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【短編小説#7】光

「私のこと、好き?」
女は、目の前に座る男に聞いた。
男は、間髪入れずに答える。
「うん」

まるで、そう答えることを決めていたように。

女は、厳しく育てられた。
世間に迷惑を掛けないように、恥ずかしい思いをしないように。
人に優しく。人に思いやりを持って。人から変だと思われないように。

ただ、女は、知っていた。
自分は、親が思うように可愛くない事。
自分は、親が思うように優しくない事。
自分は、親が思うように要領が良くない事。
知っていたから、頑張ってきた。
親の「もっと」という気持ちを、肌で感じて。

女が、可愛くない言葉を口にした時。
男は、「そっか」と言った。

女が、優しくない言葉を口にした時。
男は、「大丈夫だよ」と言った。

女が、「要領、悪くてごめん」と言った時。
男は、「みんな、そんなもんだよ」と言った。

それでも、女は、男の好きを信じられなくて。

わざと、これは嫌だってわがまま言ったり。
バカじゃないの?ってかわいげもない言葉を使ったり。
嘘をついてみたりした。

人が嫌いになりそうなことを、思いつく限りやってみた。

男がどんな反応をするのか知りたくて。

女はやるだけやって、これでもかって位、嫌われそうなことをしたのに……
目の前にいる男は、変わらなかった。

女は、もうやり尽くしたから。男に嫌われる方法はないと思った。
男が好きじゃなくなる手段を見つけられなくなってしまった。

男は言った。
「2年前の事だけど、覚えてる?僕が君に初めて会った時。君は植木に水をあげていた。しかも、植木に話しかけながら。信じられない光景だった。植物と話をしようとしているのは、子供と君ぐらいしかいないと思ったよ。僕はその時から本当の君のことを知ってる。そして、今も変わらず知っている」

男は続ける。
「僕は、君と相性がいいとは思わない。僕は君と性格が合ってるとは思わない。僕は君とお似合いだとも思わない」

「人って、相性がいいから好きとか、性格が合ってるから好きとか、価値観が合ってるから好きとかって言うじゃない?
でもね、そんなのは、人が勝手につけた理由に過ぎない。相性が悪くても好き、性格が合わないけど好き、価値観が違うけど好き。そっちの方が好きが大きいと思わない?」

「君が可愛くない事を言っても、優しい言葉を使わなかったとしても、不器用だったとしても、僕は君がどういう人か知ってる。それは、多分僕しか知らない。僕だけが知っている君の事。僕だけが知っている君の好きなところ。それはいつまでたっても変わらないよ」

そうやって女は、どんなことがあっても安心できる場所を見つけた。
女にとって、そこは、永遠に光が当たる場所。
男が生きているという前提で存在する場所。

そうやって男は、どんなことがあっても安心できる場所を見つけた。
男にとって、そこは、永遠に輝ける場所。
女が生きているという前提で存在する場所。

男が生きている限り、女には光が当たる。
そして、女が生きている限り、男は輝く。

光が当たって影ができる。
光も影もどっちも大事。


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