Кэико

月刊経済誌の記者・編集者を経て2018年より中央アジアで日本語を教える。2020年春に…

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月刊経済誌の記者・編集者を経て2018年より中央アジアで日本語を教える。2020年春にコロナ禍で帰国。2024年3月に再渡航。

記事一覧

キルギスからの便り38 アルスタンバプのくるみの森

 広大なくるみの森―そう聞いてどんな風景を思い浮かべるだろうか。  それはキルギス南部の村、アルスタンバプにある。ぶなや白樺の森しか見たことがない私には、現地へ…

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2週間前
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キルギスからの便り(37)バーニャ

 先週金曜日、授業が終わった夕方、意を決してバーニャ(баня)ヘ行った。バーニャはロシア式サウナのこと。サウナブームの日本で有名なのはフィンランド式だが、ロシ…

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2か月前
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キルギスからの便り(36)人前で「私」を慎む国さらけ出す国

 トヴォログや停電に出合うより早く、キルギスへ向かう移動中にすでに現地の空気を実感させられる場面があった。   話は前後したが、4年ぶりとなった今回の日本―キル…

Кэико
3か月前
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キルギスからの便り(35)風雨で停電

 懐かしい場所へ戻ってきた実感を持たせてくれるうれしいものの代表がトヴォログだとしたら、うれしくないことの代表もある。それは停電と断水だ。  キルギスへ着いた3日…

Кэико
3か月前
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キルギスからの便り(34)トヴォログとの再会

 キルギスへ戻ったら真っ先に食べようと決めていたものがある。それは以前に紹介したトヴォログだ。  味のついていないぽろぽろとしたカッテージチーズ様のシンプルなト…

Кэико
3か月前

キルギスからの便り(33)ここは「砂糖」市⁈

投稿日 2022年10月28日  無関係に思われたふたつの出来事が、実は同じ事象につながっていた― 推理小説の謎解きのようだが、そんなことはままある。別々に出会った友人…

Кэико
1年前

キルギスからの便り(32) ビーツ

投稿日 2022年8月11日  行動制限のない久しぶりの夏を旅行やイベントで過ごす人も多いようだが、新型コロナの感染者数はおどろくべき速度で増えていて「羽根を伸ばし続…

Кэико
2年前

キルギスからの便り(31)バザールの魚売り場

投稿日 2022年6月28日 バザールでは現地の人々の日常の生活が見える。食品や雑貨など彼らにとっては当たり前の品々が並んでいるのだが、外国人の目から見ると「何これ?…

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2年前
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キルギスからの便り(30)戦勝記念日

2022年5月5日  ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続くなか、プーチン大統領が5月9日の戦勝記念日にどのように振舞うか、耳目を集めている。ここでいう「戦勝」とは、…

Кэико
2年前
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キルギスからの便り(29)パスハ

投稿日 2022年3月29  冬送りの行事「マースレニッツァ」を紹介した前回に続き、今回はマースレニッツアの7週間後に行われる復活祭の日の思い出を記してみたい。日本で復…

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2年前
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キルギスからの便り(28) マースレニッツァ

2022年3月1日  今年の冬は寒い日が長く続き、春は本当に来るのかと不安になった。寒さの厳しい地域の人々が春を待ち遠しく思う気持ちは日本も外国も変わらない。  私が…

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2年前

キルギスからの便り(27) バスで国境を越える―キルギスからカザフスタン

投稿日 2022年1月20日   民間人が宇宙旅行をできる昨今、お金さえあればどこへだって行けるように思える。コロナ禍前は世界最強と呼ばれる日本のパスポートを携えてい…

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2年前
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キルギスからの便り(26) カレンダー活用法

投稿日 2021年12月24日  暮れも押し迫った。新しい年のカレンダーを用意する頃だ。  文具や紙製品が豊富で、1年先の予定までしっかり立てる日本では書店や雑貨店に多…

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2年前

キルギスからの便り(25) スメタナ

投稿日 2021年11月11日  キルギスからの便り(22)でカッテージチーズに似た食べ物の「トヴォログ」について記したが、今回はもうひとつ、こちらにない乳製品「スメタナ」…

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2年前

キルギスからの便り(24) こんなところに羊さん

投稿日 2021年10月11日  ほぼひと月に一度の寄稿を続けてきたが、しばらくご無沙汰してしまった。  私事ではあるけれど、腰を据えて文章を書くことがむずしい日々が続…

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2年前

キルギスからの便り(23)  ロシア語脳になって心のもやもやを解消!

