入管施設の医療の問題~名古屋入管で亡くなったWさんの中間報告・その他資料~
名古屋入管で3/6にWさんが亡くなった事件について、マスコミにも多く取り上げられています。
私は福祉施設の職員だったこともあり、非常に遺憾に思います。なによりその対応の記録から「命を守る」という気持ちが全く見られないのが残念で、悲しいです。以下に、Wさんの件とこれまでの入管施設の医療の問題を簡単にまとめます。
Wさんの中間報告
入管側が出した「中間報告」(の一部)はこちらのようです。(「公表」しているそうですが、探しても国会質疑の資料から「中間報告」の一部しか見つかりませんでした…公表というなら分かる場所に資料全て公表してもらいたい…)
(↓↓↓ 「中間報告」の一部ですがdotup.orgにPDFファイルをアップロードしたので、閲覧される場合はダウンロードして閲覧してください ↓↓↓)
小池晃さん(共産・参議)のTwitterに前日・当日の記録画像が載っていました。亡くなった当日の彼女に対する対応もひどくぞんざいな扱いだと思います。
名古屋入管「中間報告」によれば、亡くなったウィシュマさんの収容開始時体重84.9kgは65.5kgに。1月中旬以降嘔吐繰り返すも経口補水液のみで点滴なし。3月6日午前8時12分血圧脈拍測定不能も「計測器エラー」と。午後2時31分救急搬送も死亡確認。少なくとも6日朝に搬送し救急対応すべき事案。 pic.twitter.com/upgcXiiX7l
— 小池 晃(日本共産党) (@koike_akira) April 17, 2021
「中間報告」は、見られるのは一部だけですが、ただ入管側にある情報を整理して出したというだけの感じの資料だと思います。人が一人亡くなったのに、誠実さが感じられません。
この中間報告については、国会での質疑でも取り上げられ、批判されていましたが、入管側が入管の都合の良いことだけを集めて作成したと思われます。
その一例としては、「外部の病院の医師が入管側に仮放免を勧めていた」という事実。
「死亡2日前の3月4日に診察した外部の医師が、一時的に収容を解く「仮放免」を勧めていた。医師が入管側に出した報告に明記されていた。」とのこと。中間報告にはこのことは書かれていないそうです。
死亡当日に救急搬送された時の血液検査のデータについてはこちら。
これも重要な報道。ウィシュマさんの死亡直後、死因も何も特定されていない中、名古屋入管は中日新聞の取材に「適切に対応していた」とコメント。最初から、不都合を覆う、結論ありきの調査を進めようとしているのでは。
— 安田菜津紀 Dialogue for People (@NatsukiYasuda) April 28, 2021
【独自】スリランカ女性、死亡時の血液検査で異常な値 https://t.co/UR2zd5VspT
死因については、亡くなった後での特定は難しいと思いますが、経口による水分・栄養摂取がほとんどできず、歩けないほど衰弱している彼女に、入院による医療処置が必要だったことは誰の目にも明らかだと思います。
ここでは割愛しますが、ネットの記事をざっと眺めるだけでもこの他にもたくさんの点で入管側の対応が批判されています。
この死亡事件については、日弁連等からも声明が出されています。
日弁連の声明
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210330.html
これまでの被収容者の死亡事件例
被収容者が死亡した事件については、これまでもありました。
特に、2019年のナイジェリア人のハンスト中の死亡が記憶に新しいです。
入管収容施設の外部診療までの期間
これは東日本センターのデータですが、
「(センターの医師による)指示から職員が外部病院へ申込むまで平均37.7日、最長142日、
指示から診療まで平均54.4日、最長149日」とのことです。
遅すぎるわ!とツッコミを入れたくなります…。
入管収容所医療の実態
— 全国難民弁護団連絡会議(全難連) (@zennanren) March 7, 2021
2019年5月東日本センター医師が診察し外部病院専門医の診療を受けさせるよう指示した37件で、
指示から職員が外部病院へ申込むまで平均37.7日、最長142日、
指示から診療まで平均54.4日、最長149日
(精巣癌放置事例(東地R1(ワ)31743号事件)国側証拠の統計)
Wさんの事件といい、これまでの入管収容施設の医療対応といい、たくさんツッコミどころがありすぎて、ここにはすぐには書ききれません。異常だと思います。とにかく、必要な人には速やかに入院ができるといった、収容施設として当たり前のことが対応できるようにすぐに是正されるべきだと思います。