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安全。でも、安心できない

どうして安全だからと安心できるのか。いや、安心できない。
本のタイトルを私なりに言い直すと、高校生の頃に学んだ漢文の言い回しを連想するこんな表現になります。

むろん、安心するために安全であろうと努力することは必要です。
でも安全であっても、人は安心できるわけではない。

この事例として、もう今どきのお子様は知らないであろう、赤福の製造年月日偽装事件が引き合いに出されます。赤福については食品衛生法に基づく営業禁止にまでなりましたから、なんだか、「衛生によくない」とお役所が判断する事実は確かに存在はしていました。衛生面だけでなく「製造した当日に販売している」というふれこみだったが、実は冷凍ものの使いまわしというのは、だまし討ち感もあります。企業倫理としては相当問題ありでしょう。が、食中毒が起きたわけではありませんでした。つまり「安全」を脅かしたわけではないわけです。
それでも、当時の一般顧客は、赤福に対して「企業姿勢として共感できない」というよりは「食べても安全なのか」というイメージのほうが先に来ていた印象があります。

この赤福の事例から始まって、人は何をもって「信頼」し、「安心」するのかということを心理学の専門領域からアプローチしているのがこの本です。
途中ちょっと、一般素人には難しい印象をうける説明もありますが、それでもなるほど、と思える事例も多く、ものの見方がちょっと変わる本だと思います。

この本の主題とはちょっと違いますが、安全管理をしていくうえで「何をしているのか」を伝えるだけでなく、どういう姿勢でいるのかを伝えることが信頼につながるのでは、という趣旨のメッセージが終章にあがっています。これは安全管理だけにかかわる話ではないですね。思いがわかると商品や企業に対して消費者としては親近感がわきます。逆に企業側もそんな思いを吐露してしまった以上、その思いに恥じない商品サービスを創っていこうと
思えるのではないかなと。がんばってるんです、だけじゃ伝わらない。かといってなんだかやたらと細かく専門的なことを言われても、伝わる以前にわからない。人格+具体を「伝わるように伝える」ことは、リスクマネジメントに限らず、事業活動全般に大事なことかなと思います。

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