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日本に来る難民と入管行政の問題点:まとめ

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入管収容施設での死亡事件と医療の実態

入管収容施設での死亡事件と医療の実態

1. はじめに 2021年3月6日、名古屋出入国在留管理局に収容されていた30代のスリランカ人女性が死亡する事件が発生しました。出入国在留管理庁は死亡の経緯などの調査を進めていて、『中間報告』を発表しましたが、女性の死因はいまだ究明されていません。今回の記事では、これまで幾度もなく繰り返されてきた、入管収容施設内での死亡事件を振り返りながら、入管収容における医療の実態を探ります。

2.入管収容施

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入管施設の医療の問題~名古屋入管で亡くなったWさんの中間報告・その他資料~

名古屋入管で3/6にWさんが亡くなった事件について、マスコミにも多く取り上げられています。

私は福祉施設の職員だったこともあり、非常に遺憾に思います。なによりその対応の記録から「命を守る」という気持ちが全く見られないのが残念で、悲しいです。以下に、Wさんの件とこれまでの入管施設の医療の問題を簡単にまとめます。

Wさんの中間報告入管側が出した「中間報告」(の一部)はこちらのようです。(「公表」し

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人権大国ニッポン(?)で救急車にも乗せてもらえない人がいる-東京入国管理局から。

人権大国ニッポン(?)で救急車にも乗せてもらえない人がいる-東京入国管理局から。

 「助けて。どうしたらいいか、もうわからないの・・・」
日付が変わろうとしていた頃、電話口の友人の声は震えていました。 

 東京・品川で、まさにいま、緊急搬送が必要な患者を救急車に乗せることを、入国管理局に拒まれてしまう状況が、何時間も続いています。

 入管の前にいるクルド人の友人たち・そのご家族からの連絡で知りました。

「どうしたらいい?旦那は、朝まで生きられないかもしれない...」

 

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「不法滞在者は犯罪者」という言説―”不法”の原因は厳しすぎる制度

最近の入管法改正に関するトピックが多くなるにつれて、ニュースのヤフコメやTwitter等の投稿で、「不法滞在者は、不法に入国・在留している時点で犯罪者なので、国外追放するべき」といった意見が散見されます。

中でも、現在入管法の改正で問題にされている(収容中で送還忌避している人と仮放免の人の合計)3,000人くらいといわれる「送還忌避者」のことは特に注目を集めているところだと思います。

参考)出

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なぜ日本の難民認定率は低いのか?(4/25追記しました)

そもそも、入管行政の問題の根幹にかかわる部分として、「なぜ、日本の難民認定率は低いのか?」について。

難民認定の厳格性-不信の文化日本の入管は、国境の管理によって自国民をテロやいわゆる偽装移民等から守る「国境の番人」としての役割にメンタリティが強く働き、入国阻止政策へと政策の方向性が向きやすいようです。

入管当局の最大の使命は国境の管理であり、当然ながら、疑わしき外国人の入国・在留には警戒的な

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読順①日本に来る(いる)難民:入管行政の基本的な問題点について

日本にも「難民」が外国から来たり、日本で非正規滞在していたりします。

こうした外国人の出入国の管理をするのが、出入国在留管理庁(略称は入管庁)です。もともとは法務省の内部部局でしたが、平成31年に法務省の外局として改めて設置されました。

以前から、日本の入管行政については、国内外から人権侵害であるとたびたび批判されてきました。この入管行政について、問題点を整理したいと思います。

「難民」とは

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読順②「人数」で見る入管行政の問題

2019年ベースでの人数把握のため、データをまとめました(たまに2017年や2018年のデータですが…)。これで、この問題の規模感が分かると思います。

2020年からのコロナの影響で収容者数が減り、仮放免者が増えたそうですが、その実数のまとめはまた後ほどしようと思います。

申請者総数約1万人・認定率0.42%2019年に日本で難民認定申請をした人は10,375人、難民として認定されたのは44人

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読順④入管行政の最近の動き(報道)~2020年10月現在~

入管行政の最近の動きについて、まとめます。(報道の掲載された時期については順不同で記載しています)

強制収容トルコ人男性と国が和解 朝日新聞「入管が異例の「謝罪」」(有料記事 2020年10月1日掲載)https://www.asahi.com/articles/ASNB173LYN9ZPTIL00D.html

大阪入管と男性とで和解との報道。和解金を国が支払い、和解条項に謝罪が盛り込まれると

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noteを書こうと思ったきっかけ

NPO法人の時の思い(この記事は思い出話のような内容なので、興味のない人は読み飛ばしてください)

この「入管行政問題」に関心を抱いたのは、かれこれ5年ほど前。

当時、僕は都内の生活困窮者支援のNPO法人に勤めていて、WAM(独立行政法人医療福祉機構)からの委託事業を受けた生活困窮者向けのシェルター事業の担当者だったのですが、そのシェルター事業のことが難民支援協会の方のお耳にも入ったそうで、(簡

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