読順④入管行政の最近の動き(報道)~2020年10月現在~

入管行政の最近の動きについて、まとめます。(報道の掲載された時期については順不同で記載しています)

強制収容トルコ人男性と国が和解 

朝日新聞「入管が異例の「謝罪」」(有料記事 2020年10月1日掲載)https://www.asahi.com/articles/ASNB173LYN9ZPTIL00D.html

大阪入管と男性とで和解との報道。和解金を国が支払い、和解条項に謝罪が盛り込まれるとの内容。動画には、収容者への制圧行為(押さえつけ)という暴力が実際に行われていて、その様子が防犯カメラにバッチリ映っている。

(筆者クロより)和解には至りましたが、これですぐに入管の体質が刷新されるとはにわかには考えられません。他の収容者に対しても、同様の暴力がある(あった)と考えられます。

入管法改正に向けた動き

今秋の臨時国会では見送られることになりましたが、「送還忌避罪」を含む入管法改正に向けた動きが見られます。

東京新聞「外国人長期収容で国外退去拒否に罰則提言 入管庁、法改正検討へ」(2020年7月14日掲載)https://www.tokyo-np.co.jp/article/42440(同様の内容の記事は、他の新聞社からの報道でもありました)


内容としては、

出入国管理政策懇談会から森法相への提言として

・強制退去の命令後に速やかに出国した場合、日本に再上陸できない期間を現行ルールよりも短くする

退去命令に応じない場合、懲役や罰金を科す(筆者注:いわゆる「送還忌避罪」)

・「仮放免」の要件・基準の明確化、逃亡者(筆者注:仮放免中の逃亡者)への罰則導入

・収容期限については上限を設けず、一定期間を超える場合に要件を吟味する仕組みの創設

・難民認定申請中は送還が停止されるので、退去を避けることを目的とした複数回の難民認定申請が見られる。そのため、退去を目的とした同じ理由での申請を繰り返す外国人は送還停止の例外とする

とあります。

(筆者クロより)仮放免の要件・基準の明確化はあってしかるべきであって、これを機会にぜひ法制化するべきと思いますし、収容期限を一定期間を超える場合の要件を吟味する仕組みについても、今まで期間に上限なく収容できた非人道的な収容の仕組みから脱する良い兆しだと思います。

一方で、いわゆる「送還忌避罪」や複数回の同じ理由での難民認定申請を送還停止の例外とすることについては、(複数の支援団体が声明等で挙げているように)人道上の非常に大きな問題ではないかという懸念、そして「そもそも罪に当たるのか?」という疑問が湧きます。

支援団体・関係者からの批判

こうした法改正の動きに、支援団体、特に複数の弁護士会から批判の声明が出されています。

毎日新聞「退去命令拒否の外国人に罰則提案 弁護士ら批判「支援者も共犯に」 収容長期化対策」(2020年6月15日掲載)
https://mainichi.jp/articles/20200615/k00/00m/040/265000c

日本の「送還」の問題点や近年の制度見直しについては、難民支援協会のHPにも分かりやすくまとめられているので、これもあわせて参照されたい。

難民支援協会「難民・難民申請者を送還するということ」(2020年8月31日掲載)https://www.refugee.or.jp/jar/report/2020/08/31-0000.shtml#a9


「管理措置」「準難民」(仮称)の検討

また、読売新聞の独自取材記事によると、「国外退去処分を受けた外国人が送還を拒否し、入管施設での収容が長期化している問題を受け、出入国在留管理庁は、6か月以上の収容が見込まれる難民申請中や訴訟中の外国人らについて、社会内での生活を認める「監理措置」(仮称)制度を新たに導入」することを検討しているとのことです。

さらに、「難民認定には至らないものの、母国が紛争中で帰国できない外国人らを「準難民」(仮称)と認定し、在留を認めて保護対象とする制度も新設する。」とあります。

読売新聞「【独自】難民申請者らに社会生活認めます…長期収容解消へ新制度」(2020年09月22日掲載)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200922-OYT1T50024/

(筆者クロより)こうした新たな入国資格や新制度が彼らの生活保障につながればいいと思いますが、具体的な制度設計の報道も見られないので、法改正の見送りによってすぐに大きな動きにはならないと思います。今後も制度改正の動きについて注視していきたいと思います。


収容者の減少と仮放免の増加

ハンストで死亡事例が出たことやコロナ禍によって、収容者の減少と仮放免の増加が見られます。

西日本新聞「入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮」(2020年4月6日掲載)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/598186/

NHKニュースおはよう日本「どうやって生きていけば?コロナ禍で急増する“仮放免”外国人」(2020年10月18日掲載)https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/10/1018.html

(筆者クロより)仮放免については、以前も記事に書いた通り、生活保障が十分になく、就労も認められていないため、生活に困っている人が続出していることが想像されます。また、逃亡する人や犯罪を犯してしまう人、自殺してしまう人、病気になっても健康保険に入れないため重篤化させてしまう人なども出てきてしまうのではと危惧されます。