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輪廻の風 第1章

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輪廻の風 (55)

バレラルクと旧ドアルの戦いが終わり、長い長い夜が明けた。

王宮とパニス町のほぼ中間に位置する場所に、軍が保有している収容所がある。
その収容所には、毒ガス室と呼ばれている広い部屋がある。

その部屋の天井には巨大な水栓シャワーのような形をした器具が備え付けられており、そのから毒ガスが霧状に散布される仕組みとなっている。

その部屋も毒ガス兵器も、複数の罪人を一気にまとめて処刑する時にのみ使われる

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輪廻の風 (54)

「ちょっと!何よこれ!?」
突如凍った森林地帯を見て、モエーネが悲鳴にも似た叫び声を上げた。

「何が起きたんだ…?」
ノヴァも困惑している様子だ。
いつも無表情のラベスタも、両目を見開いて驚いていた。
ジェシカとラーミアは驚きのあまり言葉を失っている。

「モスキーノの野郎、派手にやりやがったな…!」凍った森林のせいで気温が急激に下がった筈なのに、ロゼは冷や汗をかきながら苦笑いをしていた。

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輪廻の風 (53)

パラシュートを使ってインドラを脱出した旧ドアル軍の戦闘員たちは、バレラルクの兵士たちによって続々と拘束されていった。

ロゼ達はインドラが落ちた現場へと急いで向かっていた。
すると上空からラーミア、ダルマイン、ノヴァ、ラベスタがパラシュートで降りてくるのを確認した。

「あれ!?お前ら何してんだ!?」
ロゼは驚いて大きな声を上げた。

「ラーミア!無事でよかった!」
モエーネがラーミアに抱きついた

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輪廻の風 (52)

「うわああぁぁ!!」
「やべえ落ちるぞ!」「逃げろぉ!!」

炎上し、蛇行しながら緩やかに降下していくインドラから、旧ドアル軍の兵士たちが次々と脱出していた。

あらかじめ身につけていた緊急用のパラシュートを使い、大騒ぎをしながら続々とインドラから飛び降りていく。

「おい!何があった!?え、落ちてんのかこれ!??オレ様を解放しろ!!」ダルマインは為す術もなく、独房で1人パニックになりながら喚いて

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輪廻の風 (51)

ラベスタは燃料室のタンクや配線をジーッと見ている。

「ラベスタ、何してるんだ?」

「このUFOみたいな乗り物うざいからぶっ壊そうと思ってこっそり乗り込んだ。そしたらいきなり離陸したからびっくりしたよ。」
得意のポーカーフェイスでそう言ったラベスタは、全く驚いているようには見えなかった。

「えいっ」ラベスタはそう言って、真顔で配線を斬り始めた。
すると一瞬、機体が激しく揺れた。

「おいラベス

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輪廻の風 (50)

「国王様!大変です!」
サイゾーは血相を変えて玉座の間に飛び込んだ。

「騒々しいな。何があった?」

「エンディとロゼ王子が、インドラに向かって攻撃を仕掛けようと動き始めました。」

「なんだと??」レガーロは眉間にシワを寄せて言った。

「わあっ。ポナパルトとバレンティノが暴れてるー!」モスキーノが外の様子を見ながら、楽しそうに言った。

「どいつもこいつも勝手な真似を…。」
レガーロはひどく

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輪廻の風 (49)

「あわわわわわ…。」
アルファは絶句している。
ようやくロゼの居城の掃除を終わらせて、みんなに混ざろうと思い屋上庭園に来てみたら、みんな爆睡しているからだ。
そして、ラーミアがどこにもいないことに気が付き、気が動転している様子だった。

「た、た、大変だぁ〜〜!!」
只事ではないと察し、勢いよく外へ飛び出した。

すると、カインがムクリと起き上がった。

「なるほど、睡眠薬か。サンドイッチを一口も

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輪廻の風 (48)

