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多様性の科学

いい本とはどういう本か。 読み終わって感動に打ち震える本もいい本、だし 知らなかったことをたくさん知ることができて満足するのもいい本。 次どうなるのかドキドキしながら読み進めることができるのもいい本。 さてこの多様性の科学も、いい本だなあと思ったのだけど、 上記にあげた「いい本」の定義にはあてはまりません。 英語の本を訳したからか、ちょっと読みにくいし、出てくる例示も訳本だからしょうがないけど、なじみがないものも多い。 でもいい本だなあと思います。 この本で書かれている内

    • 安全。でも、安心できない

      どうして安全だからと安心できるのか。いや、安心できない。 本のタイトルを私なりに言い直すと、高校生の頃に学んだ漢文の言い回しを連想するこんな表現になります。 むろん、安心するために安全であろうと努力することは必要です。 でも安全であっても、人は安心できるわけではない。 この事例として、もう今どきのお子様は知らないであろう、赤福の製造年月日偽装事件が引き合いに出されます。赤福については食品衛生法に基づく営業禁止にまでなりましたから、なんだか、「衛生によくない」とお役所が判断

      • おろしや国酔夢譚

        大黒屋光太夫と同じネタで、今度は井上靖による小説。 吉村昭氏よりは短く、どちらかといえば、ロシア本国に辿りついて 帰国の交渉をしてから日本に帰るまでの経緯が、吉村昭のものより詳しく書かれています。逆に言えば吉村昭の小説の方が、船が難破し、島に命からがら辿りつき、ロシア本土に足を踏み入れるまでの苛酷な毎日を詳細に記しています。 吉村昭のほうが、過酷にして数奇な光太夫に起きた「出来事」に焦点をあてている印象ですが、井上靖は、帰国前から帰国後に至るまでの光太夫の心情の変化もかなり

        • 世界最高峰の経営教室

          マイケルポーター、フィリップコトラー、コリンメイヤーといったまさにタイトル通り世界最高峰の経営学者、その他新進気鋭の経営学者へのインタビューを通じて、最新、最高な経営の在り方を学ぶことができる一冊です。 難しいことをやさしく、やさしことを深く、は井上ひさしの名言ですが、やはり世界最高峰ともなると、小難しい言葉をひねりだすこともなく、言ってる内容は実にシンプル。ともすれば日本の社長だってこれくらいのことは言っているのかもしれません。 ただ圧倒的に違うのは「そのように考えるに至

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        • 読書記録
          52本

        記事

          パイロットが空から学んだ一番大切なこと

          時に旅行、時に出張。飛行機には年に何度も乗ります。仕事であれ、旅行であれ、飛行機の旅はちょっとだけワクワク感が募る。あと個人的に電車よりも疲れないで移動できる気がしています。飛行機に乗るのが怖いとおっしゃる方もいらっしゃいますけど、私にとって飛行機は恐ろしいものではありません。実際事故確率でいえば自動車よりも相当低いんですから、理屈上は恐ろしがる理由はそうない、といえます。 とはいえ。ケーブルテレビで航空事故の事例をとりあげいる報道番組があってよく見るんですけど、事故が起き

          パイロットが空から学んだ一番大切なこと

          想定外を想定せよ。失敗学からの提言

          過去の事故の要因分析を通じて、以降の再発防止を考え続けている畑村洋太郎さんの著書。 私が一番印象深かったのはJALの事故機を社内に保存してある、という事例。こうしたものを残しておくことは、事故の悲惨さを伝える、というもっともらしいきれいな言葉で語られますが、言葉で伝えるよりも、生々しい事実で視覚で訴えられた方が、人の記憶に残るし、財産になる。動態保存はそういう意味でも意味があるというところでした。 三井物産でも、過去の数値偽装の象徴ともいえる、DPFの実機を社内研修所に飾

          想定外を想定せよ。失敗学からの提言

          未来実現マーケティング

          SDGSに並んでいる、こうなったらいいな、でも解決は難しいな、というような難題も、お、もしかしたら解決できるかも、と思えてしまうようなさまざまなものの見方を示唆してくれる一冊です。 ちなみに著者の神田氏のマーケティングの定義はちょっと一般的なもの、つまりいわゆる営業、というものとはちょっと違っています。 神田氏のマーケティングの定義は「必要な価値を必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」「売る方法」という一義的なものではないのです。 むろん変化を、社会において起こ

          未来実現マーケティング

          重大事件に学ぶ危機管理

          いくつもの、それこそ重大事件を指揮してきた人だけに、なるほどと思わせる諫言がたくさんありました。 リスクが発生しているという報告も大事だが、逆に「異常なし報告」をしておくことも重要であること。アメリカの緊急報告体制に倣った「事実報告」→「情勢判断」→「意見具申」の短時間報告。アメリカの緊急事態においてはエレベーターに乗る15秒の間にこれをやるべく定められているそうですが、ビジネスシーンでも十分使える、いや使うべきやり方でしょう。 また、組織のいわゆる「集団愚考」についても

