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事業育成の実際36

●企業成長は巨大化だけではない

ほとんどの企業はいずれは上場を目指すことが目的になってはいないでしょうか?
年商100億を超える大企業を目指している経営者は多いに違いありません。もちろん実際に上場できる企業はほんの一握りで、それでも企業上場は経営者の夢になっています。
これまでのように経済が成長を続け、人口が増え続けている時代なら企業も成長を続けられるかもしれません。
しかし、これからますます人口が減り、高齢化が進む世の中で本当に企業を大きくすることが企業にとって最良の方法なのでしょうか?
これまでとは違った企業経営が必要な時代はもうすでに始まっていると思われます。大量生産、大量消費の時代は終わり、人口は減り、以前のような企業経営は、もはや従業員のみならず経営者も幸せにはなれなくなっています。
「何を何のためにどのように作り、誰に売るのか?」
そういう原点に戻った経営をする必要があります。
それは必ずしも企業を巨大化することによって可能なものではないと考えます。
よく「世界と戦う」と言われますが、そうではなく「世界と協調する」のがこれからの企業のあり方ではないでしょうか?

●マーケット親和性の時代

これまでは競合他社と差別化し、自社の商品を目立たせ協調して販売力を上げてゆく時代でした。これまではそうやって自社商品の精度を上げてゆき素晴らしい商品を作る企業が沢山ありました。
しかし顧客ニーズが細分化しそれに応じて商品展開を多角化し始めると、かつてのように大量生産するためには生産コストがかかり過ぎます。
マーケットが細分化しても個々のマーケットによってニーズが変わるのですから、それぞれのマーケットのニーズに合った商品を提供する必要があります。大企業では全てのマーケットに対応するのは難しいですが、私たちのように小さな事業者にとっては自分たちの方向性に合ったいくつかのマーケットだけを対象にすることが可能です。私たちのように店舗展開と販売を中心とした業態の場合はどのマーケットにどのような販売方法でユーザーに商品をお届けするかによって業績が左右されます。
私たちがこれまで行ってきた「催事出店」による販売方法は出店店舗の所在位置や周りの環境で売上が左右されてきました。しかし、広い地域の店舗の配置や周辺の環境と売上、さらに購買されたお客様の年齢、性別、客単価などをつぶさに見てゆくと、その出店店舗周辺のマーケットのあり方や特徴が見えてきます。
どのような商圏でどういった購買層が存在し、その購買層の傾向と周辺の環境との関連性などを、催事出店するたびにデータとして取得することができます。
催事出店という業態は不安定であり、企業の成長という側面から見ると必ずしも良い業態とは言えませんが、私たちが顧客のマーケットについて学習するには最適の業態であるかもしれません。実際私たちはこの催事出店を通して多くを学び取ることができました。
もちろん私たちの弱点、そして何よりも時代性とマーケットの変遷をここ数年じかにこの目で見ることができました。
これから私たちが次に選択する業態のヒントが垣間見えています。

●地域による特徴の顕著化

私たちが注目しているのは都市部の空洞化と周辺ベッドタウンの再生です。
ここでも新型コロナ感染症の影響が見られます。
まず、コロナ前の景況感が良かった頃に計画された市街地の再開発計画。例えば大阪キタの「ウメキタ」の再開発事業。大阪難波南エリアの再開発。神戸三宮周辺の再開発。購買の高槻市街地の再開発など。多くの再開発事業が立ち遅れることになりました。新型コロナ感染症が第5種になり、インバウンドの流入が再開した2022年にようやく全ての再開発事業が一気に動き出しました。
しかし、これらの再開発事業も大型企業のオフィスのサテライト化、集中型から分散型への転換。さらに業務の一部のリモート化などにより再開発の中身についてさまざまな修正が必要になりました。
何よりも働く人々のライフスタイルの変化が大きなマーケットの変容を生み出しました。都市部の中心では働く人々の購買意欲は思いがけないほど低下しています。
大企業では賃金がアップし、人々の購買意欲も増しているという報道が景気良く流れていますが実情はそのようになっていません。
販売の現場にいる人たちにとっては周知の事実ですが、この国の内需の状況は思っている以上に良くないようです。
今年の年末から来春にかけて夏の猛暑で受けた傷と物価の高騰、インボイスの影響、コロナ融資の返済などいくつもの打撃によって想像以上の企業倒産が増えると考えています。

