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クロミミ(黒見千 くろみゆき)
2021年9月30日 09:20
第八章 「夢中と現実」瞼が上がると、「ああ、これは夢だな」という冷めた自覚が生まれた。飽きるほど繰り返した夢だった。 夢の中で、わたしの胸は締め付けられるように苦しい。目の前には残酷なほど美しいブルーが広がっている。口から吐き出された水泡がゆらゆらと漂うのを目で追った。 青と再会したあの日から、毎夜海に溺れる夢を見た。いつも同じ夢だ。そして、苦しい夢だった。 夢は夜毎妙な生々しさを伴っ
2021年9月29日 15:19
どうも。クロミミです。最近仕事のキツさが尋常じゃなくてほぼほぼ休日はお布団と合体してます。なんだろう、直立二足歩行するのがもう疲れるねん。最近の嬉しかったことなんか、お昼のおにぎりにとろろ昆布混ぜたらめちゃうま、ということを発見したことくらいだもんな。(マジでうまいよ。クロミミは万年金欠つき、滅多に買い食いしません)で、仕事きついから小説描けないかと思いきやそうでもなかったりする。むし
2021年9月28日 23:15
*** 今宵も13年前のあの日のことを語らなければならない。忘れないために。そして、叶えるために。 13年前、あなたはあの子を抱えてここに降り立った。あの時の光景は今でも色鮮やかだ。時を切り取り保存する術があるなら、きっとそうしたことだろう。 あの日よりもずっと前から、私はここに存在していたはずだ。それなのに、それ以前の記憶は曖昧で灰色の濃淡が敷き詰められたように漫然としている。あの瞬
2021年9月18日 18:42
付き合い始めたからといって、ほとんど変化はなかった。変わったことといえば、必ず待ち合わせて帰るようになったこと。それから時々手を繋ぐようになったこと。それだけだ。付き合っていると見せかけるために必要なことだった。 行為に意味などない。そう言い聞かせていても、心が揺れてしまう時が殊更辛かった。愛花との関係が偽りだと痛感してしまって。 時折愛花の何かもの言いたげな視線を感じたが、無視し続けた。曖
2021年9月8日 19:52
*** もう秋になり始めた頃のことだった。秋といってもまだまだ残暑は厳しい。言い訳のように頭上では鱗雲が透き通り、もう秋だと主張していた。 放課後を俺はまた愛花と過ごしていた。この頃は帰りが一緒になると、アイスを交互に奢るのが習慣になっていた。涼しい店内に人は少ない。昔からある有名な店だが、テイクアウトして外で食べるのが主流なせいかもしれない。奥の席を選べば、話を聞かれる心配もない。俺たちに