岩井圭一

迷走するクリエイターから経営者へ。大学では魚の生態を研究。コピーライターからグラフィッ…

岩井圭一

迷走するクリエイターから経営者へ。大学では魚の生態を研究。コピーライターからグラフィックデザイナー、さらにレザークラフト講師に。萬年赤字のカフェをタルト専門店にリニューアル、ブランディングをすすめ、さらに62歳でCEOに。「誰かを幸せにする」を目標にまだまだ迷走中。

マガジン

  • 事業育成の実際

    「事業再生の実際」をなんとか卒業し、次のステップに進むため実践と実績を織り交ぜながら模索しながら考察します。

  • ブランディングのメモ帳

    「ブランドを立ち上げる」その言葉が示す本当の意味を知らなければブランド構築などできない。一見ブランド先進国に見える日本は実はブランド後進国である。なぜそうなったのか?どの時代より「ブランド」の意味が重要になるのはなぜなのか?つれづれに書き残してみよう。

  • いつでも花は咲く。

    書き下ろしでゆっくり。ここに書かれた物語には全てモデルとなる人物がいます。 そのほとんどは実話です(脚色はしていますが)。それぞれの人生に花が咲きますように。

  • De-Sign デザインの徒然

    一度、アマチュアに戻ってデザインのことを考えてみよう。考えているうちに新しい発見があるかも知れないな。

  • Black Sword

    黒剣とは何か?魔法と剣、兄弟の運命の物語。

記事一覧

事業育成の実際42-人生のお話

●揺り戻す振り子 最近は短期間にいろんなことが起こります。 新型コロナの蔓延に始まって、ウクライナでの戦争。 今年に入ってすぐに能登半島での震災。 世の中の景気は…

岩井圭一
1か月前
3

事業育成の実際41

●規模の経済原理からの逸脱 一般的には事業規模が拡大し固定費の割合が少なくなると、製品1個あたりの生産コストは低下し利益率は大きくなります。 そのために多くの企業…

岩井圭一
3か月前
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ブランディングのメモ帳-14

●ブランディングのこと本当にわかっていますか? 最近、SNSなどでブランディングの記事をよく見かけるようになりました。 特にリ・ブランディングの記事を読んでいてとて…

岩井圭一
3か月前
3

事業育成の実際40

●小さな一歩 カフェを始めたのが2011年。 新型コロナウイルスが蔓延した2019年から本格的に菓子の製造販売を始めました。最初は駅ナカでの催事出店販売という業態。 カフ…

岩井圭一
4か月前
2

事業育成の実際39

●時代の変化の過程による経営の変化 一口に店舗といってもいろいろな形態があります。 これから私たちが取り組もうとしているのは一見すると時代錯誤なアナログで「地域…

岩井圭一
4か月前
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事業育成の実際38

●まずは生き延びる 景況感を見るとほとんどの公的な資料では「状況は良くなりつつある」としていますが、一部の金融機関や企業から発信されている情報の中には「横ばい」…

岩井圭一
4か月前
2

事業育成の実際37

●踏み出す準備 私たちの決定的な弱点は内部留保を持たないということです。 もちろん利益を出しながら事業を継続していますが、成長を続ける企業は内部留保する資金を成…

岩井圭一
5か月前
2

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅣ

青春を謳歌する、というのはあの頃のことを言うのだろうか? 26歳の私は豪華なクルーズ船の上でボディコンシャスなドレスを見に纏い、水平線を眺めてカクテルを流し込んだ…

岩井圭一
5か月前

事業育成の実際36

●企業成長は巨大化だけではない ほとんどの企業はいずれは上場を目指すことが目的になってはいないでしょうか? 年商100億を超える大企業を目指している経営者は多いに違…

岩井圭一
5か月前
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事業育成の実際35

●不況に備えるために 昨年夏前から始まった二つ目のマーケットの変容。 一つ目は人類がこれまでほとんど経験をしたことのない全世界に蔓延した新型コロナウイルスの影響…

岩井圭一
5か月前
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事業育成の実際34

●デジタルとマインドの整合性 技術としてのデジタルはなくてはならないものになりつつあります。 今後はAIを使ったマーケットの分析が主流になり、それぞれのマーケット…

岩井圭一
6か月前
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事業育成の実際33

●忍耐と瞬発力 これほど経営環境が目まぐるしく変化する5年間はなかったと思います。 特に昨年2019年から2023年にかけて、コロナ禍が始まり落ち着きを取り戻して人の流れ…