          重大事件に学ぶ危機管理

          大黒屋光太夫

          船の難破、厳寒での過酷なロシア滞在。帰国の許可も中々おりない中、ロシア滞在を勧められ、それでも希望を捨てずに交渉し、十数年ぶりに日本帰国とあいなった人物の生涯を綴る吉村昭氏の歴史小説です。 この本を読む前、アメリカ彦蔵自伝という本を読みました。光太夫よりも 100年ほどのちに、やはり漂流し、アメリカの船に拾われ、アメリカに渡り、のち日本に戻って通訳として活躍し、何不自由のない生活を送る浜田彦蔵と比べると、光太夫の苛酷さたるやなんなのか。 帰国をあきらめ、ロシアで何不自由の

          大黒屋光太夫

          現代美術史

          現代美術がどう生まれ、どういう議論を経て、今に至るのか。 美術はよくも悪くも人々にどういう影響を与えていたのか、をわかりやすく書いている本です。何を芸術と考えるか、芸術を癒しとは考えず、物事を省みたり、考えを深めることに使っていこうとしている動きもよくわかりました。 文章は平易であっても書かれているイベントは突然出くわしたら、 今のはなんだったんだろう?と不勉強な素人は思ってしまいそうな ものばかり。解説を読むとなるほどー、とは思いますが、解説なしに 解釈するのはなかなかに

          現代美術史

          新しい経営学

          経営に必要な、思考モデルをわかりやすく、解説している本です。もともと女子栄養大学での授業がベースになっている本のようです。 経済学科とか経営学科とかではなく、「栄養」を学ぶ人たちに教えたというところが肝なのかな。もう当然、こんなことは知ってますよね、という前提ではなく、本当に0ベースで教えてくれるから、実にわかりやすい。 まずビジネスを考えていくには、ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モデルを考える必要があると説き ”事業経営において、われわれは●ターゲットやバリュ

          新しい経営学

          投資思考

          この人に仕事を頼みたいと思えるように自分のブランド力を磨く、 企業価値を高めることにより、TSR(株主にとってのリターン率) があがることを目指さなければいけないのに、TSRだけに目をとられてはいけない。 などなど、さすがゴールドマンサックスのエリートと思える、スマートな解説が次から次へと繰り出されています。 が、限られたリソース(時間や体力)を使ってより大きなリターン(キャリアアップ、昇進)を獲得しよう とか、事業が順調だから旅行にでもいくという考え方より、順調だからこ

          投資思考

          税ってなに?とられる税から私たちの税へ

          子ども向けの解説本は、馬鹿にならない深さで、かつわかりやすくものごとをしるのにもってこいです。 この本も、日本の税金を書いた三木義一さんが、日本の税金で説いていた内容を子ども向けに、さらに分かりやすく説明しています。こっちを先に読んでおけばよかった・・・。 権力者が、国民から税をとりたてる状況から、国民主権で、国民が何に税金をかけるのかを決めるやり方に変遷していく様子をまずわかりやすく説明しています。そのうえで、小さな政府、大きな政府、それぞれの特性とメリット、デメリットを

          税ってなに?とられる税から私たちの税へ

          日本の税金(三木義一)

          税金の知識不足に焦り、いろいろ読み漁っているわけですが、これまで読んできた本の中で、まさに日本の税金の全容を理解できる本といえましょう。 税を納める意味、これまでの課題のところまではすぐ読み進められましたが、各種税金の説明は、相当かみ砕いて書いてくださっているはずなのですが、頭に?が飛び交うところもしばしば。 とはいえ、おさえるべきは2つなのではないかと。1つ目はどういう税金がなんのためにあるのかということとを理解すること。2つ目は各種税法の何が問題なのかを自分なりに説明で

          日本の税金(三木義一)

          幸せのメカニズム 実践幸福学

          元エンジニア、現在はウェルビーイングを研究していらっしゃる前野隆司氏の著書です。科学技術の進歩とそれに基づく豊かさの向上こそが人を幸せインすると信じてエンジニアになったのに、豊かさが向上しても幸せ感があがっていないことに気が付かれたのが、ウェルビーイング研究のきっかけでいらっしゃいます。 すべての仕事は幸せにつなげられるはず、といった考え方、経済最優先の考え方の行き詰まり、など共感できるところもありましたが、首をかしげざるをえないところも多くありました。 幸せのループとい

          幸せのメカニズム 実践幸福学

          お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください

          タイトルだけ見ると節税のことが中心で書かれているように見えるが、そもそも税金はどういう仕組みで成り立っているのか、確定申告はどう手順を踏んでいけばいいのかが書かれている本。 私は会社員で、源泉徴収で税金を払っているが、いつか会社を退職した際には、こうした税金の支払いを自力で行わなければならないわけで・・。 わかったつもり、と実際わかって行動できるのとでは大違い、だが、基本のキまでは、前回読んだ日本一やさしくて使える税金の本|luvhuey (note.com)との合わせ技で

          お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください