われた、ヴィクトール・フランクル「夜と霧」について書いていきます。

「夜と霧」は、ナチスの強制収容所での限界状況から生還したヴィクトール・フランクルにより「人生に意味は必ずある」という強いメッセージを込めて書かれた体験記です。

人は日々に疲れて立ち止まりそうになったとき、どのように希望を持てば良いのでしょうか?

人生につまずき、辛い日々が続くとき、どのように生きる力を持てば良いのでしょうか?
絶望を感じる状況になると人は、「今この状況にどんな意味があるというのだ」と、自分のおかれた辛い状況について疑問を投げかけ、人生の意味を求めるものです。


もし、「それでも生きる意味がある」と思えるのであれば、人は「死にたい」と思う状況を乗り越えることができるのです。

ヴィクトール・フランクルの人物像とその心理学

ヴィクトール・フランクル(1905〜1997年)はオーストリア出身の精神科医であり心理学者です。


「ロゴセラピー」はヴィクトール・フランクルが生み出した心理学であり、辛い状況でどのように考えるかについて、重きを置いて説いています。

“決して忘れてはならないのは、希望のない状況にたとえその犠牲者として向き合おうが、また考えようのない運命に直面しようが、そんな人生の中でも、人は意味を見出す、ということである” – 「生きる意味を求めて」

人に生きる力を与えるフランクルの心理学は、「逆境の心理学」や「絶望に効く心理学」とも呼ばれています。

「夜と霧」とは

父や母、妻までも収容所で失ったヴィクトール・フランクルは、それでもまた再婚して新しい家族を作り、精神科医として多くの人の心を癒しました。


「夜と霧」は邦訳名であり、もともと「ある心理学者の強制収容所体験」として1947年に出版されました。出版以来、40ヶ国語に翻訳され、ベストセラー・ロングセラーとなっています。アメリカ議会図書館の調査、

「私の人生に最も影響を与えた本」ではベスト10入りをするほど、多くの人に力を与えてきたのです。

✔人生に絶望した人は生き残ることができなかった
ヴィクトール・フランクルは、アウシュビッツ強制収容所の数少ない生き残りです。
彼の妻や子供は一緒に強制収容所に送られ、他の女性や子供たちと同様にガスや餓えにより死にました。
人間として扱われることがなく、死が日常的なものとなっている状況の中で、彼のように生き残ることは偶然の幸運です。


そのような状況の中で、人生に絶望した人は、生き残ることはできなかったのです。
ヴィクトール・フランクルは、囚人たちが空腹に苦しみ、腹が立っているとき、自己崩壊による犠牲を起こさないためにどうするべきかを語りました。

“私たちは多くのものを失ったが、それでも失っていないものがある。少なくとも今生きているものは、希望を持つ根拠を持っている。健康や家庭の幸福、家族、職業的能力、財産、地位・・・これらはかけがえのないものではない。再び作り上げることができるのである。私を殺さないものは私を一層強くさせる。”

ヴィクトール・フランクルは、「収容所で生き延びることに意味はない」「苦悩と死は無意味なのではなく、犠牲として、最も強い意味に満ち溢れていたのである」と言います。
人が絶望したとき人生に意味を求めることを間違いとし、生きているものは全て人生に意味を持っているのであるという考え方を聞いた囚人たちは、目に涙をためて感謝を述べたと言います。
囚人たちは、そのすさまじい生活の中で、生きるための「なぜ」を知ろうとし、生活目的を見つけようとします。そして目的がなくなると、自身の存在理由を消してしまうのです。
こうして心の頼りどころがなくなった人は、死んでいくのです。
だからこそ、生きのびるために人生の意味を反転させたのです。

✔過去は現在に差し込んでくる光
このような状況の中で、ヴィクトール・フランクルは愛する妻のことを思い浮かべたのだと言います。
なぜなら過去は、「現在の闇の中に差し込んでくる全ての光と喜びである」と考えたからです。
過去の生活の豊かな体験の中で実現化したものは、奪われることはないのです。
過去は、最も確実な存在であると考えるヴィクトール・フランクルにとって、思い浮かべる妻の存在は生きる希望を与えたのです。

「逆境の心理学」と呼ばれる理由とは?

