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世界標準の経営理論

普通の単行本の大きさを想像して、近所の図書館に予約してた本書を受け取りに行ったら、そんじょそこらの辞書よりもかなり分厚い800ページ以上もある大作。最初はちょっと腰がひけました。もともとは、はじからはじまで読むことだけを想定しているわけではなく、知りたい理論がでてきたら
つまみ食いのように読んでみる、といった読み方も著者自身が推奨されており、辞書的な本でもあるようです。

もっとも、私の場合、サラリーマンとして普通に勉強していればまあ知ってるよね、というような理論もまったく頭に入っていないため、まずはわからないなりに端から端まで読むほうがよいだろうと判断してすべて読んでみました。信頼の非対称性原理、などは、その言葉だけ読んだら?がうずまくところですが、
信頼を得るにはたくさんの肯定的実績の積み重ねが必要で、長い時間を要するのに対し、信頼を失うにはたったひとつの否定的な事実で十分で、しかも、あっという間に信頼は失墜する、ということを意味する。つまり、信頼を得るための事実の量や時間と、信頼を失うための事実の量や時間が対称をなしておらず、私たちは心理的に不振に傾きやすいというのが信頼の非対称性原理である”

なんて説明されると、なるほどなあ、とすとんと胸に落ちてきます。

難しいことをやさしく、は有名な井上ひさし氏の言葉ですが、さすがに
本の説明は「やさしく」はないです。でも、難しくはなく、複雑ではありません。
しいて言えばちょっとカタカナが多いのには閉口しますが、これは著者のせいではなく、欧米で最初に論じられた理論が、日本語訳されずそのままに
なっているからです。これは日本の経営学者の怠慢だと思うなあ。ちゃんと日本語にすることで、認識もむしろ揃うんではないかと思います。

信頼の非対称原理だけでなく、知の探索、知の深化の理論、プリンシパル=エージェント理論、意思決定・判断の理論、などなど、そうか、これまで自分が見知った事例はこういうことだったのか、と合点がいくものもたくさんありました。最近では論理よりも直感が意思決定に効果的、なんて説もあることを知り、いやいや、むしろ企業の方が、いまだにPDCAやらMECEやらロジックに縛られているのかもしれない、という気づきもありました。

各理論を説明しているだけでなく、そもそも理論とはなんぞや、という定義もあります。
①参考文献や引用の羅列は理論ではない。 
②データを記述しただけでは、理論ではない 
③概念の説明は、理論ではない 
④図表は理論ではない 
⑤命題や仮説だけでは、理論ではない 

①②④はそりゃそうでしょ、と思いますが②や⑤のレベルでも自分としては理論だ!と大興奮するケースもあるんだろうな。てか、私なんかは
②と⑤だけでもすごい!頭いい!と感動しそうです。
よしんば、理論といえるだけのレベルで論じられたとて、それが世界各国で
利用され、さらに論が深まるまでのものになっているものなどさらに一握り。この本に載っている理論がいかにすごいか、おしてしるべしでしょう。

ということで、最初は分厚さにビビりましたが、経営学初心者でも十分読める本です。著者がいうように大学や大学院に行ってる人は教科書として持
っているべき本だなあと思いました。
とはいえ、いきなり買うのはちょっと・・・と言う方は私のようにまず図書館で借りて読んでみて、手元に持ちたい!と思った方は買ってみる、という手順がいいかもです。Kindle版もあります。







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