オウンドメディア進化論
なかば「転校生」の立場の私は、その話の一つひとつがとても面白かったんですね。何より、従業員が語る商品に対する愛情や思い入れに感動しっぱなしでした。一見するとクールに振舞う従業員たちですが、いざ自身の取り組んでいることを話すとなると、まるでこどものように目をきらきらさせる。その熱量に触れて、入社するまで抱いていた「大企業」の人のイメージがガラリと変わりました。同時にこの話を「外に出さないのはもったいない」と思い始めました。
オウンドメディア進化論の中の一節です。この話を「面白がって」「共感して」時に「感動して」発信することで、企業の中にも外部にも、影響を与えることがオウンドメディアの意味。だからバズることばかり考えていたらずれてくる。
ということをずっと繰り返し熱く説いている一冊です。
私もこの本を読むまでちょっと誤解してたんですが、ここで語られているのはシャープとかで「中の(一)人」がつぶやくメディアのこと(だけ)ではなく、あくまで主語は企業のオウンドメディア、です。誰かひとりが語るのではなく、語るのはいろんな人。中の社員が語ることもあるし、外から募集することもありますが、目的はひとつ。広告・商品だけでは伝えきれない価値を伝えること。
この目的をブラさずに発信するために議論し、議論を言葉にし、フォーマットにする。さらに数値もみるけど、反応を丁寧に見る。記事で紹介した人が自分の仕事を紹介する際に使ってくれているか、どういう内容の反応を返してくれているか。採用広告など、価値を広げられているか。これらのこれまで「定性的」と切り捨てられていた小さな声をつぶさに見ていくことで、発信する人の考えも深まり、スキルも上がるし、企業のブランド深化にもつながっていくというサイクルが、熱く語られています。
私はメディアの担当でも何でもないのですが、これを読んで、「マニュアル」にも同じように「思い」を書いたほうがよいかもしれないなあとふと思ったのでした。BPRがブーム(?)で今会社は熱く可視化を推進しています。ただそれこそ世の中に出ているお作法通りに手順をまとめてもなんだか伝わらないんですよね。そりゃそーだ、で終わっちゃう。何かが違う。
全部に必要とは言わないけど、この仕事で大切にする思い、とかこのマニュアルになぞらえて仕事をしたときに、フローのどこが大事だと思ったのかそれはなぜか、という人の「手触り」が残っていた方が伝わるのかなあと。それもその工程を当たり前に無意識にやっているベテランが振り返って思うこと、ほぼ初心者が倣ってやってみた時に感じた思いと両方が残っていたほうがいいのかなあと。そうした思いの蓄積は遠回りだけど大事な資産なのではないかなあとこの本を読んで思ったのでした。
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