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ブランディングのメモ帳-14

●ブランディングのこと本当にわかっていますか?

最近、SNSなどでブランディングの記事をよく見かけるようになりました。
特にリ・ブランディングの記事を読んでいてとても違和感を感じるようになったのです。
それは
「ブランディング」=「デザインを変えること」だと勘違いしている
ように思えるからです。
商品そのものや、商品パッケージのデザインを変えることは確かにブランディングにおいて重要な要素ではあります。
でも、それはブランディングにおいての最終形態であって、大切なのはそこに至る過程だと考えています。

「ブランディングをしてデザイン費がこんなにかかったのに商品が全然売れない」
そういう話をよく聞いたり読んだりします。
メジャーなブランドの商品であっても売れない事はよくあります。
では、その商品は誰のためにデザインしたのでしょうか?
それが全ての答えであって、全てはそこから始まります。
ブランディングの話をする時、必ず最初にする問いかけは
「あなたたちのお客様は誰ですか?できる限り具体的に言ってください」
もちろん箇条書きで書き出しても構いません。

「自分たちのお客様」がどんな方達なのか、質問されて初めて考える人もいます。
商品を作る段階で考えなくてはならない内容です。
このことはブランディングの説明で何度も書きました。
「性別」「年齢」「所得」「趣味・嗜好」「家族構成」など。
それらがわからずに商品を作るわけにはいきませんし、ましてやブランドは立ち上がりません。
違和感を感じるのは、
「デザイン費がこんなにかかったのに」ではなく「商品が全然売れない」という結果の方です。つまりは「デザイン」が無駄だったという結論に違和感を感じるという事です。

「お客様」=「ターゲティング」
「デザイン」=「ターゲットユーザーのニーズを捉えた結果」

でなくてはならないのに、売上が上がらない、というのはブランディングが成立していないのではないかと考えるからです。
もちろんブランディングそのものには結果が出るまでに時間が必要なこともあります。デザインを変えた途端に売上が上がるなんていうのは、広報宣伝費を潤沢に持った大企業が大掛かりにキャンペンを行った場合などで、中小企業が少しでも業績を上げたいとブランディングを行いデザインを変えたとしてもすぐに結果が出るものではありません。
ブランディングとは必ずしもブランドや商品のイメージを変えるものだとは限らないのです。
ブランドの強さとは「お客様に認識されている強さ」と「そのブランドをお客様が贔屓にする力」だと考えています。この二つをどのように獲得するのかという意味では確かに「デザイン」は重要な意味を持つと考えます。
しかし、「デザイン」だけがブランドを成立させているわけではありません。
デザイナーがブランディングを手がけるのなら、ブランディングそのものがそのブランドを応援するファン層に支えられていることを理解していなくてはなりません。逆に言えばブランドのファン層を獲得することからブランディングが始まるということになります。
ブランディングを手掛けてそのファン層からの支持が得られず、売り上げに反映しなかった時点で「ブランディング」は成功しているとは言えません。
その「ブランディング」の背景にあるものは「デザイン」だけではなくブランドを支えるファン層に他なりません。
そしてそのファン層がブランドを支えようと思うのは「デザイン」だけではないということです。
「ブランド」やブランドを提供している企業の考え方や活動、その背景にある生産者や労働者までも応援してくれるファン層が「ブランド」そのものを支えているのです。
よく「地域ブランド」という言葉が使われることが増えましたが「ブランド」を支えるファン層はその地域だけに存在するものではありません。日本全国、あるいは世界中のファン層がそのブランドを支えているという感覚を持たなくてはなりません。私たちのお客様は「地域を選んでいる」のではなく「ブランド」とその背景にある考え方を応援してくれているのです。

