金原瑞人
2021年前期の作品と感想をまとめました。
2022年後期の作品と感想をまとめました。
2022年前期の作品と感想をまとめました。
2021年後期の作品と感想をまとめました。
2020年後期の作品と感想をまとめました。
はじめに 最近の若者は、読解力が低く、ろくな文章が書けない、という俗説に対するささやかな反証を集めてみました。 いや、ちがうなあ。 いまの大学生が書いた、ぼくにとっておもしろい作品を集めてみました、というほうが近いような気がします。学生の提出した課題を読んで、いつも驚くのは、ぼくが大学生のときに書いたものよりはるかにおもしろいものを書いてくる学生がいるということです。 たとえば、大学で「創作表現論」を教えています。授業の内容は、明治時代の日本語改革について話したあと、ヨ
(以下は2021年6月21日の金原のブログからの転載です) 今日は、創作表現論の秀作、その3。前回と同じく嵯峨明さんの作品。 なんてことない話なのですが、主人公の女の子の気持ちといい、細かい書きこみといい、素晴しい。テーマは谷崎の『春琴抄』を読んで。 「彼の横顔」 嵯峨明 藤岡唯子という存在が邪魔か、と問われたら実は全くもってそんな風に思っていないことに気がついた。明日菜と美紅と恋バナをしていた時のことだ。駅前マックの2階で、部活帰りの汗だくの体操服のまま、私た
(以下は2021年6月19日の金原のブログからの転載です) 前々回に引き続き、創作表現論の秀作です。テーマは同じく「縦と横」 「白と黒のコントラスト」 嵯峨明 昨日の夜に作ったカレーが思ったより美味しくできたことが、深鈴にとってここ最近で一番の喜びだ。短時間で、かつ家にある食材だけで作った肉なしカレーでこんな幸せな気持ちを抱けるとは予想だにしていなかった。恐るべし、カレーである。 「昨日のカレー食べた?どうだった?」 朝起きて、おはようを言うよりも先に隼人に尋ねた。
(以下は2021年6月17日の金原のブログからの転載です) 創作表現論、またいい作品が上がってきたので、ご紹介します。 今回のテーマは「縦と横」です。最近の大学生の文章、どうぞ楽しんでください。 「透明少年少女」 菊川華 俺たちは、学校の屋上で夜空を眺めていた。 「流れ星ってさー、何で横に流れるんだと思う?」 「……考えたことない」 「あーはいはい。ミハル君はそーゆー人でしたぁー」 「じゃあ質問変えまーす」彼女はくるりとその場で回った。 「流れ星が、下に流れてく
(以下は2021年5月27日の金原のブログからの転載です) いきなりですが、「創作表現論I」の⑤回目の課題から、ずば抜けて面白い作品をひとつ。今回の講義は、明治の日本語改革運動の話が中心で、漢字を廃止しよう、ローマ字にしよう、いや、英語にしちゃえば(初代文部大臣、森有礼)などという意見が行き交ったときのことを紹介しつつ、日本語って日本人のアイデンティティを形成するのにひと役買っているんだろうか、などという問題へ。 というわけで、「戦後GHQの指示のもとで、日本語が英語に
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。このページでは2020年後期に堀尾奏さんが書いた作品をまとめました。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 堀尾奏さんの作品集について 金原瑞人 秋学期の創作表現論の秀作集を作ろうと思っているのですが、2月、3月は妙に仕事が立て込んでいて、なかなか取りかかれません。などと言い訳をするうち、もう2021年度の春学期が始まりそうです。 というわけで、意を決して、その作業に取りかかった
7回目の課題は「縦と横」。授業で、文字の縦書きと横書きの話をしたので、それにちなんでの課題でした。 ただ、なぜか、この回は「これ!」という作品が少なく、吉澤颯太さんのがひとつだけでした。このエッセイは、映画が好き、ガス・ヴァン・サント監督が大好き、という気持ちが伝わってくるだけでなく、吉澤さんのこだわりと、視点の面白さがいい形にまとまっています。 8回目の課題は『ドン・キホーテ』。 田中元さんの「ドンキホーテと般若心経」。まず、このタイトルだけでも、おもしろい。しか
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。別冊として、全12回の課題に対して魚取ゆきさんが書いた作品をまとめました。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 1 「はんどたおる1」「はんどたおる2」 (課題:立川志の輔の落語「はんどたおる」) 「はんどたおる1」 会社の後輩から自宅にハンドタオルのセットが届いたのはその日の夕方で、開けたのは翌日の朝9時だった。夜明けからたらふく母乳とミルクのブレンド(内訳はちょうど半々