日本語教師 倉谷恵子  考えても仕方のない雑念が次々と浮かぶ。頭の中が負のスパイラルになって一日中気分がすぐれない―誰しもそんな経験があるのではないか。新型コロ…

Кэико
3年前
キルギスからの便り38 アルスタンバプのくるみの森

キルギスからの便り38 アルスタンバプのくるみの森

 広大なくるみの森―そう聞いてどんな風景を思い浮かべるだろうか。
 それはキルギス南部の村、アルスタンバプにある。ぶなや白樺の森しか見たことがない私には、現地へ行くまで、まったく想像ができない森だった。
 
 日本のゴールデンウィークと重なる5月1日~5日はキルギスでも連休だ。今春の短いキルギス滞在中、この休みを利用して同国第2の都市オシと第3の都市ジャララバードを訪れることにした。同僚であるキル

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キルギスからの便り(37)バーニャ

キルギスからの便り(37)バーニャ

 先週金曜日、授業が終わった夕方、意を決してバーニャ(баня)ヘ行った。バーニャはロシア式サウナのこと。サウナブームの日本で有名なのはフィンランド式だが、ロシアもサウナの長い歴史を持ち、そしてキルギスも旧ソ連だったことからサウナの習慣はある。

 4年前までのキルギス滞在中は、風呂のないシャワー生活が続いてもそれ程、苦にならなかったが、今回はこちらへ来て1か月もたたないうちに湯船のない生活に我慢

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キルギスからの便り(36)人前で「私」を慎む国さらけ出す国

キルギスからの便り(36)人前で「私」を慎む国さらけ出す国

 トヴォログや停電に出合うより早く、キルギスへ向かう移動中にすでに現地の空気を実感させられる場面があった。 
 話は前後したが、4年ぶりとなった今回の日本―キルギス間の移動について触れながら、その出来事をつづりたい。

 過去2018年、19年にキルギスヘわたる際は、いずれもロシアの航空会社S7を使って、成田からノボシビルスク経由で首都ビシュケクへ入っていたが、ロシアのウクライナ侵攻後である今回は

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キルギスからの便り(35)風雨で停電

キルギスからの便り(35)風雨で停電

 懐かしい場所へ戻ってきた実感を持たせてくれるうれしいものの代表がトヴォログだとしたら、うれしくないことの代表もある。それは停電と断水だ。
 キルギスへ着いた3日後の夕方、散歩に行こうと玄関を出ると、校庭の大木や街路樹が大きく揺れて、木々の葉が舞い上がり、砂ぼこりで空気はよどみ、強風がビュービューと音を立てて吹いていた。まさかこんな荒れているとは。
 日本にいれば「今日は傘がいるかな、寒いかな暑い

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キルギスからの便り(34)トヴォログとの再会

キルギスからの便り(34)トヴォログとの再会

 キルギスへ戻ったら真っ先に食べようと決めていたものがある。それは以前に紹介したトヴォログだ。

 味のついていないぽろぽろとしたカッテージチーズ様のシンプルなトヴォログも良いが、何より最初に食べたかったのは、四角いパッケージの脂肪分の多いタイプだった。
 4年前までのキルギス滞在時、この四角いトヴォログは価格面でも栄養面でも、ケーキほど罪悪感を感じずに楽しめる絶好のデザートだったが、日本ではそれ

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キルギスからの便り(33)ここは「砂糖」市⁈

キルギスからの便り(33)ここは「砂糖」市⁈

投稿日 2022年10月28日

 無関係に思われたふたつの出来事が、実は同じ事象につながっていた― 推理小説の謎解きのようだが、そんなことはままある。別々に出会った友人が知り合い同士だったとか、異なる名前で呼ばれていて別物と思っていた物が同一の種類を指していた等々…。

 私がキルギスで出合ったふたつの謎が、ひとつの事柄につながっていたと気付いたのは、1年半を経てからだった。

 ひとつ目の謎

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キルギスからの便り(32) ビーツ

キルギスからの便り(32) ビーツ

投稿日 2022年8月11日

 行動制限のない久しぶりの夏を旅行やイベントで過ごす人も多いようだが、新型コロナの感染者数はおどろくべき速度で増えていて「羽根を伸ばし続けていて大丈夫なのか」という不安も拭えない。

 私はこの夏も遠くへ行かずに、身近な所で楽しみを味わっている。今春から畑を借りて始めた、ささやかな野菜作りだ。猛暑続きを理由にろくに手入れにも行かず、草は生えるし、とうもろこしは鳥に食

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キルギスからの便り(31)バザールの魚売り場

キルギスからの便り(31)バザールの魚売り場

投稿日 2022年6月28日

バザールでは現地の人々の日常の生活が見える。食品や雑貨など彼らにとっては当たり前の品々が並んでいるのだが、外国人の目から見ると「何これ?!」とおどろくような光景も時々ある。キルギスからの便り(24)では羊の頭にびっくりした事をお伝えしたが、今回の写真のような売り場も日本ではほぼ見かけない。

