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事業育成の実際37

●踏み出す準備

私たちの決定的な弱点は内部留保を持たないということです。
もちろん利益を出しながら事業を継続していますが、成長を続ける企業は内部留保する資金を成長に投資し続けなくてはなりません。
現場に出ている方達は理解していると思いますが、ベースアップされた賃金も、コロナ禍が収まって人々が使っているお金のほとんどは中小企業が作っている商品に投下されているのではなく、海外旅行などの観光分野に投下されています。
温泉街の商店や旅館は潤っていますが日ほんの経済を支えている製造業は恩恵を受けることが出来ません。
ほとんどの中小企業は国が出した補助や助成金を使い果たし、緊急融資を受けた企業もさらにこれから返済に苦しむことになります。
付け焼き刃のように状況の変化に対してその都度補助や助成を出して、その後の経営状況に何が起こるかを予測せず、結局財源を税金で賄うのでは景気に水を指すだけで状況は良くなりません。
私たちはしばらくは自己防衛をしなくてはなりません。
物価の上昇で実質賃金が目減りしていますが、その少ない資金をどこに投下するか人々は迷っています。あまり外出ができなかったコロナ禍の反動で観光に投下する人が増えているのは確かです。海外旅行も増えていますが、実際には近隣のテーマパークや観光地で済ます人も多くいます。ストレスが溜まった人たちはそれをどこにで発散させるかを考えているようにも見えます。
「体験」や自分たちが「頼るべき拠り所」を探しているようにも見えます。
そこに実は次の事業のヒントが隠されているように感じます。

●鍵となるのは体験とストーリー

人々は単に商品だけを求めているのではなく、その商品にまつわるストーリーやその商品に関わる体験を求めているように見えます。このことは以前から言い続けていますが、いわゆる市場の動きに振り回されない評価というものがなくては企業価値さえも市場の景況感の浮き沈みの影響を受けてしまうということです。
私たちがBtoBの仕事を続ける上で、今重要になってきているのは私たちの共に仕事をしている企業の私たちに対する態度とそれに伴う事業の形態があります。
つまり、私たちを「パートナー」として捉えているか「下請け」と捉えているかということです。
昨年夏以後に顕著になっている円安やインフレ傾向によるユーザーの買い控えに伴って、市場の変化についてゆくことのできないクライアントが私たちパートナー企業と共に考えるのではなく、独りよがりに経営不振の原因をこちらに押し付ける態度がとても多くなったように感じています。
このような状況はかつての「バブルの崩壊」の時にも経験をしています。
しかし、自らの変革が出来なかった多くの大企業は業績を落とし、その再生をこの国は国民からの国税で賄ってきた歴史があります。
銀行は統廃合をし巨大化することで生き延びようとしましたが、今回は国内の銀行だけでは生き延びることは難しくなるのではないでしょうか?
海外の大手の金融機関同士の経営統合が増える気配があります。
問題は私たちのクライアントであるパートナー企業が本当に事業不振の問題点を見極め、体制を変革できるのか?ということです。
真にグローバル化している企業を見分けるには国内だけの視点ではなく、海外での事業の視点も取り入れ、海外のマーケットへ私たちのストーリーを発信し、その価値観を届けようとしているかどうかを見極めることだと考えています。
私たち自身も国内の市場を見るだけではなく、それらのパートナー企業と同じく海外に向けた視点と価値観を手に入れなくてはなりません。
これまでの地域コミュニティを拡大し、海外も含めた様々なマーケットで私たちの情報発信が求められています。

●価値観のグローバル化と地域の力の海外への発信

国内市場、ましてや地域の市場はどんどん小さくなってゆきます。
少子高齢化は今後も永遠に進むように思われがちですが、世界の人口は長い目で見れば何度も増減を繰り返してきました。
今後は先進国も少子高齢化が進み国力が衰えていくように思われていますが、私はそれほど悲観的な見方はしていません。ただ、これまでのように大量生産しても大量消費する市場規模は期待できないでしょう。
いずれ少子高齢化が限界に来れば再び人口は反転して増える可能性もあります。しかし、以前のような人口の飛躍的な増加ではなく適正な国力や企業運営力を維持するための計画的な増加になるのではないでしょうか?
これからは高齢となっても仕事を続ける人が増えると思いますし、現在は少数の若年層が多くの高齢者を支えるような社会構造になっていますが、現在の高齢者層はある時を境にして一気に人口が減るでしょう。そうすれば再び年齢層のバランスは改善されて少数の若年層が少数の高齢者層を支える形になります。しかし国力は失われ、以前のように生産性の高い経済力は失われます。
AIやオートメーション化によって少人数による効率性の高い精算ラインを作る必要があります。また生産ロスを極力減らす必要も出てくるでしょう。
私たちは早くから以前は廃棄されていたB級の生産物を加工することによって価値を高めて使ってきました。今まで使われなかった素材を加工することで付加価値を上げるとともに原価率を下げることにもなるという例です。

