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サム・バーロウ監督作品『Immortality』(イモータリティ)の謎を考察(ネタバレあり)
『Her Story』『Telling Lies』といった革命的な作品を送り出してきたADVゲーム界の鬼才、サム・バーロウ監督の最新作『Immortality』に関する考察を試みてみました。
前二作と同様に物語の全体像を把握しにくいゲーム構造のうえ、今作は「3つの映画作品の未完成フィルム+α」をいろいろな角度から読み解かなくてはならないので、理解のハードルが非常に高いと感じました。
スタッフロー
『パラサイト 半地下の家族』感想
※ 以下、『パラサイト 半地下の家族』のネタバレを含みます。
これはTwitterのほうには何度か書いたのですが、『パラサイト 半地下の家族』について、初見時にはあまり良い印象を受けませんでした。
面白いか面白くないかで言ったら間違いなく面白かったし、編集や撮影といった面でも技術的に非常に高度なことをしているというのは素人目にさえ明らかでした。
しかしなにかこう釈然としないモヤモヤしたものが
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析⑤ パク家の人々と「ブラックボックス」
『パラサイト 半地下の家族』に登場する富裕層側の登場人物たち────特にパク・ダヘとダソンの姉弟、さらにその母親であるヨンギョについての分析を、本稿ではまず試みてみようと思います。
主人公側のキム兄妹────ギウとギジョンの持つ複雑な内面に比べて、パク姉弟の造形はかなりあっさりした描写がなされているように見えます。
しかしながら、この姉弟が真に抱いている欲求は本作の主題と密接に関連付けられており
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析④ キム・ギテクの衝動 後編
前編からの続きです。
ギウの父ギテクが「あの行動」に走ることになった原因について、作中の描写から分析を試みています。
※ 以下ネタバレを含みますのでご注意ください。
完地下の男、オ・グンセ前任家政婦ムングァンによって明かされた「完地下」に住む男、それがオ・グンセです。
このグンセというキャラクターの存在は、パク邸における「おこぼれ利権」の競合という葛藤をキム一家にもたらしただけでなく、ギテク
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析④ キム・ギテクの衝動 前編
「解釈の網を抜けていく魚になりたい、そういう衝動がある」とは、本作公開後のポン・ジュノ監督による言です。
(参考:WIREDインタビュー)
『パラサイト 半地下の家族』作中で最も解釈の難しい場面の一つが、ギウの父親ギテクの「あの行動」に関するものでしょう。
ネット上でもその解釈についてはかなり意見の割れるところに見えますが、ギテクの心情に観客を共感させることにはおおむね成功しているように思えま
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析③ 復讐と悲劇のヒロイン
ギジョン、兄が一人、ソウル市街の半地下居住、予備校に通えない美大志望の浪人生────
まぎれもない、『パラサイト 半地下の家族』におけるヒロインの一人です。
ヒロインは元来ヒーロー(英雄)の女性形としての単語ですが、本稿においては主人公(プロタゴニスト)が物語を通じて強く(手に入れよう、救おうと)欲する対象であると定義して使用していきます。
他人の物を平然と盗むモラルの低さ、したたかな策謀家、
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析② 主人公ギウの抱いた夢
『パラサイト 半地下の家族』のストーリー構造を分析するために、物語の最重要人物である主人公キム・ギウがどのようなキャラクターであったのかを確認してみましょう。
おしなべて物語は、主人公がいかなる変化を遂げるのかを描くものです。
そもそも主人公は本当にギウでいいの? クレジットやポスターでは父ギテクのほうが中心に見えるけど? と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、ギウを演じたチェ・ウ
『パラサイト 半地下の家族』ストーリー解析① 構成
映画『パラサイト 半地下の家族』はご存知のように、カンヌ映画祭パルム・ドールやアカデミー作品賞を受賞するなど、その作品性が高く評価されています。
しかしながら表面的なストーリー自体はいたって明快であり、いわゆる「通好み」の映画にありがちな、大衆をふるいにかけるような難解さはありません。
脚本も担当したポン・ジュノ監督が作り上げた本作の物語構造はいかなるものだったのか?
ストーリーを分解し、そこか