●ブランドは突然生まれるのではなく育てるもの

私たちのブランドを作り始めた時に、最初から私たちのブランドにファン層がいたわけではなく、私たちのお客様は誰なのかを考え、その人たちに私たちの考え方を届ける努力を続けてきました。まずはどうやって私たちのことを知ってもらうか?資本力もなく広報宣伝費にそれほどお金をかけることはできません。最初は本当に小さなエリアへのポスティングから始まりました。
ただ、私たちが私たちのファン層になってほしい人たちが住んでいるエリアに私たちのブランドを好きになってくれるだろう人たちの家に届けられるように町を歩き、その目で確かめるようにして一軒一軒回りながらポスティングを続けました。
1ヶ月に1000枚をコツコツと届け続けました。
町の中でほんの少し噂になるようになり、人がたくさん通る駅ナカに催事出店を始め2年が経過するころから少しづつお客様から声をかけられるようになりました。
最初は周辺エリアの商圏だけでの認知だったものが年に1~2度関東方面への催事出店をするようになり、全国紙に店舗の情報が掲載されるようになると少しづつ全国から注文が入るようになり始めました。
ホームページに動画を掲載し、さらにYoutubeにも動画を流し始めてさらに全国からの問い合わせが入るようになり始めました。気が付けばブランドを立ち上げてから5年目に突入しました。
私たちが心がけていることで最も大切だと考えていることは「お客様を裏切らない」ということです。
最初の数年はブランドの方向性は自分たちが理想とする形からは揺らぎ続けます。
自分たちが望むお客様とは違った人たちも来られるし、中には私たちのブランドに否定的な方も来られます。でも私たち自身がブレずに進むべき方向を間違わず商品を作り、活動を続けることで私たちのお客様は必ず戻ってきます。
そして戻ってきてくれたお客様は私たちのブランドを支える強い力となってゆきます。それまで辛抱強くブランドの方向性を間違わず商品と情報を発信し続けなくてはなりません。

●時代を超える強さを身につける

現在は景気が低迷していてどんなブランドも売上が伸びず苦戦を強いられています。こんな時代は自分たちの思ったような仕事ができず焦ったい思いをします。
それでも現在の私たちには焦りはありません。
これまで行ってきたことが間違いではないという思いがあるからです。
時代を追いかけているわけでも時代を無視しているわけでもなく、現在置かれている状況でのベストを尽くすことで困難は乗り越えられると考えています。
もちろん絶対的な答えがあるわけではないことも知っています。
考えてみてください。
今も力を持っているブランドもずっと良い時代の中で育ってきたのではなく、とんでもない不況や苦難に時代を経て今も輝きを放っています。その強さの根底がどこにあるのかを考えれば、私たちが進むべき方向も見えてきます。
私たちのブランドはまだまだ小さく、強いブランドとは言えません。それでも前に進むことは止めず、小さな歩みでも良いから進み続けています。
強いブランドの根底に流れているものが何かを探って、それを私たちも身につけようと考えています。
強いブランドは正しい育て方から生まれると考えます。
答えはすぐには出ません。結果を得ることを急いで脆弱なブランドを作るよりは道を間違わず時間をかける方が強いブランドに育つのです。
ブランドを育てるのにどれだけの費用がかかるのでしょうか?私たち大きな資本を持たない事業者がブランドを育てるのは困難でしょうか?
ブランドがどのように育つのかを意識しながら着実にその道のりを続けてゆくことでブランド力は大きくなり、最初月に1万円しか投下できなかった資本は徐々に大きくなってゆきます。
売上の5%しか使えないとしても、月に10万円の売上であれば5,000円。
月に100万円であれば5万円。月に1,000万円であれば50万円をブランドのために投下できるようになります。年間にすれば600万円をブランドを育てるために投下できます。
おそらく月の売上を100万円から1,000万円に伸ばす過程が最も難しい局面かもしれません。この時に製造から販売に至るシステムを大きく変えなくてはならないからです。私たちはまさにこの局面に立たされている状況だと言えます。
月に50万円のブランドの育成費用を何に使うのかをよく考え最も効率の良い方法でブランドを育てる必要があります。しかも急ぐのではなく地力をつけてゆくような投資の方法が必要です。
店舗の拡大や生産性の効率化といった物理的なシステムの問題だけではなく、私たちがどこに向かって進んでいるかを明確にしなくてはなりません。
一つはファンコミュニティを育てるための投資
例えば定期的に開催するファンが集まることの出来るイベントやスクールを開催すること。ファンコミュニティの中での交流や情報交換のできるアプリを作る。定期的に企業側から発信するメールマガジン、などを続けてゆくことが大切です。
一見古典的な手法に見えますがこれらは情報発信だけでなく情報の入手にも有効だと言えます。
ただ気をつけないといけないのは発信する情報に関しては必ずある一定の方向性があってそこから逸脱しないこと。ブランドとは必ずそのブランド特有のベクトルがなくてはブランドと認識されないけないわけで、そこから外れた情報を発信してしまうとブランドそのものを壊してしまうことになります。
そのためには情報管理が必要になります。今一度自分たちのブランドが何を目指していてどちらを向いているのかを確かめ、その自分たちのブランドを応援してくれるファン層が誰なのかを考えなくてはなりません。
そのことがブランドを強くするのだという認識を持つ必要があります。

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