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はじめに&目次

はじめに

 最近の若者は、読解力が低く、ろくな文章が書けない、という俗説に対するささやかな反証を集めてみました。
 いや、ちがうなあ。
 いまの大学生が書いた、ぼくにとっておもしろい作品を集めてみました、というほうが近いような気がします。学生の提出した課題を読んで、いつも驚くのは、ぼくが大学生のときに書いたものよりはるかにおもしろいものを書いてくる学生がいるということです。
 たとえば、大学で「創作表現論」を教えています。授業の内容は、明治時代の日本語改革について話したあと、ヨーロッパに移って、古代ギリシアから現代までの文学を概観するという形です。なぜ、いきなり明治から始めるのか、なぜヨーロッパ中心なのか、などについては省略しますが、まあ、こんな感じで1年間、話すことにしています。といっても文学論でもなければ、通史でもなく、テーマ、テーマに関しての雑学的知識の連想ゲームみたいな感じです。話もあっちにいったり、こっちにきたりしながら、思いつきでいろんな話が飛び出します。
 授業をどれくらい覚えているかについては毎週、小テストがあるのですが、学生はそれにプラス、毎週、課題を提出することになっています。奇数回は、そのときどきの講義の内容に沿ったテーマにそったものを、偶数回は古代ギリシアから20世紀の文学までのなかから1作品ずつ読んで、それにからめて何か書いて提出しなくてはならないのです。ただし、感想文、批評、ショートショート、短編小説、長編小説、詩歌、なんでもOK。分量は1200字以上(ただし、詩歌の場合は別)。
 今年度はコロナ対策でオンライン授業になったこともあり、受講生が50人くらいいて、1回目の課題を提出した学生が48人。初回は課題を2つ出したため、96の課題を読むことになりました。なかには6000字くらい書いてくる学生もいて、読むのが大変でした。しかしうれしいのは、いくつか「!」と思うものがあったことです。
 このとき、ふと、面白い作品をネットで公開したらどうだろうと思いついたわけです。
 それから、この授業をしていてほぼ毎年、学生から「先生はどんな作品に高い評価をつけるのか知りたい」という意見をもらうのですが、それができない。というのは、ぼくがおもしろいと思った作品を書いた学生に、プリントしてみんなに配っていいかとたずねると、ほとんど断られるからです。
 ところが今回、いい作品を書いてくれた学生に、ネットに載せてもいいかたずねると、みんなOKしてくれました。
 というわけで、こんな「文集」ができました。これで、授業をとっている学生にも、金原はこういう作品が好きなのだ、ということをわかってもらえるようになったわけです。ただ、ひと言断っておくと、これらはすべて毎週の課題として提出されたもので、ぼくはほとんど添削していません。誤字脱字もあれば、読みづらいところもあります。学生が書いた生の作品として読んでください。
 というわけで、まず1回目から6回目までの課題のなかから楽しく読んだ作品をテーマごとに並べてみました。もちろん、本人の承諾をもらってあります。また、蛇足ながら、簡単なコメントも別のページにまとめて添えておきます。

※noteの性質上、新しいものが上にくるようになっているのですが、1から読むことをお勧めします。講評もその順番になっているので。

「大学生が書いてみた」目次

はじめに&目次(※この記事です)
1「はんどたおる」(立川志の輔)
2『オイディプス王』
3『怪談牡丹灯籠』
4『神曲 地獄編』
5「日本語が英語になっていたら」
6『アーサー王の死』『アーサー王物語』
番外編
1回目から6回目の感想
7「縦と横」
8『ドン・キホーテ』
9「絵本」か「コミック」
10『マクベス』
11『コロナの時代のわたしたち』
12『リア王』
別冊 魚取ゆき 全課題作品
7回目から12回目の感想
堀尾奏 課題作品
「天界にて」 沼上晴省
「透明少年少女」 菊川華
「白と黒のコントラスト」 嵯峨明
「彼の横顔」 嵯峨明
「寡男」 菊川華
「シリーズものの漫画が苦手だ。」 石川日向子
「世界を創る音が聞こえる」 菊川華
小説『光』 金子実央
柴ちゃん
「歪なリンゴ」 落合健太郎
「個人の尊重の重要視による迷い」 青木桃
「におい」  岩東喜大
「私とたけちゃん」 嵯峨明
「ガラスのハート」 ミャマ
「大きな怪我には気を付けろ」 沼上晴省
「久部くんと魔女」 菊川華
「本の間」  落合健太郎
「悲劇喜劇判定」 Pana
「確かにそこにいた」 落合健太郎
「スカートと海」 菊川華
「ハードはソフトを規定するか」 宮本美来
「ハードはソフトを規定するか ~その2~」 小林千尋
「劇場で彼の言葉に背を押され ~ミニシアター雑記~」 吉澤颯太
「ロシア語初級」 落合健太郎
吉澤颯太(短歌、詩)
「出会いの珈琲屋さん」 大場愛紘
「果実の工程」 村上遥香
「旅立ちの日に?」 村上遥香

「私のバスタイム」 嵯峨明
「サーミ語」と出会った話 安納令奈
「T・トラバートくんのこと」 安納令奈

|  1「はんどたおる」(立川志の輔)