ヴィクトール・フランクルの心理学は、絶望的な状況に陥った人たちに生きる希望を与えます。それがこの心理学が「逆境の心理学」と呼ばれる理由です。
人は、自分ではどうしようも無い状況に苦しむことがあります。たとえばリストラされる、詐欺にあう、自然災害により大切な人を失う、会社が倒産するなど、自分の意思とは違う大きな力により人生を狂わされてしまう場合です。
そんなとき人は、「これからの人生に何も期待できない。自分の人生に意味がない」と考えてしまいがちです。
しかしこれは、「人間が人生に期待をしている」からこその絶望であるとヴィクトール・フランクルは言います。
一方、「人生は常に人に期待をしている」という考え方をすることで、「どんなときにも意味がある」と、自分の人生を肯定するのがヴィクトール・フランクルの心理学です。
苦しく悲しいときこそ、人生から何かを期待されていることを知れば、「死にたい」という気持ちはなくなり、「生きる力」が湧いてくるのです。

“ここで必要なのは生命の意味についての問いの観点変更なのである。すなわち人生からわれわれが何を期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生がわれわれから何を期待しているかが問題なのである。そのことをわれわれは学ばなければならないのである。”—「夜と霧」

ロゴセラピーとは?人は人生の意味を発見していくものである

ロゴセラピーとは、「人生の意味」や「生きる意味」に対する考え方を変化させながら心理的な支援をすることを意味します。
まず、ヴィクトール・フランクルは、「人生に意味があるか無いかに悩む必要はない」と言います。
人は辛い人生を味わうと、「こんな人生に意味があるのか」と問います。しかし、その問いは誰に向けて疑問を投げかけているのでしょうか?自分自身、自分の人生、運命に問いかけても、超越した答えが返ってくることは難しいです。
人は人生を、意味のあるものにしたいと考えます。これは人が「意味」を求める存在であるからです。人生を意味で満たそうとして、意味があると感じたときに、幸せを感じるのです。
これをヴィクトール・フランクルは「意味への意思(will to meaning )」と呼びました。
ヴィクトール・フランクルは、人が生きる意味があるかを問うことは始めから間違っていると言います。なぜなら、人生こそが問う側であり、人間がその問いに答えていかないといけない側だからです。
これはつまり、人生には意味がないのではなく、人はその意味を発見していかないといけないということです。人生には常に意味が用意されているのです。
このように考える「ロゴセラピー」の主要な概念が4つ存在します。
1. 意味への意思
人は人生を意味あるものにしたいと考えるものである、という部分に着目します。これを人間の根本的であり極めて強い心の動きであると認識します。

2. 創造価値
人は自身の行動を通してこの世界に価値を創造します。
その価値は普段なかなか感じることができません。しかし、ひとつひとつの事象をじっくりと考えることで、人生に意味が満ちていきます。

3. 体験価値
人は体験を通して人生に意味を見出します。
世界に隠されている真善美に触れることで、人は感動し、その感動体験により「人生に意味がある」と感じやすいです。
真善美とは哲学用語で、真を「本物で正しく役立つもの」善を「真を追求することで世のため人のためになるもの」美を「善を行うものは尊く美しい」という考え方のことです。

4. 態度価値
人は人生で辛い出来事に出会います。そのようなときに、どのような態度をとるかによって、人生の意味が変わります。態度によって幸せを感じるので、どんなときでも人は、人生を意味で満たすことができるのです。

ヴィクトール・フランクルの人生における意味

ヴィクトール・フランクルは、人が生きることに意味があると信じていたからこそ、自分の生を全うし、亡命した後もこうして人々の心を救い続けているのではないでしょうか。
ヴィクトール・フランク自身にも、強制収容所で受けたトラウマが残っていたのではないかと言われています。晩年になってもまだ、強制収容所の夢を見ることがあると言っていたそうです。自身も想像を絶する辛い思いをしたにも関わらず、彼は多くの人に生きる希望を与えてきました。
それが、彼の生きた意味であり、彼は自分の人生の意味を見つけていたのです。

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