 ご覧の通り、魚が並んでいるのでこれは魚屋だ。キルギスは海のない国で、

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キルギスからの便り(30)戦勝記念日

キルギスからの便り(30)戦勝記念日

2022年5月5日

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続くなか、プーチン大統領が5月9日の戦勝記念日にどのように振舞うか、耳目を集めている。ここでいう「戦勝」とは、ロシアで「大祖国戦争」と呼ばれている対独戦で、1945年に ナチス・ドイツが降伏しソ連が勝利したことを指す。旧ソ連に属していた中央アジア各地からも兵士が送られたことから、キルギスでもこの日は祝日だ。

 第二次世界大戦で敗戦国とな

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キルギスからの便り(29)パスハ

キルギスからの便り(29)パスハ

投稿日 2022年3月29

 冬送りの行事「マースレニッツァ」を紹介した前回に続き、今回はマースレニッツアの7週間後に行われる復活祭の日の思い出を記してみたい。日本で復活祭は英語の呼称「イースター」として知られているが、ロシアなどキリスト教東方正教会ではギリシア語由来の「パスハ(пасха)」と呼ばれている。

 パスハは春分を過ぎた最初の満月の直後の日曜と決まっていて、2022年は4月24日で

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キルギスからの便り(28) マースレニッツァ

キルギスからの便り(28) マースレニッツァ

2022年3月1日

 今年の冬は寒い日が長く続き、春は本当に来るのかと不安になった。寒さの厳しい地域の人々が春を待ち遠しく思う気持ちは日本も外国も変わらない。

 私がキルギスへ渡って初めて知った行事に「マースレニッツァ(масленица)」がある。西欧諸国の「謝肉祭(カーニバル)」に相当し、長い冬に別れを告げ春の到来を祝うお祭りだ。名称はバターや油を意味する「マースラ(масло)」に由来し

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キルギスからの便り(27) バスで国境を越える―キルギスからカザフスタン

キルギスからの便り(27) バスで国境を越える―キルギスからカザフスタン

投稿日 2022年1月20日 

 民間人が宇宙旅行をできる昨今、お金さえあればどこへだって行けるように思える。コロナ禍前は世界最強と呼ばれる日本のパスポートを携えていれば、ほぼ世界中を飛び回ることができた。

 しかしどんなに恵まれた日本人でも、いや厳密に言うと「日本で生まれた人」には99%不可能なことがある。それは生まれて初めての国境越えを陸路で行うことだ。島国の日本にとって外国はすなわち海外

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キルギスからの便り(26) カレンダー活用法

キルギスからの便り(26) カレンダー活用法

投稿日 2021年12月24日

 暮れも押し迫った。新しい年のカレンダーを用意する頃だ。
 文具や紙製品が豊富で、1年先の予定までしっかり立てる日本では書店や雑貨店に多種多様なカレンダーが並んでいる。キルギスで売られているカレンダーの種類はごくわずかだし、部屋にかけておく必要性もまったく感じなかったので、日本の売り場を見るとカレンダー需要の高さに改めて感心する。

ところでカレンダーにはメモ

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キルギスからの便り(25) スメタナ

キルギスからの便り(25) スメタナ

投稿日 2021年11月11日

 キルギスからの便り(22)でカッテージチーズに似た食べ物の「トヴォログ」について記したが、今回はもうひとつ、こちらにない乳製品「スメタナ」を紹介したい。日本ではスメタナを「サワークリーム」と説明されるが、トヴォログがカッテージチーズと同じではないように、スメタナもまたサワークリームとイコールではない。

 詳しい製法を知らないのでいい加減なことは書けないけれど、

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キルギスからの便り(24) こんなところに羊さん

キルギスからの便り(24) こんなところに羊さん

投稿日 2021年10月11日

 ほぼひと月に一度の寄稿を続けてきたが、しばらくご無沙汰してしまった。
 私事ではあるけれど、腰を据えて文章を書くことがむずしい日々が続いているのだが、少しずつでもキルギスの雰囲気を伝えたい。どうしよう…。そうだ、写真だけでも届けよう!

 ということで、今回選んだのはバザールで見かけたこの光景。
 何だか分かりますか?はい、見ての通り、羊の頭です。

 キルギス

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キルギスからの便り(23)  ロシア語脳になって心のもやもやを解消!

日本語教師 倉谷恵子

 考えても仕方のない雑念が次々と浮かぶ。頭の中が負のスパイラルになって一日中気分がすぐれない―誰しもそんな経験があるのではないか。新型コロナの影響で外出を控え、気分転換もままならない日々は特に、そんな状況を生みやすい。

 自分の力ではどうにもならない恨み節は頭から放り出して、思考を別の件にシフトさせようとしても、ザーザー降りの雨や猛暑の日は外出できず、友人にも会えず、頭の

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