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第12回のお題は『リア王』です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「ケルベロスと私について」 瀬川大貴 朝、目を覚ますとまたケルベロスが喧嘩していた。私は慌てて仲裁に入る。すると彼女らは互いに顔を見合わせ、威嚇し合い、最終的にそっぽを向く。やはりケルベロスを飼うことは難しい。私の家で飼っているケルベロスの3つの頭の名前はルイーズ、ジョゼット、カミーユで、ルイーズの性格は臆病
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第11回のお題は「コロナの時代のわたしたち」です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「真の賢さ」 倉持知徳 まったく、とんでもない時代に生まれてしまった。ただでさえ生きることは億劫だというのに。私はリノリウムのにおいを嗅ぎながらそう思った。『同業者』は隣のベッドですやすや寝ている。幸せそうに。彼らが心底羨ましい。 「ほーら、ミルクでちゅよー。おいちいでちゅかー」 生き
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第10回のお題は『マクベス』です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「カトマンズからポカラ」 魚取ゆき「ネパール語なんかしゃべれて何になるんだ」とおやじは言った。高校3年生のとき、夏休みの模試の結果をみせたときに言われた言葉だ。 志望校判定欄はこんな感じだった。 西東京外国語大学言語コースネパール語学科 C 東東京外国語大学アジア語学部ネパール語専修
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第9回のお題は「『絵本』か『コミック』」です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「毒林檎を食べた魔女」 ドワーフのスリーピーはじめに 私事だが、最近韓国ドラマにハマっている。絵本と聞いて一番先に思いついたのは、最近観た韓国ドラマで、その中で絵本について触れられていた。というのも、絵本は主人公の話だけで、その周りの人がどう思っていたか、例えばシンデレラに出てくる性格の悪い姉
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第8回のお題は『ドン・キホーテ』です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「ドンキホーテと般若心経」 田村元 ドンキホーテは、自らを騎士と思い込んでいる哀れな男だ。彼は愛馬のロシナンテと共に、巨人(と言っても実際は風車を巨人だと思い込んでいるだけなのだが)を討伐する旅路の道中にいる。 「ヤアヤア、ロシナンテよ。我らがこの巨人討伐を成し遂げた暁には、姫君や我が従者も大いに喜び、私
法政大学の授業「創作表現論」で学生が書いた作品の中から秀作を紹介します。第7回のお題は「縦と横」です。 「創作表現論」についてはこちらのページをご覧ください。 「映画における『縦』と『横』の美学」 吉澤颯太 0.映画における「縦」と「横」 「映画は"フレーミング"の芸術である」 この金言を生み出したのは、紛れもない私自身だ。つまり、映画において画面に収める風景の範囲、すなわち「縦」と「横」の比率(アスペクト比)こそがストーリーに潜む主題を雄弁に物語る、というのが私の
1回目は立川志の輔の落語「はんどたおる」をきいて、それにからめて何か作品を書くという課題でした。 まず最初に、いいなあと思ったのは北川穂高さんの作品です。エッセイ風の掌編なのですが、リサイクルショップに毎日やってくる老人の描写が際立っています。ごく日常的な世界にぽつんと置かれた非日常的な老人がグロテスクに、しかし切なく迫ってきます。そしてお母さんのイアリングのエピソードをへて、最後の部分へ。 西島周佑さんの「はんどたおる」は、サブカル能力を持つ佐久比詩郎を主人公にした作
課題として提出されたわけではないのですが、1回目の講義の内容に対して、「ささやかながら、反論を」というレポートがきて、これがまた優秀だったので、番外編として掲載します。ただし、これはぼくの講義の内容がわからないとつまらないので、そのまえに、1回目の講義を載せておきます。なんだ、こんな軽い講義なのか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その通りです。ただし、対面での講義のときはもっとおもしろい、少なくとも本人はそう信じています。 創作表現論(1回目) 金原瑞人 1 小説