都会の空洞化と並行して周辺の新しいベッドタウンでは販売は好調のようです。
これはユーザー層のライフスタイルが原価したことによるものだと考えています。
●仕事が終わってから会社周辺、都市部での滞留時間が短くなった
●都市部での購入が減り居住地であるベッドタウン近隣での購買が増えた
●職場単位での購買が減り家族単位、ごく親しい友人単位での購入が増えた
●リモートでの仕事が増え自宅にいることが多くなった

これらがベッドタウン周辺での販売が好調な理由として考えられる内容です。
実際に以前は盛況だった都心の居酒屋街は確かに顧客数は増えていますが、顧客が引ける時間帯はずいぶん前倒しになっているようです。
また客単位も以前のような大人数ではなく2〜3人の少人数での行動が増えています。また購買する客単価も1200円までの少額購入と1800円以上の購入、さらに2500円以上の高額購入の3つのパターンに分けられるようです。

「自分へのご褒美」
(独身、一人暮らしの方)
「家族との楽しみ」
(夫婦、お子様がおられる家庭の方)
「周りの友人や身内への贈り物」
(やや年配で二〜三世代同居の方)

いずれにせよ仕事上の付き合いよりも家族といる時間を大切にする人が増えているのではないでしょうか?
これからの販売力を上げるキーワードは
「自分の暮らしを大切にする」
ということだと考えています。

●同じ体験を共有する

私たちはお客様をご招待して私たちのお菓子を味わっていただいたり、自分たちでお菓子を作ったり、プレゼント包装をしたり、一緒に生産者さんと収穫体験をしたりするイベントを企画し始めています。
同じ体験を通して私たちのマインドに共感したり共有してもらうことでより深く私たちのことを知ってもらいます。
広範囲に広く薄いユーザーコミュニティーを作るのではなく、濃く深く強い繋がりを持ったユーザーコミュニティーを育てるためです。
私たちとお客様が同じ方向を向き共に事業を育ててゆく体制づくりをするためのきっかけとして「体験の共有」は大切だと考えています。
地域性に突化しながら事業を拡大する方法として地域コミュニティとの連動は欠かせません。しかしながら組織を大きくするためには広範囲な地域ごとにコミュニティを作っていかなくてはならず全ての店舗を統括して自分たちのコンセプトや考え方をまとめ上げてゆくのは大変なことになるだろうと考えます。
まずはそのためのシステム作りが必要になります。

●国内から外に向けて

ここまでは国内でのユーザーコミュニティの話でしたが、ここからさらに海外へのコミュニティーの拡大のことも考えてゆかなくてはなりません。
国内のマーケットは今後も大きく変化を続けるでしょう。マーケットの変化に対して企業が対応し続けると企業そのものを疲弊させかねません。
国内では高齢化が進み人口は減りつつあり、国力が衰退しているように見えます。しかし、その現象は世界中の先進国共通の課題でもあります。
それだけ多くの人類を支えるほど世界の経済力や食糧の量は多くありません。
このコロナ感染症の蔓延によって少しだけ世界の人口は減り。産業活動は停滞し、環境もわずかに改善したように見えます。しかし、感染症の蔓延はこれで終わっと見るのは時期尚早でしょう。今後もいくつもの感染症がパンデミックを起こすに違いありません。その中での企業活動のあり方を早くから模索し、事業形態を転換してゆく必要があります。
日本国内だけではなく海外を含めたユーザーに認められ評価される事業や商品を届けられる力が必要になってきます。今は私たちの事業も立ち上がったばかりです。でも目標をさらに広く求めることで事業を成長させられると信じています。
まずは国内での事業の安定と成長を確実なものにしたいと考えています。


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