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ソクラテスの弁明

ソクラテスの弁明

若い頃は哲学なんてなんのためにあるのかまったくわかりませんでした。具体的な問題を解決することなく、わかるようなわからんようなことをずっとこねくり回してそれが何になるのさ、とずーっと思っていました。

が、歳を重ねてきて、「遠回りすることで化学反応が起こることがある」ということがわかってきました。
今の経済も、政治も「すぐに出る正解(らしきもの)」ばかりに飛びついた結果、問題はさらに複雑化し、肥大化

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オウンドメディア進化論

オウンドメディア進化論

なかば「転校生」の立場の私は、その話の一つひとつがとても面白かったんですね。何より、従業員が語る商品に対する愛情や思い入れに感動しっぱなしでした。一見するとクールに振舞う従業員たちですが、いざ自身の取り組んでいることを話すとなると、まるでこどものように目をきらきらさせる。その熱量に触れて、入社するまで抱いていた「大企業」の人のイメージがガラリと変わりました。同時にこの話を「外に出さないのはもったい

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カーラのゲーム

カーラのゲーム

東京都知事選が終わった後、選挙戦にからんでこの本が紹介されていた書評から読んでみました。書評で説かれていた一市民が立ち上がる意味、もこの小説の大事な要素です。しかし、私にとっては、やはり、この小説では避けて通れない、戦争、について考えずにはいられませんでした。

これまで私が読んできた戦争の小説は、戦争当事国の視点が主でした。このカーラのゲームは当事国の視点と周辺諸国の政治家の視点、一介の一市民の

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知ってるつもり 無知の科学

知ってるつもり 無知の科学

無知の知。まず知らないということをわかっておかないと知ることはできない、というのをソクラテスはその昔説きました。その言葉を我々はみな知っていますし、意味も理解しています。
いや理解しているつもり、です。でも実際自覚していないだけで、知ってるようで知らないことはたくさんあります。本の中で出て来た事例ですが、たとえば水洗トイレの仕組みを我々は「知っている」か。水で汚物をみな流してしまう、というのはもち

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想定外シナリオと危機管理

想定外シナリオと危機管理

東京電力のクライシス対応を軸に、危機管理で「あってはならない」企業行動が論じられている一冊。

東京電力の事故について、売り上げ利益の確保に偏り過ぎ、本来コストをかけるべき、リスク管理がおざなりになっていた、という主張が繰り返しなされています。そこに異を唱えはしませんが、そうなってしまったのはなぜなのかについてももう少し深堀しないと、そりゃそうだよね、で終わってしまうかなという感想を持ちました。

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世界最高峰の経営教室

世界最高峰の経営教室

マイケルポーター、フィリップコトラー、コリンメイヤーといったまさにタイトル通り世界最高峰の経営学者、その他新進気鋭の経営学者へのインタビューを通じて、最新、最高な経営の在り方を学ぶことができる一冊です。

難しいことをやさしく、やさしことを深く、は井上ひさしの名言ですが、やはり世界最高峰ともなると、小難しい言葉をひねりだすこともなく、言ってる内容は実にシンプル。ともすれば日本の社長だってこれくらい

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パイロットが空から学んだ一番大切なこと

パイロットが空から学んだ一番大切なこと

時に旅行、時に出張。飛行機には年に何度も乗ります。仕事であれ、旅行であれ、飛行機の旅はちょっとだけワクワク感が募る。あと個人的に電車よりも疲れないで移動できる気がしています。飛行機に乗るのが怖いとおっしゃる方もいらっしゃいますけど、私にとって飛行機は恐ろしいものではありません。実際事故確率でいえば自動車よりも相当低いんですから、理屈上は恐ろしがる理由はそうない、といえます。

とはいえ。ケーブルテ

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想定外を想定せよ。失敗学からの提言

想定外を想定せよ。失敗学からの提言

過去の事故の要因分析を通じて、以降の再発防止を考え続けている畑村洋太郎さんの著書。

私が一番印象深かったのはJALの事故機を社内に保存してある、という事例。こうしたものを残しておくことは、事故の悲惨さを伝える、というもっともらしいきれいな言葉で語られますが、言葉で伝えるよりも、生々しい事実で視覚で訴えられた方が、人の記憶に残るし、財産になる。動態保存はそういう意味でも意味があるというところでした

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未来実現マーケティング

未来実現マーケティング

SDGSに並んでいる、こうなったらいいな、でも解決は難しいな、というような難題も、お、もしかしたら解決できるかも、と思えてしまうようなさまざまなものの見方を示唆してくれる一冊です。

ちなみに著者の神田氏のマーケティングの定義はちょっと一般的なもの、つまりいわゆる営業、というものとはちょっと違っています。
神田氏のマーケティングの定義は「必要な価値を必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」

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重大事件に学ぶ危機管理

重大事件に学ぶ危機管理

いくつもの、それこそ重大事件を指揮してきた人だけに、なるほどと思わせる諫言がたくさんありました。

リスクが発生しているという報告も大事だが、逆に「異常なし報告」をしておくことも重要であること。アメリカの緊急報告体制に倣った「事実報告」→「情勢判断」→「意見具申」の短時間報告。アメリカの緊急事態においてはエレベーターに乗る15秒の間にこれをやるべく定められているそうですが、ビジネスシーンでも十分使

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大黒屋光太夫

大黒屋光太夫

船の難破、厳寒での過酷なロシア滞在。帰国の許可も中々おりない中、ロシア滞在を勧められ、それでも希望を捨てずに交渉し、十数年ぶりに日本帰国とあいなった人物の生涯を綴る吉村昭氏の歴史小説です。

この本を読む前、アメリカ彦蔵自伝という本を読みました。光太夫よりも
100年ほどのちに、やはり漂流し、アメリカの船に拾われ、アメリカに渡り、のち日本に戻って通訳として活躍し、何不自由のない生活を送る浜田彦蔵と

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現代美術史

現代美術史

現代美術がどう生まれ、どういう議論を経て、今に至るのか。
美術はよくも悪くも人々にどういう影響を与えていたのか、をわかりやすく書いている本です。何を芸術と考えるか、芸術を癒しとは考えず、物事を省みたり、考えを深めることに使っていこうとしている動きもよくわかりました。

文章は平易であっても書かれているイベントは突然出くわしたら、
今のはなんだったんだろう?と不勉強な素人は思ってしまいそうな
ものば

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新しい経営学

新しい経営学

経営に必要な、思考モデルをわかりやすく、解説している本です。もともと女子栄養大学での授業がベースになっている本のようです。
経済学科とか経営学科とかではなく、「栄養」を学ぶ人たちに教えたというところが肝なのかな。もう当然、こんなことは知ってますよね、という前提ではなく、本当に0ベースで教えてくれるから、実にわかりやすい。

まずビジネスを考えていくには、ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モ

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お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください

お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください

タイトルだけ見ると節税のことが中心で書かれているように見えるが、そもそも税金はどういう仕組みで成り立っているのか、確定申告はどう手順を踏んでいけばいいのかが書かれている本。
私は会社員で、源泉徴収で税金を払っているが、いつか会社を退職した際には、こうした税金の支払いを自力で行わなければならないわけで・・。

わかったつもり、と実際わかって行動できるのとでは大違い、だが、基本のキまでは、前回読んだ日

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