●催事出店の問題点

催事場は催事場所を提供する企業が存在し、その企業は場所の貸出賃料、あるいは借り受けた企業の売上の販売マージンとして約20%を収入としています。
しかし、この20%を大きいと見るか少ないと見るか?ですが、例えば売上が200万円あったとすればマージン額は40万円。売上げが100万円とするとマージン額は20万円。しかし、粗利額は160万円と80万円。そこから経費を引くと純利額はごくわずかとなります。
直営の固定店舗であればマージンではなく賃料になりますが、賃料の場合は売上とは連動していないので固定費となります。人件費も同じく固定費となるので売上額が大きければ利益幅も大きくなるといえます。
これからもわかるように問題は「マージン」とは固定支出ではないということです。前述のように売上額が100万円の売り場をもしも200万円の売上が出せる優良な売り場だと偽られたり過大に申告された場合、実際には利益額は低くなり場合によっては赤字になることがあります。
ほとんどの場合、貸し手側は売上額を盛ってきます。現状の数字ではなく過去のかなり良い数字を平均値と言い、それだけの数字が出せると過大に言って売り場に事業者を誘致しようとします。景気が低迷し貸主に不利になればなるほどその傾向は強いといえます。
もちろん、状況が良くなればさらに売上額は多いと申告され、借主に不利であるのは変わりありません。
確かに催事出店は可能性があり、不況においても多くの人が利用し最低限の売上を確保できます。私たちはコロナ禍の不況下で駅ナカの催事出店で売上を確保し事業を拡大してきました。当初は催事出店にかかる経費を抑え込み、経費のかかりにくい近隣の売場を中心に出店していましたが、事業が拡大するにつれ遠方であっても採算の合う売場なら出店していましたが、今は遠方で経費のかかる売場では利益が出しにくくなっています。
「マージン」の金額を気にせず、自分たちの力で利益を出すのであれば「催事出店」や卸販売ではなく「直営店舗」である方が有利な時代に変わってきています。
そろそろ私たちは「催事出店」という業態から卒業する時期に来ているのだと考えています。

●直営店舗の準備

これまで自業を拡大する上で多くの金融機関から融資を受けてきました。
大手の信用金庫、都市銀行、政策金融公庫などが主な取引先になります。
私たちは以前大阪に住んでいたこともあり、中堅の都市銀行をメインバンクとして取引をしてきました。その後縁あって規模の大きな信用金庫との取引が始まり、さらに「よろず支援拠点」からの支援により「事業計画書」を作成し提出することによって日本政策金融公庫からの融資を獲得し、設備投資を行い生産量を増やしました。この年2019年より私たちは毎年事業計画書を更新し、昨年2022年12月に法人化後もより詳細な事業計画書を作成するようにしています。
法人化後の事業計画に関しては「資金繰り表」を掲載し、期間を通しての経営状況の推移を把握し、今後の適正な金融機関からの融資を得るための信頼度を上げていっています。
「催事出店」からの卒業と書きましたが、「催事出店」からの収益は未だ全体の80%以上を占めているので、いきなり別業態に移行することはできません。しかし「事業利益」や今後の企業資産の留保を考えると、BtoCの業態に近づけて行くことは必要です。
今後成長を見込める商圏がいくつかあります。そのほとんどはいわゆるベッドタウンであり、未だ高齢化が進んでいない、あるいはさらに開発が進み若年層の流入が続いている地域になります。
私たちはそういう地域を見極めながら販売店舗を増やす計画を進めています。さらにその商圏での販売力を獲得するために「製造拠点」の強化も考えていかなくてはなりません。
いずれにせよ店舗の増設には多額の資本の投下が必要となります。現在企業として持っている資産を有効に活用し、さらに経営状況を正確に分析することで金融機関との折衝を進め、適正な資本投下を進めてゆく必要があります。

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