レガーロの登場で、屋上庭園内の空気は一気に張りつめた。

一同、慌てて頭を深々と下げた。
その様子を見ていたエンディも、空気を読んで一応頭を下げた。
カインだけは唯一、微動だにせず足を組んで座っていた。

「俺もいるよー!」
レガーロの後ろから、モスキーノが笑顔でひょっこりとあらわれた。

「招かれざる客だったか?それにしても、賊軍にこうも簡単に侵入されるとは情けない。なんだこの有様は?」
広大な

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輪廻の風 (47)

翌朝、時刻は午前7時を回った。
約束の時間まで、残り2時間をきっている。

エンディ達はロゼの居城の屋上庭園で、観葉植物に囲まれながら優雅に朝食のサンドイッチを食べていた。

「まだまだあるから、どんどん食べてね!」
ラーミアは相変わらず気丈に振る舞っていた。

「静かだな…。」
エンディはサンドイッチを頬張り、屋上からアズバールが発生させた広大な森林を眺めながら言った。

「ね、静かすぎる。」ラ

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輪廻の風 (46)

「うわあ!なんだこれ!?」
エンディは、突如樹海と化した城下町の様子を窓から覗き見ると、驚いて飲んでいたお茶をこぼしてしまった。

「ちょっと何よこれ!?」
「どうなってるの…?」
ジェシカとラーミアは両手で口を覆いあんぐりとしている。

「間違いねえ、アズバールの仕業だな。」
カインはこんな状況でも、いつも通り冷静だった。

「うおっ、なんだよこれ!すげえぇ!!」
クマシスは目をキラキラと輝かせ

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輪廻の風 (45)

「ダルマイン、旧ドアル軍はあんなイカつい戦闘機を保有していたのか?」ロゼが聞いた。

「はい…あれは旧ドアル軍の生き残りの科学者たちが駆使して作り上げた殺戮兵器"インドラ"です…!凄まじい破壊力を秘めた光線を放つと聞いたことが…。」ダルマインは血の気の引いた青白い顔で答えた。

「光線?そんなの撃たれたら大変だ…!」
エンディは焦った様子で言った。

「例えそんな光線を放てたとしても、ラーミアがい

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輪廻の風 (44)

ラベスタはカッとなり、医者の男に剣を振り下ろそうとした。

すると、モスキーノが片手で剣を掴んで制止した。

医者の男は驚き、腰を抜かしてしまっている。

「せっかく俺が苦労して見つけてきた人をいきなり殺そうとしないでよ?」
モスキーノは苦笑いを浮かべながら言った。

ラベスタは驚いた。
側から見れば、モスキーノはラベスタが振り下ろした剣に軽く手を添えているようにしか見えないだろう。
しかし、ラベ

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輪廻の風 (43)

鬼のような形相で、全身から殺気を放つポナパルトを見たバレラルクの戦士達は、命の危険を感じて恐れ慄き、逃げ出した。

「やべえ…ポナパルトさんが暴れるぞ!」
「逃げろぉ!殺されるぞ!」

王宮の高い塀をこえて逃げ出すものもいた。しかし多くは正門をこじ開けて逃げ出そうとしていた。
同じように怖気付いてしまったノヴァファミリーの戦闘員たちも、どさくさに紛れて逃げ出そうとしていた。

すると、正門を開けて

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輪廻の風 (42)

ロゼの居城にも弾丸が何発か撃ち込まれた。

ジェシカとモエーネは外に出て応戦していた。

ジェシカは短剣を、モエーネはムチを使ってマフィア達を一蹴した。

「足引っ張らないでよね?」
「はあ!?こっちのセリフなんだけど!」
こんな事態でも2人は口喧嘩をしている。

中ではサイゾーとエスタが剣を抜き、ロゼを囲っていた。

「おいおい、俺じゃなくてラーミアとアルファを守れよ。俺の強さはお前らも知ってん

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