読順②「人数」で見る入管行政の問題

2019年ベースでの人数把握のため、データをまとめました(たまに2017年や2018年のデータですが…)。これで、この問題の規模感が分かると思います。

2020年からのコロナの影響で収容者数が減り、仮放免者が増えたそうですが、その実数のまとめはまた後ほどしようと思います。

申請者総数約1万人・認定率0.42%

2019年に日本で難民認定申請をした人は10,375人、難民として認定されたのは44人、人道的な配慮から在留が認められたのは37人でした。難民認定率としては、0.42%です。

「入管の施設に収容」or「仮放免」の状態の人の合計約3,000人

入管から国外退去処分を受けた人たちの、実は9割以上が、実際には自主的に帰国するか国費で送還されています。残りの1割に満たない人が、何らかの事情があって帰国を拒む人たちで、入管の施設に収容されたり仮放免の状態でいます。その数およそ3,000人。

約1,000人の収容者、うち1年以上の長期収容者が360人

令和元年12月末現在,退去強制令書の発付を受け収容中の者は942人。うち、6カ月以上の長期収容されているのは約半数680人超。2019年12月の時点で、360人を超える人が1年以上も収容されています。そして、被収容者のうち送還を忌避する人は649人(被収容者の69%)。

2020年5月の報道では、被収容者の総数は約910人と、人数は減っているものの、1,000人近くいることが分かります。

収容施設での「隔離」=懲罰407件

(「人数」ではなく、「件数」ですが…。)

近年の収容期間の長期化に伴い、入管施設では職員への反抗や自傷行為などトラブルを起こした被収容者に対する隔離措置があり、非常に問題です。

2015年の174件から2018年には407件と、三年の間に2.3倍になりました。

隔離措置は収容者や入管職員の間で「懲罰」と呼ばれ、入管庁は「秩序維持のために必要だ」と説明しています。

もちろん、たいへんな非人道的な対応です。このほか、入管職員からの嫌がらせやいじめ、制圧行為(集団で押さえつける)があると言われています。

「送還に応じない被収容者」の約7割(400人以上)が「難民認定手続き中」か「訴訟係属中」

被収容者入管庁によれば、この被収容者1,253人のうち、「送還に応じない」(=送還忌避者)の数は858人。本来、入管施設への収容の目的は「送還のための身柄拘束」(いわゆる「飛行機待ち・船待ち」)ですが、実にその7割近くがその目的とは違う理由で収容されていることになります。

また、この「送還に応じない」被収容者649人(データの時期がずれるため上記の「858人」と数に差が出ています)のうち何らかの手続き中が約7割で445人、その内訳は難民認定手続き中が6割で391人、訴訟係属中が75人、難民認定手続きと訴訟係属中の重複分が21人となっています(2019年12月末現在、『週刊 金曜日』作成のグラフから)。被収容者の約7割が「難民認定手続き中か訴訟中のため送還に応じていない」状態であると分かります。


画像1

(出入国在留管理局資料より 令和元年6月末現在の送還忌避者数(送還忌避理由別内訳 (速報値・概数)http://www.moj.go.jp/content/001312801.pdfから抜粋)

また、上のこのグラフから、「主な理由」の約6割が「難民主張」と分かります。(各送還忌避理由は、入国警備官が送還忌避者から面接の際に聴取した理由(複数の場合あり)の中から、本人に関する事情を総合的に考慮した上,最も主たる理由として認定したものの数を集計したもの)

つまり、収容施設では、「難民を主張」し、実際に難民認定や訴訟手続き中にもかかわらず、多くの外国人を強制的に収容し、自ら国外退去するように強いている、と言えます。

退去できない事情を抱えた人たち

2018年で見ると、8,865人に退去強制令書を発付し、9,369人を実際に送還しました(2018年以前に退去強制令書を受けた外国人を含むため、送還者の方が多い)。大半の外国人は、この退去強制令書を受けて日本から出国していて、送還に応じない、あるいは応じられない外国人は全体から見ればわずかな数になるのだと思われます。

つまり、退去強制処分が出されれば、だいたいの外国人はみずから自国に戻っており、「自国に戻ることができない事情を抱えた人」がこの国にとどまらざるを得ない状況にあると言えます。日本国内に家族がいる、仕事があるなど生活基盤が日本国内にあったり、自国が内戦状態、経済的困窮、あるいは民族・政治的迫害に遭ってしまう…などの事情が考えられます。

仮放免者は2,217人

仮放免者とは、
「不法滞在などで入国管理局の施設に収容中、体調不良や家庭の事情などに配慮して一時的に収容を解く措置。入管は、被収容者の性格・素行・資産などを総合的に考慮し、可否を判断しているとする。本国が旅券の発給を拒んで送還できない人についても、この措置で収容を解かれることがある。保証人・保証金が必要で行動範囲も制限され、多くの場合は就労もできない。」
(2019年1月23日 朝日新聞 朝刊 1社会「キーワード」より)

入管庁資料によると、「仮放免者」は、2019年12月時点で2,217人となっています。この数については、入管行政のその時どきの運用て大きく変動してきた経緯があります。

1998年には91人だった仮放免者数が、どんどん増加し、2015年まで急増して3,606人のピークを迎えます。東京五輪の治安対策を名目とした仮放免の運用を厳格化し、収容強化したため、ここ数年は減少してきています。

仮放免者の急増理由としては、来日外国人数の大幅な増加も挙げられるが、難民申請者に対する強制送還の導入や強制送還中にガーナ人男性が死亡した事件が大きく影響しています。

この事件後、入管当局はしばらくの間、出国に応じない「送還忌避者」の強制送還を全面的に停止したためです。送還できない上、当時は長期収容を避けていたため、一定の期間を経ると収容者は拘束を解かれ、仮放免者数が大幅に増加しました。

在留資格のない、仮放免の子約300人

先日のNHK「クローズアップ現代プラス」でもやっていました(「日本で暮らし続けたい―ルポ ”在留資格”のないこどもたち」(2020年11月10日放送)。

(放送内容については、NHKホームページhttps://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4481/index.html?1604895378を参照されたい)

日本で生まれ育ちながら在留資格がなく、強制送還の対象となっている外国人の子どもたちは300人。難民申請中やオーバーステイの外国人を親に持つ子どもたちのことです。

親子分離28人(2017年)

入管当局は、2017年、外国人の子ども28人を親と引き離し、児童相談所に保護を依頼した。さらに、日本に長期間暮らしている家族であっても、在留資格がないという理由で親子を分離し、強制送還したケースもある。
入管施設では、1990年代ごろまでは子どもも収容していたが、2000年頃から親の収容で世話をする保護者がいなくなる場合、入管当局は児童相談所に子どもの保護を依頼する運用に変えたようだ。(『ルポ 入管』より)

親子分離については、日本も批准している子どもの権利条約第9条「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」と規定されており、また難民支援や移民保護の国際的枠組み「グローバル・コンパクト」の採択にも賛成しています。グローバル・コンパクトでは、「子どもの最善の利益」の確保を原則として掲げ、入管収容を最後の手段としてのみ使用すると謳っており、当然人道上の問題もありますが、これらの条約・国際的枠組みにも反しています。


とりあえず、今回まとめたのはここまで。

参考文献

平野雄吾、『ルポ 入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書、2020年)

「送還忌避者の実態について」出入国在留管理庁http://www.moj.go.jp/content/001317762.pdf

その他、入管庁のホームページやPDF資料、報道のネット記事を参照させて頂きました。