岩井圭一
6か月前
2

事業育成の実際32

●営業力と怖いもの知らず しばらくは月末が近づくと引き落としのこととか支払いのことに注意深く対応しなくてはなりません。 一度事業に翳りが見えた時には慎重にならな…

岩井圭一
6か月前
3

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅢ

ニースから電車に揺られて小一時間、 まるで絵に描いたようなミントカラーに包まれた街並みに見惚れていると穏やかな地中海に浮かぶ一枚の絵のようなような街「マントン」…

岩井圭一
7か月前
2

事業育成の実際31

●自分一人の決断 経営者は孤独だとよく言いますが、確かに最後の決断を誰かに委ねる事はできません。それでも現場で働く人たちの声は常に聞くべきだし、たとえ経営者の決…

岩井圭一
7か月前
2

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅡ

地平線なんて見たことがなかった。 ほとんど平らな地面に突き刺さるように大きなバオバブがそそり立っている。 いつもは高層ビルが立ち並ぶシドニーの街並みを見ていたけれ…

岩井圭一
7か月前
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事業育成の実際42-人生のお話

事業育成の実際42-人生のお話

●揺り戻す振り子

最近は短期間にいろんなことが起こります。
新型コロナの蔓延に始まって、ウクライナでの戦争。
今年に入ってすぐに能登半島での震災。
世の中の景気は上がったり下がったり。
私たちは現場で働いていますから、それらの出来事の影響をもろに受けます。
注意深く見なくてはならないのは「マーケットの変化」です。
もちろん景気の動向に合わせてマーケットでの販売売上は上下します。
どのような状況で

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事業育成の実際41

事業育成の実際41

●規模の経済原理からの逸脱

一般的には事業規模が拡大し固定費の割合が少なくなると、製品1個あたりの生産コストは低下し利益率は大きくなります。
そのために多くの企業は事業規模を大きくし、生産コストを集約して固定費の割合を減らすために大量生産が可能な大型の工場を作り大量生産をして全国に出荷するシステムを作り上げようとします。
国内でそれが不可能になると(主に人件費の高騰によって固定費が拡大する)海外

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ブランディングのメモ帳-14

ブランディングのメモ帳-14

●ブランディングのこと本当にわかっていますか?

最近、SNSなどでブランディングの記事をよく見かけるようになりました。
特にリ・ブランディングの記事を読んでいてとても違和感を感じるようになったのです。
それは
「ブランディング」=「デザインを変えること」だと勘違いしている
ように思えるからです。
商品そのものや、商品パッケージのデザインを変えることは確かにブランディングにおいて重要な要素ではあり

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事業育成の実際40

事業育成の実際40

●小さな一歩

カフェを始めたのが2011年。
新型コロナウイルスが蔓延した2019年から本格的に菓子の製造販売を始めました。最初は駅ナカでの催事出店販売という業態。
カフェの営業は純粋にBtoCのお客様と直接対応する業態でしたが、店舗の開業場所の商圏(マーケット)のニーズと私たちが提供する商品のブランドコンセプトが合わず苦戦を強いられました。
駅ナカでは私たちのブランドに合致した商圏を選ぶことが

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事業育成の実際39

事業育成の実際39

●時代の変化の過程による経営の変化

一口に店舗といってもいろいろな形態があります。
これから私たちが取り組もうとしているのは一見すると時代錯誤なアナログで「地域密着型」の店舗経営です。
もちろん全てをアナログに戻すことは出来ません。
今起こっていることはまさしく「アナログな過去の資本主義」と、距離が意味を持たず、あるいは「国家という単位さえも意味をなさない未来の資本主義」との軋轢だと感じています

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事業育成の実際38

事業育成の実際38

●まずは生き延びる

景況感を見るとほとんどの公的な資料では「状況は良くなりつつある」としていますが、一部の金融機関や企業から発信されている情報の中には「横ばい」「油断できない状況」と出ています。
定額の給与をもらっている人たちや大企業に勤めている人たちには実感がないかもしれませんが、実際にマーケットを相手に仕事をしているとこんなに景況感の悪い状況は「バブルの崩壊」以来かもしれません。
しかし、こ

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事業育成の実際37

事業育成の実際37

●踏み出す準備

私たちの決定的な弱点は内部留保を持たないということです。
もちろん利益を出しながら事業を継続していますが、成長を続ける企業は内部留保する資金を成長に投資し続けなくてはなりません。
現場に出ている方達は理解していると思いますが、ベースアップされた賃金も、コロナ禍が収まって人々が使っているお金のほとんどは中小企業が作っている商品に投下されているのではなく、海外旅行などの観光分野に投下

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花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅣ

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅣ

青春を謳歌する、というのはあの頃のことを言うのだろうか?
26歳の私は豪華なクルーズ船の上でボディコンシャスなドレスを見に纏い、水平線を眺めてカクテルを流し込んだ。
船の上には着飾った男女が入り乱れて終わることなどないと信じて
人生の祭典を楽しんでいた。

●祭りの果て

その祭りが終わるのにそれほど時間はかからなかった。
パトロンに住まわせてもらっていた高級マンションは売却され、パトロンには内緒

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事業育成の実際36

事業育成の実際36

●企業成長は巨大化だけではない

ほとんどの企業はいずれは上場を目指すことが目的になってはいないでしょうか?
年商100億を超える大企業を目指している経営者は多いに違いありません。もちろん実際に上場できる企業はほんの一握りで、それでも企業上場は経営者の夢になっています。
これまでのように経済が成長を続け、人口が増え続けている時代なら企業も成長を続けられるかもしれません。
しかし、これからますます人

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事業育成の実際35

事業育成の実際35

●不況に備えるために

昨年夏前から始まった二つ目のマーケットの変容。
一つ目は人類がこれまでほとんど経験をしたことのない全世界に蔓延した新型コロナウイルスの影響による外的要因による市場の冷え込み。
政府はそれまで蓄えた資金を市場に放出して企業や社会を支えました。
しかしこの資金の放出にはそこから再生するための未来を見越した放出ではなくいわゆる「バラマキ」と言われる再生ベクトルを持たない放出でした

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事業育成の実際34

事業育成の実際34

●デジタルとマインドの整合性

技術としてのデジタルはなくてはならないものになりつつあります。
今後はAIを使ったマーケットの分析が主流になり、それぞれのマーケットに応じた情報発信をAIが自動的に行う時代になるでしょう。
しかし、その状況に似た状況をずいぶん前に経験したことがあります。
それはかつて20年以上も前に巨大な集積した情報バンクをもとに広告代理店が広報宣伝計画を立て、膨大な量の情報をマー

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事業育成の実際33

事業育成の実際33

●忍耐と瞬発力

これほど経営環境が目まぐるしく変化する5年間はなかったと思います。
特に昨年2019年から2023年にかけて、コロナ禍が始まり落ち着きを取り戻して人の流れが再開するまでの間、最初は急激な経済の悪化が始まりそれが一年間ではなく数年続くと分かった時点で企業は守りに入りましたが、経済状況の悪化はそれ以上に進み、多くの企業が助成金や補助金を頼りに経営を続けてきました。
この時点で体力のな

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事業育成の実際32

事業育成の実際32

●営業力と怖いもの知らず

しばらくは月末が近づくと引き落としのこととか支払いのことに注意深く対応しなくてはなりません。
一度事業に翳りが見えた時には慎重にならなければなりませんが、ただそれだけでは次の突破口が見えてきません。
私たちは現在はBtoBの仕事の方が多く、そのほとんどは実は飛び込み営業で開拓してきました。
今も新しいクライアントの開拓はメールや電話による飛び込み営業です。
私たちの事業

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花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅢ

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅢ

ニースから電車に揺られて小一時間、
まるで絵に描いたようなミントカラーに包まれた街並みに見惚れていると穏やかな地中海に浮かぶ一枚の絵のようなような街「マントン」に到着した。
日本の田舎町に育った私はその殻を破って夢を綴るためにこの街にやってきた。
拙いフランス語で何通も書いた手紙をこの街の小さなコンフィズリィに出してから
5ヶ月が経っていた。
その小さな洋菓子店はまるでおとぎ話に出てくるような外観

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事業育成の実際31

事業育成の実際31

●自分一人の決断

経営者は孤独だとよく言いますが、確かに最後の決断を誰かに委ねる事はできません。それでも現場で働く人たちの声は常に聞くべきだし、たとえ経営者の決断が現場の人たちにとって歓迎されないものであったとしても、最終的には会社にとっても従業員にとっても最善の決断であるのならば実行しなくてはなりません。
そこで働く人たちの信頼を得るには多くの時間が必要ですし、その時には苦しい決断であっても結

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花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅡ

花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅩⅡ

地平線なんて見たことがなかった。
ほとんど平らな地面に突き刺さるように大きなバオバブがそそり立っている。
いつもは高層ビルが立ち並ぶシドニーの街並みを見ていたけれど、今日はグレートビクトリアにいる。
同じ大地の上とは思えないほどの景色の中で自分はちっぽけだった。
はるかに続く大地と空に囲まれて、私はなぜか小さな街道に続く古い民家の街並みを思い出していた。
「さあ、帰ろう」
小さくつぶやいて私は赤黒

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